OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2016.02.23
名匠一族の新たなる挑戦 4

「RIGBY」

リグビィと名付けられた
サノ・ニューランナバウト。
全長30フィートから31フィートへ設計変更。

2月、フレームの切り出し作業に入った。
昨年(2015年)12月、見直したライン図をもとに削りだした3作目のハーフモデルを佐野龍也氏に見せてもらいながら、準備が進む原図作業の説明を受けた。これは造船所の一角に敷き詰められたベニヤ板に、1/10のスケールで描かれた設計図から原寸でラインを描いていくという作業だ。
側面図や正面図などが入り組むように描かれた原図は、素人目には難解な地上絵のようにしか見えないのだが、龍也氏の頭の中には完成品が立体的に描かれている。それがプロの職人というものだ。

この原図作業にはひと月の時間を掛け、翌月、つまり年が明けて1月になって、書き上げた原図から型紙が起こされた。そして2月に入って、型紙からラインが木材に原図が写され、いよいよフレームの切り出し作業へと入った。ようやく「リグビィ」(RIGBY)と名付けられたランナバウトの外殻のイメージが、誰でもつかめる段階にきたといえる。2月の段階ではフレームの切り出し作業までで、フレームが組まれていくのは3月の予定だ。
ちなみに「リグビィ」とは龍也氏がかつてカナダに留学していた時にお世話になった、ホストファミリーのファミリーネームなのだそうだ。
昨年12月、三作目のハーフモデルが完成。
2015年12月作成のライン図。スターンにはBF250が2基載る。
左から1作目、2作目、そして3作目。1作目に比べ、3作目のバウ周りが細身になった。特にフォアフットが浅くなったのがわかる。
右から1作目、2作目、3作目(いずれも右側がデッキ面)。トランサム形状が微妙に変えられているのがわかる。
これまで30フィートランナバウトと紹介してきた「リグビィ」だが、原図作業を進める中で、全長が31フィートに伸ばされることになった。第2話で、スペックは全長:9.15m、水線長:8.00m、全幅:3.20m、吃水:0.80m、重量:4,000kgとご紹介したが、全長はおよそ9.5mとなる。完成後はスイミングプラットホームを装着する予定もあるとのことなので、そうなると10mに届く大型艇となる。
搭載エンジンはもちろんBF250の2基掛け。燃料タンクは650〜700リッター。想定するマックススピードは35ktということだが、これは控えめな数値だそうだ。

ところで佐野造船所とHondaの船外機との付き合いは長い。
前回、第3話で1973年と1975年に佐野造船所で建造された2隻のヨット(ドーバーI、ドーバーII)に、Hondaの75TWINと9.9馬力のBF100が補機として積まれていたと書いたが、これは8代目の佐野一郎氏が「4ストローク船外機は海を汚さない」という理由で決めたのだそうだ。もちろん当時、世界で4ストローク船外機を製造していたのはHondaだけだった。
取材協力:(有)佐野造船所
文・写真:大野晴一郎
1