OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2022.05.31
名匠一族の新たなる挑戦 30

SANO 30FB Offshore Fishing Cruiser
こだわりの艤装を施し進水

佐野造船所9代目・佐野龍太郎社長が
至高の技と夢を注ぎ込んだ
オフショア・クルーザー誕生!

SANO 30FB Offshore Fishing Cruiser。2022年5月28日に進水式を迎えた。

■優れた走航性能と釣行機能、そして快適なキャビンライフ

佐野造船所の新造船"SANO 30FB Offshore Fishing Cruiser"(以下30FB)がHondaの新型船外機BF250Dを搭載し終えたことはすでに記事で紹介しているが、その後、3ステーションの艤装や配線などの作業が終了し、2022年5月28日に進水式が行われた。

オーナーさんは11年ほど前にSANO 23 Offshore Fishing Cruiser(以下23)をオーダーされた方で、ご自身が求められるフィッシング&クルーズのスタイルをさらに充実させるために30FBの建造を佐野社長に相談された。国内外のクルーザーを乗りついでこられ、この30FBで8艇目になるそうだ。

エンジンはHonda船外機BF250Dの二基掛け。

波きりの良さ、耐候性、乗り心地の良さ、高い釣行機能に加え、ホンジュラス・マホガニーに包まれたキャビンで快適にステイできることなど、30FBのコンセプトは23でオーナーさんが求められた内容がそのまま引き継がれた。
丁寧に削り出されたシャープなステムを持つVハルは、23も今回の30FBも同じ形状で、佐野社長が50年のキャリアの中で確立、完成させた定評のある船型だ。

以前、台風が九州沖を通過し、押し寄せるうねりとドン吹きの風で大時化となっていた相模湾と遠州灘を、佐野社長は23 Offshore Fishing Cruiser(エンジンはBF225D)の回航のために走り切ったことがある。いまでは伝説のような回航だが、これであらためて佐野造船所が建造するオフショア・クルーザーの高い走航性能を知られた方も多かった。ずば抜けた耐候性は「世界一のハル」と評価される一因だ。

■こだわり抜いた仕様

30フィートの全長に対し全幅は3.2メートル、排水量は約5トンの30FBの船体は、マリングレード合板+FRP7層で造りこまれた。
キャビン内やコントロールステーションなど、まさにサノブランドの船らしく、あちこちにホンジュラス・マホガニーが惜しげもなく使われている。驚いたのはコーミング上部にホンジュラス・マホガニーが使われたことだ。深場釣りのための超大型電動リール付のロッドを支えるロッド・キーパーは、なんとこのマホガニーに装着されることになる。考えてみれば超高級木材のホンジュラス・マホガニーではあるが、堅さがすごい。重量級のロッドセットを下支えするのに好都合なのかもしれない。

匠の技を持つ佐野龍太郎社長。技のすべてを30FBに注ぎ込んだ。

コーミングはホンジュラス・マホガニー製。そしてそこにロッド・キーパーのベースが取り付けられた。アフトデッキ(写真下部)とサイドデッキ(写真上部)、引き出し式トレー(ドリンクホルダーと重量級の錘置場用)はチーク材が使われた。

2019年5月下旬。30FB Offshore Fishing Cruiserのフレームとステムが組まれた。

姉妹艇である23 との外観上の相違点はFB(フライブリッジ)仕様となったことだが、印象的なのはFBルーフエッジに載る高さ2.2mの大型マスト。片側60cmのスプレッダーが左右に二本張りだし、サイドステーに支えられた可倒式だ。最上部にはフルノのドーム型アンテナ(レーダーセンサー)を設置するベースも造られた。
小ぶりのマストやステンレス製のレーダーアーチであれば市販品もあるが、それを嫌った佐野社長が設計・製作された。

FBルーフエッジに建てられた大型マスト。高さは2.2m。スプレッダー幅は片側60cm。マストを入れると約130cmになる。

■コロナ禍での建造

2019年5月初旬に船体の基礎となるフレームが完成し、同月下旬にはその組み立てが行われている。通常、30フィートクラスのクルーザーの建造には設計から2年を要するそうだが、今回は新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響で、海外からの資材到着の遅れもあったようだが、2022年4月下旬には海臨時航行検査が行われ、5月下旬には晴れて進水式を迎えた。
(次回、マホガニー仕様のキャビン、3ステーションなどをご紹介する)

コロナ禍を乗り切って建造が進められた。マスクにはHonda Marineの文字。

取材協力:(有)佐野造船所(http://www.sano-shipyard.co.jp/index2.htm)
文・写真:大野晴一郎