
今夏の猛暑の中、リグビーの建造は着々と進められ、リム(バウデッキフレーム)の作製、バウキャビンの造り込み、燃料タンクの設置、さらにウォーターウェーの作製などが行われた。それぞれの作業を順に見ていきたい。

リム(デッキフレーム)は、四分の厚みを持たせた部材を5枚接着したものを型でアール(曲線)を付け、バルクヘッド前に40センチ間隔で設置された。このリムの上に、マリングレード合板が張られ、さらにその上にホンジュラス・マホガニーが張られてデッキが完成する。デッキ材が張られるのはこの先の作業だが、リムによりリグビーのバウデッキの形状が見えてきた。緩やかな膨らみのあるデッキが、ミジップ付近からビークヘッド(先端部)に向かってスラント(傾斜)するという、ランナバウトらしい複雑な形状が持たされている。船好きなら誰もがスタイリッシュな外観をイメージできるはずだ。
またリムの上面はデッキ材が張られるとその下に隠れてしまうが、下面はキャビン内の天井の部材として露出する。つまり梁である。人目につくのでホンジュラス・マホガニーを伐り出している。もちろん柾目が前面にくるように製材しているところに、設計者であり建造者である龍也氏のこだわりがある。このフレームは設置を終えた後、ひとまず外されてニス塗りが行われ、再度組み込むという手間暇がかけられた。


この作業と同時に、キャビン内の造り込みが行われた。
キャビン内のヘッドクリアランスは1380mm。31フィートのランナバウトとして充分な高さが確保された。そのキャビン内には、大人が足を伸ばして寝ることのできるVバースと、シングルシンクのギャレー、さらにヘッド(個室トイレ)が設けられる。ギャレーはマホガニー合板で造りこまれ、内部に40リッターの清水タンクが設置される。シンクは丸型になるのか角型になるのか今のところ未定。このギャレーの壁面には蓋つきの収納棚と、電気系統のスイッチパネルが設置される予定だ。ステアリング回りは極力シンプルにしたいという龍也氏の考えがあり、コンパニオンウエイ(キャビン出入口)からサッと手を伸ばせる位置に、スイッチパネルの設置を予定している。ゴチャゴチャしたスイッチの類は排除こそできないが、せめて運転席から見えなくしたいという気持ち、よくわかる。ちなみに壁面の物入れは扉を開けると、船体構造が覗き込めるようになるそうだ。1層目のチーク材とフレームが見えるのは嬉しい仕様だ。またVバース先端のバルクヘッドも上部解放型で、なんとここから1層目のチークに加え、極太のステムも見ることができる。
キャビンの壁面は、一寸五分の幅(厚みは三分)に製材したホンジュラス・マホガニーを、二分五厘間隔で全面に張り付けられた。その豪華さは特筆ものだ。




リグビーが搭載を予定しているのは250馬力のHonda船外機2基だ。今年のボートショーでお披露目になった新型のBF250が搭載される。そのエンジンのための燃料タンクが完成し、デッキ内に納められた。当初、容量は730リッターを予定していたが、余裕をもってデッキ下に収めるために、630リッターのタンクに設計変更された。ひと回り小さくなったが、それでも燃費効率の良いHonda船外機を回すのには十分な容量だ。この燃料タンク設置とほぼ同時に行われたのがウォーターウェーの製作だ。ウォーターウェーは、分かりやすく言うとサイドデッキのような部位で、舷側とデッキを接合するための重要な部位だ。リグビーのウォーターウェーは六分幅に製材したホンジュラス・マホガニーを15枚接着し、九寸の幅を持たせている。リムでも説明したように、リグビーの船体はスラントしている。そのためにウォーターウェーを型で成型することはできず、実艇にあわせて成型せざるをえないそうだ。しかも取り付けが完了したウォーターウェーはすっぽり外され、グラインダーが掛けられ、ニスの塗布が行われたのちに再度取り付けられるという手間暇が掛けられる。
左右両舷に取り付けられた九寸のウォーターウェーの間に、バウデッキのベース材のマリングレード合板が張られ、さらにその上にホンジュラス・マホガニーが張られる。



左上:デザインに凝ったクリート。デッキ裏側からボルト止めするのでデッキ面に無骨なボルトが飛び出さない。
右上:ポップアップ式のクリート。桟橋係留の際にクッションを取るのに便利。切れ込みの箇所がポップアップする。こちらもデッキ裏側からボルト止めする。
左下:バウチョック。機能美を追求したデザインだ。




















文・写真:大野晴一郎