2025.10.29
熱気球の大会をHondaが30年以上、サポートしていること、ご存知ですか? 2025年も全国4会場で開催! その大会に出場するHondaのチーム「Honda Hot Air Balloon Racing Team」で、世界の頂点を目指しているのが、上田諭パイロット。その上田選手のもとに、F1ドライバーを目指し、現在はF1のリザーブドライバー、そしてスーパーフォーミュラの選手として活躍するレーシングドライバー、岩佐歩夢選手が訪れた。世界に挑む2人の出会い、お伝えします。
岩佐選手 まったく初めての体験でした。鈴鹿のスクールにいたので、気球が上がっている姿はよく見ていましたけど、高所は得意ではないので。
──時速300km近い速度のマシンに乗る人でも、怖かった?
岩佐選手 実際乗ってみたら、気持ちよくて、楽しかった(笑顔)。揺れたときは、うぉぉーってなりましたけど。
上田選手 今日の体験は20m位の高さでしたけど、熱気球って、国内では約1,000〜2,000m、海外だと3,000m近くまで上がるんですよ。
岩佐選手 えー、僕は地面を這うように走る競技なんで、地面から離れるとちょっと無理かも(笑)。
憧れや空想から
始まった。
─面白さや楽しさで
続けてきた
岩佐選手 上田さんが、熱気球にとりつかれた魅力って?
上田選手 自然が相手であり思い通りにいかないことですね。風にすごく左右されるので、天気を調べたり解析したりするけれど、調べても調べても実際の風は、違う。でも世界には、その難しさを乗りこなす凄いパイロットもいる。私もその域を目指すうちに、20年経っちゃった感じですね。
──日本のトップとして世界に挑戦していますが、子どもの頃から、気球に憧れていたんですか?
上田選手 TV番組の「鳥人間コンテスト」がきっかけ(笑)。高校生のときに、熱気球を知って。さらに選んだ大学の気球クラブが、日本で一番熱心に活動していた出会いもあって、今に。
――2人の対談は、屋外から、Honda Collection Hallへと移動。入口すぐには、HondaJetやF1マシンが展示されています。
──世界の空を飛ぶHondaJet。実は、Hondaの空への挑戦は、創業まもない頃から始まっていたそうです。
上田選手 まずは憧れや空想から始まったところは同じですね。岩佐選手は?
岩佐選手 4〜5歳の頃にゴーカートに乗り始めて。初めてゴーカートに乗ったのが駐車場の砂利道だったんですけど、そのときにマシンを操る楽しさに完全にやられてしまって。そっからもうはまって(笑顔)。F1ドライバーになりたいというより、楽しさで続けてきた感じです。
上田選手 私も、19歳からトレーニングを始め1年かけて免許を取って、20歳に飛び始めてから、ずーっと、思い通りにいかない面白さや楽しさで、続けてきた感じです。
やっぱり勝ちたいと
思わないと。
─勝負の世界の面白さ
――2人とも「面白い、楽しい」という気持ちで継続をされてきた。同時に、レース=勝負の世界に身を置いています。それって、単純に操作してる楽しさとは、違いますよね?
岩佐選手 クルマを操ったら一番うまくて速い自信があるので、それを証明できるのがレース。今はF1のリザーブ、まだF1のレースには出てないけど世界一を目指しているので、ワールドチャンピオンのマックス・フェルスタッペン選手が相手でも、彼を超えられる自信が自分にはある。F1の頂点、自分が世界一になれるという、根拠のない自信。そういう自信があるからレースにチャレンジしていく。
上田選手 熱気球の大会は風や天気で思い通りに飛べなくても、大会だから、誰かが一番になる。例えば目的地に向かう基本競技で、1m以内に寄っても10番だったり、1キロ離れていて優勝することもある。それが勝負の世界、それが面白い。同時に、仲間とチームになって成績を残そうと頑張る取り組みが、継続してレースに挑むモチベーションです。
岩佐選手 それは僕らの世界も同じ。運とかタイミングとか、自分のテクニックだけでないものがレースを左右する。そこが面白く感じる要素の一つです。でも勝てなかったら意味がない。勝つために、チームで力を合わせて目指し、結果、日本一や世界一になる楽しさや魅力は、すごく大きい。
上田選手 そうですね、やっぱり勝ちたいと思わないと。その瞬間のアドレナリンの出かただったり、練習の質とか量が、全然変わってきますよね。無謀な目標でも何でも、まず勝ちたいと思うところからですよね。
熱気球には
ブレーキがない。
─恐怖との向かい合い
――スピードや高度、熱気球もモータースポーツも、怖いと思うときはないんですか?
上田選手 大きな特徴として、熱気球にはブレーキがない。止まりたいや、やめたい、がその瞬間にできない。風が吹いている中で着陸することや、安全な方向へ向かう風が無くなる時に、恐怖を感じることもあります。もちろん、そうならないよう飛行コースや操作の想定を入念に準備しますけど、どこか恐怖感を持ってないと事故につながるので、私にとって恐怖感は、安全のセンサーです。
岩佐選手 僕はレース中は、まったく恐怖感はない。勝ったときの喜びの方が強いですし、やっぱり、チャレンジすることの魅力や楽しさが大きいです。でも実はレーシングドライバーは、怖がりな人が多いと思います。怖がりだからこそ、正しい判断、とっさの判断ができると思います。
上田選手 恐怖感と上手に付き合うというか、ここまでなら速度を出せる、いけるという判断のなかで挑戦している感覚ですよね。
あきらめず、
次の挑戦へ。
─日本のトップから
世界へ
──「世界一でなければ日本一でない」というHondaの創業者の言葉も残っていますが、日本のトップとして世界に挑戦する、頂点に立とうというモチベーションはどこから?
上田選手 気球の大会は5日間から1週間続けて、30個ぐらいの競技を行うので、1日や1競技であれば何度かトップに立てる可能性はあります。でも最後にトップを獲る人は、継続して天気や風の変化を読み対応できた人。世界選手権という大きな舞台で、今はあと一歩二歩と進んでいる。ちょっとずつ頂点が見えてきているのが、今、面白い。
岩佐選手 世界で勝つ、頂点をとる、その喜びの魅力は大きいと思います。だからこそオリンピックや様々なスポーツで世界一を競う。そこに自分もチャレンジするのは、やっぱり、わくわくしますよね。
――以前、HRCのF1エンジニアたちの取材で多く聞かれた言葉は「あきらめない」でした。
岩佐選手 間違いなく、そこだと思います。上に行けば行くほど、うまくいかないときもあるけど、それを活かしてどこまで自分を伸ばして次の挑戦につなげるか。悩んだり、テンション下がることもあるけど、それも僕は嫌じゃない。どこかに苦しさを楽しくやってる自分がいて、振り返ったら楽しいから続いた感じです。
上田選手 熱気球の世界には、60〜70代で現役の方々が、世界中にいらっしゃって、一度各国の代表から退いても、継続してチャレンジしていることで、また復帰するというパイロットもいます。挑戦への区切りやタイミングもあると感じています。自分の気球人生も、第1章や第2章があるのか、思い通りにいかないものを楽しみながら、その時々に身を任せようと思っております。
――対談前は、お互い初対面と聞いていたので、編集部も少し心配しましたが、2人の話はお互いの熱のキャッチボールに。対談が長くなってきたので、ここから続きは「後半戦」に。
撮影協力:モビリティリゾートもてぎ
https://www.mr-motegi.jp/
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