98歳のつくる絶品ピザと
“S600”の関係

2024.6.20
LIFE CHANGER
98歳のつくる絶品ピザ! と “S600” の関係
国内外から大勢の観光客が詰めかける豊洲市場と築地。その一角にある、人気のイタリアンレストランが、豊洲「魚河岸トミーナ」、築地「トラットリア築地トミーナ」。
新鮮な魚介類を使ったパスタ類に加え、具だくさんの石窯ピザを目当てに、連日多くのお客さんで賑わう。特に豊洲店にいらっしゃる98歳になられるオーナーのお母さま、土井スズ子さんがつくるピザが大人気。そんな冨山家にはいつも「Honda」があったと聞き、オーナーの冨山節子さんに会いに行きました。
節子さん:
築地のお店を始めたのが34年前になります。16年前に他界した夫が、ある日突然、築地でイタリアンレストランをやる、ピザを焼くぞ! と言い出しまして、そこから母と私も勉強して(笑)……今では多くの方に喜んでいただいていますけど、ホント、必死でした。気づいたら母も98歳ですものね(笑顔)。
節子さん:
そんな夫が、25年ほど前、突然、中古のS600を手に入れてきたんです。これが好きなんだ、乗るぞ! って。屋根がオープンだし、私は最初は怖かったんです。でもいつのまにか、風を受けて走るのが気持ちよくて。夫と二人で、色んなところに出かけましたね。だからこのクルマには、亡き夫との想い出がいっぱいで、手放す気がしなくて。
節子さん:
そうそう、夫の恭行とは、学生時代にHonda1300でラリーもやっていたんですよ。当時は学生がラリーをやること自体は珍しくなく、私がコ・ドライバー(ルート案内などをして走行のサポートする)として、ふたりでいろんな大会に出ていたんです。

――そんな経験もあるからか、現在も自らハンドルを握り自宅とお店を往復する節子さん。生まれも育ちも東京・青山。
節子さん:
現在のHonda本社ビルが建つ以前のこともよく覚えています。確か、あの場所には石材屋さんがあったんですよ。同じ青山という縁もあって、Hondaはずっと馴染みのある存在でした。
そんな縁もあって、S600だけでなく初代STEP WGNも、今も社用車として使っています。食材の調達とか積載に便利でしょ。赤で可愛いですし。
息子 冨山晶行さん
『トラットリア築地トミーナ』シェフ
――節子さんの長男であり、現在、築地にある「トラットリア築地トミーナ」のシェフを務める晶行さんにもお話を伺いました。

晶行さん:
父はずっと病気を抱えていました。S600を購入した時には、たぶん自分の人生がそう長くはない自覚があったんじゃないでしょうか。だからこそ、最期にS600に乗りたかったのかなって思います。普段は大酒飲みでしたが、アルコールを控えた晩のS600で颯爽と走って行く姿は強烈に覚えています。そうそう、バイクも好きだったので、これなら俺にも乗れると言って、Hondaのモンキーを買ってきたことも。そんな影響でか、僕もモンキーにも乗っていますよ。
家族も知らなかった
父のエピソードを教えてくれた、
S600
晶行さん:
僕も以前はS600に関する知識が無かったし、ほかのクルマに乗っていたこともあって、正直、そのまま所有し続けるか否か決めかねていました。ひとまず父がメンテナンスしてもらっていた工場に連絡を取り、整備をお願いしに行ったんです。そこで工場の方に、父がここでどう過ごしていたかとか、何を話していたかとか、私たち家族も知らなかった父のエピソードを聞かされて。そんな思い出を聞いているうちに、S600は僕が乗っていこうと決めたんです。
――2024年、生誕60周年を迎えたS600。1964年式の冨山家の愛車は、亡き父であり、夫である恭行さんの思い出とともに、Hondaの歴史を物語る一台なのです。

そしてメンテナンスされたS600は、今も、冨山家の人々を乗せて走り続けています。
晶行さん:
僕の息子も、今、高校1年生。たまにS600の助手席に乗せて出かけると、『ねぇお父さん、このクルマいつ俺にくれるの?』なんて言うんです。亡き父から、母と僕に、そして僕の息子に、と考えると、感慨深いと同時に、ちゃんと引き継げるよう大事にしていこうと思っています。

節子さん:
私ももうおばあちゃんですからMTは左足がつらい(笑)でもS600は可愛いし、もっと乗りたいんです! このデザインのまま、中身が丸ごと現在のクルマに入れ替えたり、EVに換えたりできたら嬉しいなぁって思っています。Hondaさんには優秀なエンジニアがたくさんいるでしょうから、そういうのもやってくれませんか?(笑)。
――夫との思い出だけでなく、時代に即した新しい発想で古いクルマを楽しもうとする好奇心旺盛なハンサムウーマン、節子さん。そして父との思い出を胸に、さらに次代にS600を引き継ごうと決めた息子の晶行さん。冨山家とS600が紡ぐ物語は、これからも続きそうです。

そして98歳のおばあちゃんのつくるピザは、本当に最高です!
機会があれば、ぜひ!



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