高齢の一人暮らしの方にも
出前をしてくれる「お蕎麦屋さん」
次に、東京・水天宮。安産祈願で知られる神社「水天宮」にほど近いお蕎麦屋さん『水天宮 長寿庵』。昭和59年創業、40年続く町に根付いたお店。息子と両親の親子3人で切り盛りする店の人気のメニューは、熱野菜そばと、エビフライカレーそば。場所柄、寄席に出ている噺家さんも訪れる。歴史を感じる店構え、達筆な文字の看板をくぐり、スーパーカブとの縁を伺いました。
――田中智明さん(息子):
うちの蕎麦は、強い歯応えとつるんとした喉越しが特徴。今では扱っているお店も少なくなってきた茶蕎麦をやっています。でもコロナ禍の時は、本当に厳しかった……家族経営だから、何とか生き延びられた感じです。
そもそも、お店自体が狭いから、出前にも力を入れていて、近くの会社さんや高齢の一人暮らしの方に出前することも多い。パッと出前できるお店が意外に少ないので、うちはお客さんのためにも対応できるようにカブを使っています。
――田中一哉さん(父):
青山一丁目の『あおやま長寿庵』で修行して、うちはそこから暖簾分けしてもらっています。それこそHonda本社ビルが建つ前に。免許取って初めて乗ったバイクは、ホンダベンリイSS50でしたし、うちの息子も、お店に本田宗一郎の本があるくらいHondaのことが好きなんで、何か縁を感じますね……。なので、今回、取材の話が来た時 “Hondaさんからならお受けしろ” って息子に言ったほどです(笑)。
――田中智明さん:
私が子どもの頃から親父はカブで出前をしていた。50ccから90ccに乗り換えはしましたけど、カブは全く不満が無い、出前の道具としたら最高なんです!やっぱり仕事柄、出前を運んでいる途中のトラブルは最悪ですからね。でも今まで一度もない。次もカブですよ。
もう良くも悪くも、カブはあって当たり前。“空気”みたいに馴染んでいます。時代が変わってもカブを換えるつもりもないし、出前も続けますよ。待っている人がいるんでね。