People of Honda
母国を離れて ー鹿児島編ー
グローバル時代になったといっても、母国を離れ海外で働くことは勇気がいります。ましてや、特別な知識が必要な職業なら大変な努力がともないます。
鹿児島の “Honda Cars さつま” では、多くの海外からやってきたサービススタッフが働いていると聞き、会いに行くことに。どんな想いをもって、日本で働いているのでしょうか。待っていてくれたのは、笑顔が素敵な2人。チャン チュン ドゥックさん(以下、チャン)と、レー トゥアン ドゥックさん(以下、レー)。
――お疲れさまです。二人はいつ、どちらから?
チャンさん 4年前にベトナムから。同じ時に6人で鹿児島に来ました。
――現在、サービススタッフとして従事していると聞きました。もともと整備士になりたかったの?
チャンさん 僕はベトナムにいた頃から、クルマが大好き、エンジンが大好き。だから、(整備の)勉強をしたかった。かっこいいスポーツカーが好きなんです。Hondaのクルマだと、CIVIC、かっこいいから大好き。
レーさん ベトナムは、バイクがいっぱい走っているけど、僕は、あまりクルマには興味はなかった。でも日本に来て過ごすうちに、今はすごく楽しくなってきた。鹿児島のお店で働くのが好きになった。日本の食べ物は美味しい(笑)し、大好き。
――日本語の勉強も必要だし、整備のことも学ばなきゃいけない。大変ですよね?
レーさん 実は僕、日本に来て1年目ぐらいの時に、帰りたくなった。とにかく、ベトナムに帰りたくなった。
――え!? レーさん、さっき、日本が楽しいと言いましたよね?
レーさん ホームシックになった。逃げ出したくなった。でも、ベトナムにいる家族とインターネット電話して、がんばれって応援してくれた。一緒に日本に来た仲間も励ましてくれた。だから、今は大丈夫。毎日が楽しくなった。あの時は、本当に辛かったけどね。
チャンさん 僕は一度も帰りたいと思ったことはなかった。でも、勉強は大変。ベトナムで一応、日本語や整備の勉強はしてきたけど、全然、違った。でも、先輩やお店のスタッフがすごく親切に教えてくれた。食事やお酒にも誘ってくれて、本当に嬉しかった。だから、頑張れる。
――2人ともすごい! と思います。日本のどんなところが好き?
チャンさん 僕は『釣り』。鹿児島で海の釣りに連れて行ってもらった。ベトナムでは海釣りをしたことがなかったから、本当に楽しい。ブリも釣った!(笑顔)。今は『釣り』をするのが、休みの日の楽しみです。
レーさん 僕は、東京や大阪や、色んな場所に行った。色んな所に行くのが好き。東京に行った時には、大久保で友だちといっぱい飲んだ。梅酒、すごく美味しいね!あと、日本の食べ物が好き。特に『牛丼』が大好き。牛丼、僕の奥さんに作ってもらいたい。
――えっ? レーさん、結婚しているんですか?
レーさん この前、ベトナムに帰った時に、結婚した。もうすぐ、奥さん、日本に来て、一緒に暮らす予定。
――おめでとう! では結婚生活は日本で、そしていつかはベトナムに帰る予定?
レーさん 今、僕は、ベトナムには帰りたくない。ずっと「さつま」で、日本で働いていたい。お店の人たち、みんな優しい。日本が好きになったから、奥さんと相談するつもり。奥さん、この前、日本に来た時にケーキを作って、お店のみんなに差し入れしてくれた。
チャンさん 僕は、もっともっと勉強して、いつかは帰りたい。ベトナムで整備のお店を開いて、社長になりたい。夢だけど(笑顔)。僕は、まだ結婚はしていないけど日本に住んでいる同郷の彼女がいる。彼女とも、よく、そう話している。ベトナムでビジネスをしようって。
――それぞれの将来の夢は違います。でも、一緒に日本にやってきて、一緒にHonda Carsでサービススタッフとして働く2人。今ではお店の人気者のようです。こうした海外からの招聘を始めた理由を「Honda Cars さつま」のトップに聞きました。
――2人だけでなく、ベトナムから多くのスタッフを招聘していると伺いましたが?
小原社長 4年前に、この2人を含め6名が一期生として、その後、二期生も招きまして、今では13名のベトナムから来たサービススタッフを雇用しています。もともと国内での整備士確保が難しくなり始めていましたので、思いきって、海外からの招聘に挑戦することにしました。結果、みんな勉強熱心で頑張ってくれているので、とても、助かっています。
――もともと親日な人が多いベトナム。とはいっても苦労も?
小原社長 苦労より、彼らに感謝ですね。彼らが来たことで、もともとの日本のスタッフも刺激を受けています。彼らに接したり教えることで、今までとは違った交流が生まれ、お店の雰囲気も明るくなったように感じています。
――でもレーさんは、ホームシックになったと……。
小原社長 はい。でも今では、彼はベトナムの仲間のリーダーですし、お店全体の盛り上げ役です。そしてずっと弊社で働きたいとも言ってくれています。ありがたいですね!でも彼のように、ずっと日本にいたいという人だけでなく、技術を習得して帰国しても、母国でHondaを応援してくれたら、それでいいと思っています。
――では、今後も招聘を続ける予定ですか?
小原社長 国の法的な規制で今は8年が最長なのですが、緩和されればもっと長く雇用したいですね。またチャンスがあれば、ベトナムに限らず他の国の方にもチャレンジしていきたい。国籍は関係ありません、大事なのは『人』ですから。
――大事なのは『人』という力強いトップの意志を聞き、まだまだ、こうした取り組みが広がっていく予感がしました。そしてとにかく明るく、終始、一生懸命にインタビューに応えてくれた2人の姿勢に、編集部は応援したい気持ちが溢れました。
チャンさん とにかく僕は、クルマが好き。Hondaのこともベトナムの頃から知っていた。頑張って、もっともっと勉強して、クルマをいじれるようになりたい。学んだ技術をベトナムに伝えたいです。でも日本にいるうちに、沖縄に釣りに行きたいです(笑)。
レーさん 僕は、とにかく毎日を楽しくしたいんです。お店の人、先輩、お客さん、みんなを楽しくしたい。勉強や働くことは大変だけど、日本にずっといて、みんなを楽しくできたらいいなぁ(笑顔)。
――創業から75年を超えたHonda。その歩みは、日本国内だけでなく世界中で生産し販売し、世界中のお客さんの期待を超える商品やサービスを提供してきた歴史です。Honda Carsで働くスタッフが海外の人であっても、何の違和感もありません。むしろHondaが培ってきた技術を、多くの海外の人に伝えていくことは、Hondaの使命なのかもしれません。がんばれ! チャンさん! レーさん!
そして編集部は、これからも海外から来たサービススタッフに会いに行きたいと思っています。彼らがHonda Magazineに出てくれることで、少しでも力になれるなら、編集部はどこへでも伺います。Honda Carsからの取材の依頼、お待ちしまーす!