2024.1.12
東京オートサロン裏話 ーWR-V編ー
先日、誕生したばかりのまったく新しいSUV「WR-V」。力強い無骨なデザインと魅力的な価格で、すでに大きな話題になっているので、ご存知の方も多いのでは。
そして、その「WR-V」をカスタマイズしたコンセプトモデル「FIELD EXPLORER CONCEPTフィールド エクスプローラー コンセプト 」が、今回の「東京オートサロン」の場に、早くも登場!
WR-V FIELD EXPLORER CONCEPT
ベース車両 :WR-V (FF) タイプ : Z
いかがです? かっこいいですよね? 編集部やイベント運営のスタッフの間では「これイイよね!」と話題です。そこで、このコンセプトモデルのデザインを担当した、ホンダアクセスに突撃。デザイナーの大西さんと、色々、お話してきました。
――STEP WGN SPADAのデザインを担当していた大西さんじゃないですか! ごぶさたしています。Honda Magazineには2022年3月に登場いただきましたね。

大西 はい。その後ホンダアクセスで、カスタマイズや純正アクセサリーのデザインを担当しています。

――ホンダアクセスといえば、Hondaの純正アクセサリーを世界中のオーナーに届ける会社ですね。では今回の、このコンセプトモデルも、純正アクセサリーなんですか?

大西 いいえ、実は違うんです。市販用のWR-V純正アクセサリーとしては「TOUGH STYLE(タフスタイル)」という別のスタイリングで発表しています。今回、東京オートサロンに展示したコンセプトモデルは、その発売予定のWR-V用純正アクセサリーのデザインとは異なる、新しい提案としてデザインしました。
株式会社ホンダアクセス
エクステリアデザイン担当
大西優一
――では、あくまでも展示用に創ったもの?

大西 はい、そうなんです。でもコンセプトカーとして、非現実的なデザインを創ったわけではないのです。手軽に自分でも試してみたくなるような価格でカスタマイズできるような提案として考えました。今回、もし多くのお客様から、期待やご要望をいただけたら、製品化につながることも、あるかもしれません。

――単なるショーモデルではないんですね?

大西 夢を追ったコンセプトカーではありません。東京オートサロンは、現実的なカスタマイズを探しに来る方も多いイベント、その期待に応えられるような提案にしました。
――会場で、すごい人気です。人気が高まれば買える可能性があるんですね?

大西 お客様のお声次第ですね。そうなって欲しいと思っていますが。

――もともとのWR-Vをどうカスタマイズしようと思ったんですか?

大西 「WR-V」はSUVです。当然、アウトドアやキャンプに行くシーンが想像できますけど、私なりに『等身大のユーザー』を想像しました。
アウトドアに行くけど、本格的にダートを走ったり、キャンプをするわけじゃない。むしろ、頑張りすぎず楽しみたい。そんなユーザーのイメージが浮かびました。一言で言えば、ゴリゴリなアウトドアではない、そんな感覚。クルマをカスタマイズするにしても、ゴリゴリやるタイプではない。そんなユーザー像が、自分の妄想のなかで育っていきました。
――『等身大な感じ』その感覚、すごく共感します。アウトドアに毎週行くわけじゃない、普段は街にいる、現実にはそういう人が多いですから。

大西 ゴリゴリのアウトドア希望のみなさんには、他のSUVにも選択肢があると思います。WR-Vは、そういうクルマではないと思います。その手のSUVより、もっと使いやすく、乗りやすい存在。だからカスタマイズも、雰囲気を出すことを大事にしました。
――どんな道具も、本当にプロが使うものって使いこなせない。でも、プロが使うような雰囲気のものが欲しい。そういう感覚?

大西 そうなんです! WR-Vってカクカクしていて、ゴツさとかタフネスみたいな雰囲気がベースのデザインにあるので、そこを引き伸ばすようなイメージで考えました。
そして気軽にカスタマイズ出来るレベルで。具体的には『グリル周り(顔の部分)』と『ルーフキャリアの装着(既製品)』と『タイヤとホイール』ぐらいなんです。そこにTOUGH STYLEとしてラインナップしている純正アクセサリーをブラックアウトして装着しています。グリルなど細かい部分とのトータルでのカラーコーディネートにも気を配っています。
――全体の変更箇所を少なくして、カスタマイズ費用を抑えているんですね。その割には顔(グリル)がずいぶん違って見えます。

大西 もともとWR-Vは、価格が魅力的なクルマですから、カスタマイズするにしても、手に入れやすい範囲で個性が出せるものじゃないといけないかなと。だからグリル(顔)も簡単にハメ変えられるデザインにしました。ただ、僕の予想以上に『HONDA』というロゴを使ったデザインが人気になっています(笑)。
――はい! 私も正直、このロゴの顔が欲しいって思いました!(笑)。

大西 社内で、こういうパターンのデザインもありなのではという考えがもともとあったので、今回、実現することができました。

――二輪だと、タンクに入るマークは、“HONDA”パターンと“ウィングマーク”パターンがあります。なら、クルマにもあってイイですよね!

大西 こういう遊び心ってHondaにとって大事だと思うんです。純正だからこそ出来る遊びもあると思っています。
――大西さんは今、Honda純正アクセサリーという目線で、世界中のオーナーを考える立場ですが、そのあたりはいかがです?

大西 やっぱり国や地域で、文化や生活が違う。それぞれの人に向けた「地域密着」的な考え方が大切だと、あらためて実感しています。以前のSTEP WGNは日本市場向けでしたが、今いるホンダアクセスはグローバルなので、とても勉強になっていますね。

――生活する人、乗る人のことを考える、ということですね。でも共通する価値観もあるのでは? 時代とか流行といった……。

大西 そうなんです。国が違っても、変わらない価値観もある。WR-Vの持つ「アウトドアテイストだけど、ゴリゴリな世界じゃない」というような感覚は、国を超えた、時代の共通性のように感じています。
――クルマをカスタマイズするにしても、パーツを一つずつという感覚ではなくて、最初からコンプリートされたものを見て欲しいと思う、そんな時代に変わってきたように思いますよね。

大西 だから今までの「純正アクセサリー装着」という考え方ではなく、人とはちょっと違うクルマをそのまま買いたい、そう思ってもらえるようなデザイン提案が必要だと思います。今回の東京オートサロンでの展示は、まさにそこへのチャレンジです。
――最後に。編集部でこのまま乗りたい! このまま販売してくれませんか?(笑)。

大西 僕は是非! と思いますけど。何にせよ、多くのみなさんの声が集まれば、製品化に向けて会社を説得できるかもしれません。それが今回のデザインの、最大の挑戦ですし。
Honda車に乗る方って、色んな人がいて色んな好みがあります。でも一人でも多くの人が、出かけたくなるようなデザインの提案ができたら、それが何より嬉しいと思っています。どこかへ行きたくなる、出かけたくなる、そんな気持ちを、気軽なカスタマイズの提案で増やしたい、そう思っています。



――マーケティングも大事だけど、使う人乗る人のことを妄想することがもっと大事だと語ったデザイナーの大西さん。『等身大』という言葉で、今の人たちの感性を捉え、デザインに落とした裏話は、とても面白かった。最近の世の中の話題でいえば、ちょっとジムで運動とか、ちょっとDIYとか……そんな気軽な挑戦が、自分の日々をワクワクさせるのかもしれない。「WR-V FIELD EXPLORER CONCEPT」登場の背景を伺い、そんなことを感じました。

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