「挑戦とか
 凄いことじゃなく、
 僕には当たり前の
 ことなんです」

 笑顔のフランツオーナー

2023.12.22 久保天清さん Honda・フランツシステム オーナー
笑顔のフランツオーナー
「挑戦とか凄いことじゃなく、僕には当たり前のことなんです」
みなさんは「Honda・フランツシステム」をご存知ですか? 両上肢の不自由な方が、両足だけで運転操作できる運転補助装置のこと。鹿児島に住む青年が、今年、フランツシステムのオーナーになったと伺い、編集部は会いに行きました。
桜島の雄大な景色を眺め、着いたのはHonda Cars 鹿児島西 田上店。待っていてくれたのは、久保天清さん(19歳)。少し緊張気味ながらも、満面の笑顔を浮かべてくれました。
他の人より劣っていると感じることはなかった
――フランツシステムのFITに乗っているし、部活でテニスもやっていたと伺いました。久保さん、すごいアグレッシブですね。

久保さん 生まれた時から、この身体なので、自分にとっては凄いこととかじゃないんです。当たり前のこと。みなさんが普通に生活をするように、僕はこの身体で生活するのが当たり前なので、他の人より劣っていると感じることはなかったです。

――なるほど。その想いから運転することも?

久保さん 大人になったらクルマを運転することは当たり前だという思いがありましたし、行動範囲が圧倒的に広がるので、自分で運転したかったんです。
――フランツシステムはどこで知ったんですか?

久保さん 高校に入った頃に両親から聞きました。それなら僕も乗れるかもと思いました。

――納車はいつでした?

久保さん 2023年7月あたりに、自分の(クルマ)が来ました。今日から色んな所に行けると、すごくワクワクしたことを覚えています。

――納車まで免許取得など、どのような流れで?

久保さん 実は今、隣にいるのが僕の叔父さんでして、後押ししてくれました。
――え!? こちらの店の工場長が、叔父さんなんですか??

柿木さん はい。天清が高校に入る頃に、親から相談されました。実は、このお店でもフランツシステムは初めての販売ですので、よく知らなくて、私自身もそこから勉強しました。

久保さん まずはHonda・フランツシステムを販売しているホンダアクセスの方と、面談しました。2022年の6月でした。そこで初めて車両も見せてもらって、その後11月から教習所に。教習所にはホンダアクセスさんが車両を用意してくれました。
Honda Cars 鹿児島西 田上店
工場長 柿木健一郎さん

――なるほど、Honda側で教習所にクルマを貸し出したんですね。

久保さん はい。教習所の先生も、一生懸命、勉強してくれたと聞きました。 そして1月に卒業して、7月に僕のFITがやってきました。本当に、多くの人に支えられたと思って感謝しています。
――実際に街を走って、いかがですか?

久保さん 友達に乗せてもらっていたのが、今度は僕が乗せてドライブに行けると思うと「今、俺、クルマに乗っているんだ」と感じて嬉しかったですね。土日は毎週乗っていますし、先日、宮崎県の高千穂に行きました。今度は大分まで行く予定です。
道がつながっていれば、もう行けるところまで行けるので、これからも楽しみたいなと思っています。

柿木さん 天清がクルマで自由に動けると思うと本当に嬉しいですね。

――お父さん、お母さんは乗せました?

久保さん お母さんを最初に乗せて、納車から帰る時にお父さんを乗せて。喜んでくれました。自分のことのように。
話を聞いていても、笑顔を絶やさない久保さん。確かに本人が言う通り「当たり前のこと」として運転しているのだけど、この前向きはどこからくるのだろうか……撮影時の雑談で話してくれました。

久保さん 昔は色々ありました。ネガな時もありました。高校2年の時に自分の気持ちを作文にしたんです。それが内閣府の最優秀賞に選ばれて、それがすごく自分の自信になったんです。
『私は生まれつき肘から先が無い、世間的に言う「障がい者」だ。人間の顔がみんな違うのは誰もが知っている当たり前のことだ。産まれたときの体重も身長も髪の毛の本数も、何もかもが違う。自分と全く同じコピーなどこの世には存在しない。ではなぜ、産まれたときに、手がなかったら、足がなかったら、「障がい者」という枠に放り込まれてしまうのだろうか。』(中略)

『だからこそ私は、示したいと思った。自らの生き方で。生まれ持った体で、自分なりに生きることが、当たり前のこと、普通のことであるということを。』(中略)

『私はこれからも示していきたい。「障がい者」というレッテルを貼られた人間でも、生まれ持った体で、自分なりに生きれば、努力を惜しまず挑戦し続ければ、夢を叶えることが出来るということを。』
久保さん その賞をもらって、自分の想いが認められた気がして、そこから変わりました。同じような人に伝えたいことは、もしかしたら自分もできるかもしれないっていう、ちょっとした希望からチャレンジしようという気持ちはでてくると思うので、色々ポジティブに考えていって欲しいなと思います。
まだ19歳と言ったら本人に怒られそうだけど、久保さんの言葉に編集部は感嘆だった。そして何よりも彼は、自分がこういう取材を受けることで、「障がい者」と言う枠にはめてしまう社会概念と闘っているように感じた。
どんな人も「一人ひとり」違うのだ。

「みんな」「あらゆる人」ではなく「一人ひとり」なんだ、と改めて教えらました。
久保さん FIT、最高です。大人になったらクルマに乗って行きたい所に行く、親の姿を見てきたんでそうなりたいなと。それが実現できたことは、すごい当たり前のようで、色んな人に協力してもらった特別なことなので、感謝しながら乗って行きたいと思います。

帰る時も颯爽と笑顔で運転していった久保さん。
あ! 約束がありました! 書いて欲しいと言われた約束が。


久保さん 彼女、募集中! です!



今回の取材で初めてフランツシステムオーナーに会った、新人編集部メンバーの感想を最後に。

ご両親や販売店スタッフ、教習所の方々への感謝の気持ちをもちつつも、「挑戦」ではなく「当たり前」のことだとお話しされる姿が印象に残りました。
視力を補正するために眼鏡を買うように、Hondaのフランツシステムも必要な人にとって「当たり前」の選択肢であり続けたいと改めて思いました。

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