「ふしぎ」を見に行こう

「ふしぎ」な天体

夜空にかがや
「冬のダイヤモンド」
とは?
冬の星空のふしぎ

冬は星が一番きれいに見える季節らしい。
どうしてかな? どんな星が見えるかな?
夜空に輝く「冬のダイヤモンド」とは? 冬の星空のふしぎ 夜空に輝く「冬のダイヤモンド」とは? 冬の星空のふしぎ

探検たんけんメンバー

  • 隊員はると
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員はると
  • 川口 雅也さん
    この人に聞いたよ
    天文雑誌ざっし『星ナビ』編集へんしゅう長の
    川口かわぐち 雅也まさやさん

冬の星空はなぜきれい?

  • 冬は夜が長いから、星空観察を楽しみたいな。
  • いいね。肉眼にくがんで星を見るには冬は一番いい季節だよ。寒いけどね。
  • そうなの? どうして?
  • 冬は空がんでいるから、星がよく見えるんだ。太平洋側にかぎった話だけど、冬は大陸からく季節風が山をこえて太平洋側にきおろすことで、空気が乾燥かんそうするのと、風でこまかなチリが飛ばされるから、空の透明とうめい度がとても高いんだ。
  • 空気が乾燥かんそうすると、どうして空の透明とうめい度が高くなるの?
  • 空気がしめっているときって、空気中には目に見えないくらい小さな水滴すいてきがたくさんあるんだ。これが星の光を乱反射らんはんしゃさせるから、湿度しつどが高い日は星空がぼやけるんだ。
  • 空にモヤがかかったようになるんだね。
  • そう。それに、空気中に小さな水滴すいてきやチリがたくさんあると、街の明かりもそれに反射はんしゃして、夜空が明るくなってしまうんだ。きれいな星空を見るには、空気が乾燥かんそうしていて、空気中にチリが少ないことが大事なんだ。
  • なるほどね。そういえば、台風のあとも空がきれいに見えるよね。あれも風でチリが飛ばされるから?
  • そうそう。それと同じで、冬の太平洋側は、台風のあとのように空がスカッとした日が多いんだ。あと、冬の星空がきれいに感じるのは、星がまたたいて見えるという理由もあるよ。
  • 星がキラキラして見えるってこと?
  • そう。冬はジェット気流という強い風が日本の上空でいていて、空気のかたまりがびゅんびゅん飛んでいるんだ。これがレンズのような役割やくわりをはたして、星の光がキラキラと点滅てんめつして見えるんだ。
  • へー! 冬の星空、最高だね!
  • それと、冬は明るい星の数が多いのもポイントだよ。
  • そうなの? ほかの季節よりも?
  • うん。夜空で一番明るい星のことを1等星というよね。1等星は全部で21あるよ。そのうち日本から見えるのは16で、そのうち冬は8もの1等星が見えるんだ。

※日本でも緯度いどによって見られる1等星の数はことなる。16見えるのは東京~大阪~福岡あたりの緯度いどの場合。

冬の夜空には1等星がたくさん!
  • ほんとだ! 冬が一番多い!
  • しかも、明るい星がわりと近くに集まっているから、冬は夜空を見上げたときのインパクトが一番大きいんだ。
  • ぼく、この中で冬の大三角なら分かるよ。学校で習った。
  • 南の空にかがやくオリオンベテルギウスと、おおいぬシリウス、こいぬプロキオンだね。この3つの1等星をむすぶと三角形になるから、「冬の大三角」とよばれているんだ。
冬の大三角
  • オリオンはこんぼうを持っているけど、何をしている人なの?
  • オリオンは狩人かりうどだよ。星座せいざのほとんどはギリシャ神話がもとになっていて、神様に関するものが多いんだけど、オリオンはふつうの人なんだ。お父さんが海の神様だという説はあるけれど。
  • 親近感がわくね。オリオンって形もかっこいいよね!
  • はなやかな星座せいざだよね。つづみのような形をしているから、日本では鼓星つづみぼしともよばれていたよ。さて、「冬の大三角」を見つけたら、さらに範囲はんいを広げて「冬のダイヤモンド」も見つけてみよう。
冬のダイヤモンド
  • ベテルギウスを真ん中に、まわりの明るい星をつなげるとダイヤモンドみたいな形をしているんだね!
  • この中でカストルだけ2等星で、ほかは1等星なんだけど、カストルも同じふたごポルックスとほとんど同じ明るさだから、セットでおぼえておこう。
ふたごの兄弟星
  • 2等星のカストルのほうがお兄ちゃんなんだね。
  • うん。ふたごの兄弟なんだけど父親がちがっていて、兄のカストルは人間の子、弟のポルックスは神様の子なんだ。
  • ふくざつな境遇きょうぐうなんだね……。
  • ギリシャ神話はドロドロした話が多いんだ。それで、ポルックスは神の子だから本来は不死身なんだけど、お兄ちゃんが争いで死んでしまったのを悲しんで、いっしょに天にのぼったと伝えられているよ。
  • 生い立ちはふくざつでも、なかよし兄弟だったんだね。泣けるなぁ……。
  • もうひとつ冬の夜空で見つけてほしいのが、すばる。たくさんの星が集まったものなんだ。「まとめる」という意味の「べる」が語源ごげんだよ。
星の集まり「すばる」

オリオンのベテルギウスから、おうしのアルデバランを通った先にある。

  • たくさん星があるのは、肉眼にくがんでも見える?
  • 見えるよ。6つくらい星が見えたら、かなり目がいいほうだね。双眼鏡そうがんきょうを使えばもっとたくさん見えるよ。
  • がんばって6つ数えてみたいな〜。
  • ちなみにすばるは欧米おうべいでは、ギリシャ神話に出てくるプレアデス7姉妹にちなんでプレアデス星団せいだんとよばれているんだ。美しい姉妹だったからオリオンに追いかけられて、げるように空にのぼったという伝説があるよ。
  • え……オリオンってそういう人? せっかくげたのにオリオンも空に来ちゃったんだね。
  • 夜空でもオリオンからげるように西へしずんでいくのがおもしろいね。星座せいざにまつわる物語にはいろいろなパターンがあるから、調べてみるといいよ。

星によって
色がちがうのはなぜ?

  • おおいぬのシリウスは、かがやきがするどくてかっこいいね。
  • シリウスは地球から見える恒星こうせいの中で、太陽の次に明るいんだ。もともと明るい星なんだけど、地球に近いからさらに明るく見えるという理由もあるよ。
  • そっか。星の明るさは地球との距離きょりも関係しているんだね。じゃあ、星の色にちがいがあるのはどうして? 赤かったり青かったりするよね?
  • 星の色がちがうのは、星の表面の温度がちがうからだよ。自分で光っている星は、太陽と同じで、星の内部でエネルギーをつくり出して光や熱を出しているんだ。温度が高いほど青白く、温度が低いほど赤く見えるよ。
星の色のちがいは温度のちがい
  • 赤いほうが熱そうに見えるのに。
  • ガスコンロのほのおも、先っぽの赤い火よりも、中心の青白い火のほうが温度が高いんだ。それと同じだよ。ちなみに太陽の表面の温度はカペラと同じくらい。色もているよね。
  • ほんとだ! 太陽と同じ黄色だね。
  • ところで季節の星は、何月に見るかによって同じ時刻じこくでも星の位置が変わるから、それを確認かくにんしておこう。これは1月15日の夜9時ごろの東京の南の空だよ。
1月15日の夜9時ごろの
南の空(東京)

※天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ11」で作成

これと同じ星空が見えるのは、11月15日だと深夜1時ごろ、12月15日だと夜11時ごろ、2月15日だと夜7時ごろ。大阪では20分後、福岡では40分後にほぼ同じ星空になる。

  • 夜の8〜9時くらいにいろいろな冬の星を見るなら、1月や2月がよさそうだね。
  • そうだね。季節の星が同じ位置に見える時刻じこくは、ひと月ごとに2時間ずつ早くなるとおぼえておこう。あと、これは1月15日夜10時ごろの東京の南の空だけど、低いところにカノープスという星が見えるのはわかるかな?
南の空の低いところに見える星
「カノープス」

※天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ11」で作成

  • 赤色の星?
  • 本当は白色の星なんだけど、地平線すれすれに見える星は、頭の真上に見える星にくらべて、光が大気のそうを通ってくる距離きょりが長いから、途中とちゅうでたくさん散乱さんらんして、一番散乱さんらんしにくい赤い光だけがとどんだ。
  • 太陽も地平線にしずむとき、赤くみえるよね。
  • そうそう。夕日が赤く見えるのと同じ原理だよ。だから実際じっさいよりも暗く見えるけど、実はカノープスはシリウスの次に明るい1等星なんだ。
  • へー! でも、こんなに低いところだと、建物がジャマになって見えないかな?
  • 九州や沖縄ではもう少し高いところに見えて、東京でギリギリ見えるくらいだね。水平線が見えるところに行くと見えやすいよ。ながめのよいマンションからも見えるかも。
  • かんたんには見えないんだね。
  • うん。カノープスは昔から見えたらラッキーな星と言われているんだ。中国では南極老人星とよばれ、見えると長寿ちょうじゅが約束されるらしいよ。
  • そうなんだ? だったら、おばあちゃんやおじいちゃんといっしょに見てみたいな。冬の星空は見どころがいっぱいだね。
  • 山や高原など、空気がんでいて、街の明かりが少ないところへ行くほど、美しい星空が見られるよ。スマホを空にかざすと星や星座せいざの名前がわかるアプリもあるから、そうした道具も使いながら名前をおぼえていってね。

参考:星空観察アプリ「星空ナビ」
http://www.astroarts.co.jp/products/navi/index-j.shtml

冬の美しい星空を
見に行こう

星や星座せいざを初めて学ぶなら、地元の天文台へ行くのもおすすめ。
くわしく説明してくれる人がいるよ。
観察会は予約が必要な場合もあるので、事前に問い合わせよう。

※各施設の情報は、2021年11月のものです。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
お出かけの際は事前に公式サイトなどで最新情報をご確認ください。

  • 銀河ぎんがの森天文台(北海道)

    画像提供:銀河の森天文台

    銀河ぎんがの森天文台(北海道)

    「星空の街」として知られる北海道陸別町にある天文台。大自然にかこまれて、迫力はくりょくのある星空を楽しむことができる。

    関連サイト:
    「銀河の森天文台」公式サイト
  • 星の村天文台(福島県)

    画像提供:星の村天文台

    星の村天文台(福島県)

    あぶくまどうの近くにあるアットホームな天文台。夜間の星空観察会では、肉眼にくがんと望遠鏡の両方で星空を楽しむことができる。

    関連サイト:
    「福島県田村市」公式サイト
  • 堂平どうだいら天文台「星と緑の創造そうぞうセンター」(埼玉県)

    画像提供:ときがわ町

    堂平どうだいら天文台「星と緑の創造そうぞうセンター」(埼玉県)

    キャンプ場といっしょになった天文台。見晴らしがよく、山々の美しい景色と満天の星を楽しむことができる。

    関連サイト:
    「埼玉県ときがわ町」公式サイト
  • 兵庫県立大学天文科学センター西はりま天文台(兵庫県)

    画像提供:兵庫県立大学西はりま天文台

    兵庫県立大学天文科学センター西はりま天文台(兵庫県)

    一般いっぱん公開されているものでは世界最大級の望遠鏡があり、宇宙うちゅう空間を大パノラマで楽しめる。肉眼にくがんで見る星空も美しい。

    関連サイト:
    「兵庫県立大学西はりま天文台」公式サイト
  • 鳥取市さじアストロパーク(鳥取県)

    画像提供:鳥取市さじアストロパーク

    鳥取市さじアストロパーク(鳥取県)

    美しい星空で有名な鳥取県にある天文台。望遠鏡つきのコテージにまって、心ゆくままに星空を楽しむこともできる。

    関連サイト:
    「鳥取市」公式サイト
  • 星の文化館(福岡県)

    画像提供:星の文化館

    星の文化館(福岡県)

    九州最大級の望遠鏡があり、宇宙うちゅうを身近に体験できる展示てんじがたくさん。プチホテルもあり、宿泊しゅくはく者向けの天体観測かんそく会も人気。

    関連サイト:
    「星野村観光ナビ」公式サイト
川口さんからのメッセージ
  • 星を見るとき、ただきれいだなと思うだけでなく、その姿すがたをしている意味も考えてみよう。なぜ明るさがちがうのか、なぜ色がちがうのか。興味きょうみを深くり下げることで、科学する心が育っていくよ。
まとめ
  • 冬の太平洋側は空の透明とうめい度が高く、星がきれいに見える。
  • 冬は四季の中で1等星の数が一番多く、インパクトのある星空が楽しめる。
  • 星の色は、星の表面の温度が高いほど青白く、低いほど赤く見える。

Profile

川口 雅也

川口かわぐち 雅也まさや

天文雑誌『星ナビ』編集長

天文趣味をサポートするソフトウェアやデジタルプラネタリウムの開発、天文雑誌の編集・出版などを手がける株式会社アストロアーツの取締役を務める。
アストロアーツ
https://www.astroarts.co.jp/