「ふしぎ」を見に行こう

「ふしぎ」な現象

海の水が月や太陽に
引っぱられる!?
しおの満ち引きのふしぎ

海はなぜ満ちたり引いたりするのかな?
日や季節によって満ち引きの大きさが変わるのはなぜだろう?
引きしおのときに海に道が現れるふしぎな場所にも行ってみよう!
海の水が月や太陽に引っぱられる!? 潮の満ち引きのふしぎ 海の水が月や太陽に引っぱられる!? 潮の満ち引きのふしぎ

エンジェルロード(香川県)
画像提供:土庄町商工観光課

探検たんけんメンバー

  • 隊員りりか
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員りりか
  • 長船 哲史さん
    この人に聞いたよ
    海の流れを研究している
    長船おさふね 哲史さとしさん

海はなぜ
満ちたり引いたりする?

  • 海って満ちしおのときと引きしおのときがあるよね。引きしおで沖のほうまで海底があらわれたときに、貝ひろいをしたことがあるよ。
  • 潮干狩しおひがりを楽しんだんだね。海は満ち引きをくり返していて、基本的きほんてきには1日に2回ずつ満潮まんちょう干潮かんちょうをむかえるよ。この現象げんしょうしおの満ち引き」というよ。
海は満ち引きをくり返している

海面がもっとも高いときを「満潮まんちょう」、海面がもっとも低いときを「干潮かんちょう」という。

  • どうして満ちたり引いたりするの? 風の力?
  • 風で波は起きるけど、波が動かすのは海の表面だけだよ。しおの満ち引きは、海の深いところの水も動かす大きな力なんだ。これには月の引力が関係しているよ。
  • 月の引力?
  • 引力とは、物と物がたがいに引き合う力のこと。リンゴが木から落ちるのは、地球の引力に引っぱられているからなんだ。じゃあ、なぜ月は地球に落ちてこないんだろう?
  • なんでだろう? 月は地球のまわりをぐるぐる回っているよね?
  • そうだね。じゃあ、月をボールにたとえてみよう。ボールを投げると、しばらくは地面と水平に進むけど、だんだん下へ落ちていくよね。ではボールをすごく速く投げたらどうなるかな?
  • もっと遠くまで進んでから落ちる?
  • そうだね。この速度を上げていけば、ボールが地面と水平に進む距離きょりが長くなっていくよね。そうすると地球は丸いから、ボールが落ちかけても、その分地面が丸ければ、ボールと地面の距離きょりは変わらないよね。
月はなぜ地球に落ちてこない?

ボールを速く投げると、より遠くへ落ちる。すごく速く投げると、ボールは落ちることなく地球のまわりを回り続ける。

  • そのまま地球を一周しちゃうね!
  • これが、月が落ちてこない理由なんだ。速すぎるとそのまま遠くへ飛んでいってしまうけど、ほどよく落ちるくらいに地球の引力に引っぱられていて、落ちかけたときには先に進んでいるから、永遠えいえんに地球のまわりを回り続けるんだ。
  • ぜつみょうなバランスなんだね。
  • このとき、じつは地球も月の引力に引っぱられて、月といっしょにぐるぐる回っているんだ。
地球も月といっしょに回っている
  • 地球も小さな円を回っているんだ!?
  • 地球がこうして円をえがくように動いているから、その反動で遠心力(円の外側へ行こうとする見かけの力)が働くよ。いっぽう、月に近いところほど月の引力に大きく引っぱられるから、海水がこんなふうに引っぱられるよ。
しおの満ち引きはなぜ起こる?

地球が円をえがくように動いていることで遠心力が生じる。また、月の引力は月に近いところほど大きく、遠いところほど小さい。そのため、海水が楕円だえん形に引きのばされる。

※地球と月を真上から見たイメージ。

  • 両側に引きのばされるんだね。
  • そう。そして、この状態じょうたい地球は1日1回自転しているから、海水が高くなったところを1日2回通るよ。これが1日2回ずつ満潮まんちょう干潮かんちょうがある理由なんだ。
地球は自転しているから、
1日2回ずつ
満潮まんちょう干潮かんちょうがある
  • 月に面しているときと、月の反対側に来たときに満潮まんちょうになるんだね?
  • 引っぱる力はそのときに一番大きくなるけど、海の水は引っぱられてすぐに動くわけではないから、じっさいは、月を通りすぎて何時間かたってから満潮まんちょうになることが多いよ。
  • 海は広いもんね。満潮まんちょう干潮かんちょうの時間は毎日変わるの?
  • 変わるよ。月は毎日少しずつ動いて、約1カ月かけて地球のまわりを一周するよね。それに合わせて満潮まんちょう干潮かんちょうの時間が毎日少しずつおそくなっていき、満ち引きの大きさも変わっていくよ。

満ち引きの大きさは、
なぜ日や季節によって
変わる?

  • 満ち引きの大きさが日によって変わるのはどうして?
  • それは「太陽」に関係しているよ。じつは、海水は太陽の引力にも引っぱられているんだ。
  • 太陽にも引力があるの?
  • あるよ。だから月と太陽のならび方によって、引っぱる力が変わるんだ。太陽と月が地球と一直線上にならぶときは、どちらの引力にも引っぱられて満ち引きが大きくなり、このときを大潮おおしおというよ。
  • 満ち引きが大きくなるっていうのは、1日の満潮まんちょう干潮かんちょうの差が大きくなるということ?
  • そうそう。それとは反対に、地球に対して太陽と月が直角に位置するときは、おたがいの引力を打ち消し合って満ち引きが小さくなるんだ。これを小潮こしおというよ。
大潮おおしお小潮こしお
  • 月の満ち欠けといっしょにしおの満ち引きの大きさも変わるんだね。おもしろいね。
  • 新月から次の新月までの約1カ月の間に、大潮おおしお小潮こしおを2回ずつむかえることになるね。ちなみに、太陽は月よりもずっと遠くにあるから、その引力は月の半分くらい。だから単純たんじゅんに計算すると、大潮おおしお」の満ち引きの大きさは「小潮こしお」の3倍くらいになるよ。
  • そんなに大きく変わるんだ!?
  • 大潮おおしお小潮こしおの差は大きいよ。ちなみに、この差ほどではないけど季節によっても満ち引きの大きさは変わり、夏と冬は満ち引きが大きく、春と秋は小さくなる傾向があるよ。満ち引きのパターンも変わるよ。
  • どんなふうに変わるの?
  • 日本の太平洋側では、春から夏にかけて昼間の引きしおが大きくなり、秋から冬にかけては夜の引きしおが大きくなる傾向けいこうがあるんだ。
  • どうしてそんなふうに変わるの?
  • それは季節のちがいがある理由と同じだよ。地球は太陽のまわりを1年かけて回っているけど、この面に対して地球のじくは少しかたむいているんだ。そのせいで、夏と冬は太陽のあたる角度が変わるのは知っているかな?
  • 夏は真上から太陽があたるから暑くて、冬は低いところから太陽があたるから寒いんだっけ?
  • そうそう。この太陽のあたり方は北半球と南半球ではぎゃくになっていて、北半球が夏のとき、南半球では低いところから太陽があたるから冬になるよ。
  • 日本が夏のときは、オーストラリアは冬なんだよね。
  • そのとおり。しおの満ち引きの力も、地球のじくかたむいているせいで北半球と南半球ではパターンがちがうんだ。北半球では夏は昼間に引っぱる力が強く、冬は夜に引っぱる力が強くなる。南半球ではそのぎゃく。それが季節と同じように春分・秋分のころをさかいに入れかわるんだ。
しおの満ち引きのパターンは
季節によって変わる
  • 春が潮干狩しおひがりのシーズンなのは、日本では昼間の引きしおが大きくなり始めるのが春だからなんだね。
  • あと、春はアサリなどの貝がおいしくて気温もちょうどいいからね。それと、水は冷えるとちぢまるから、冬の寒さが春になって海水に伝わり、春の海面が全体的に低くなりやすいことも理由の一つと考えられるよ。
  • いろいろな理由があるんだね。
  • じっさいに海面がどれくらい上下するかは、海の状況じょうきょうや地形にも影響えいきょうをうけるんだ。ところで、ここまでは日や季節による変化を見てきたけど、満ち引きの大きさやパターンは8.85年周期、18.6年周期、約2万年周期でも変わるよ。
  • どうしてそんな変な周期で変わるの?
  • 月は地球のまわりを楕円型だえんけいに回っているから、地球の近くを通るときと遠くを通るときがあるんだけど、その楕円だえんの向きが太陽の影響えいきょうで少しずつ回転して8.85年で一回りするんだ。地球と太陽にも同じようなことが起きていて、そっちは約2万年で一回りするんだ。
  • 壮大そうだい宇宙うちゅうの話だね。18.6年は何の周期?
  • 月は、地球が太陽のまわりを回る面に対して少しかたむいて回っていて、そのかたむきの向きが少しずつ変わって18.6年で元にもどるんだ。つまり、月や太陽との位置関係が少しでも変わると、しおの満ち引きの大きさやパターンも変わるということなんだ。
しおの満ち引きの
大きさやパターンは、
月や太陽との位置関係によって
変わる
  • どれくらい大きく変わるの?
  • 1日の満潮まんちょう干潮かんちょうの差にくらべたら小さな差だよ。でも、その小さな差が地球の環境かんきょうに大きな影響えいきょうをあたえているかもしれないんだ。
  • どんな影響えいきょうがあるの?
  • たとえば、地域ちいきや魚の種類によるけど、魚がとれる量は20年おきくらいにえたりったりすることが知られていて、それはさっきの18.6年周期が関係しているかもしれないんだ。気候の変化影響えいきょうしている可能性かのうせいもあるよ。
  • わたしたちの生活に大きく関わっているんだね。
  • ここまでは海の話ばかりしてきたけれど、じつは見えないだけで陸も引っぱられているんだ。そのことと地震じしんの関係を研究している人もいるよ。
  • へー! しおの満ち引きっていろんなことにつながるんだね。
  • 身近な現象げんしょうだからみんなも目にする機会があると思うけど、月や太陽に関係したダイナミックな現象げんしょうなんだってことを思い出しながら見てみてね。
  • うん! 宇宙うちゅうに思いをはせながら見てみるよ!

しおの満ち引きがよくわかる
スポットへ行ってみよう!

満潮まんちょう時と干潮かんちょう時で景色が変わったり、
干潮かんちょう時とその前後の時間に海に道があらわれる場所があるよ。
渡れる時期や時間をしらべて行ってみよう。歩きやすくて、ぬれてもよいくつをはいて行こう。

※各施設の情報は、2022年2月のものです。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
お出かけの際は事前に公式サイトなどで最新情報をご確認ください。

  • 三四郎島さんしろうじま(静岡県)

    画像提供:西伊豆町観光協会

    三四郎島さんしろうじま(静岡県)

    沖あい200mほどのところにある4つの島。干潮かんちょう時には一番手前にある伝兵衛島でんべえじままで歩いてわたることができる。3月から9月の日中はわたれる日が多い。

    関連サイト:
    「西伊豆町観光協会」公式サイト
  • 宮ヶ島みやがしま 衣毘須神社えびすじんじゃ(島根県)

    画像提供:公益社団法人島根県観光連盟

    宮ヶ島みやがしま 衣毘須神社えびすじんじゃ(島根県)

    画家・東山ひがしやま 魁夷かいいいた『朝明けのしお』のモデルになった海岸。青い海と白浜しらはまでつながる島の景色が美しく、「山陰さんいんのモンサンミッシェル」ともよばれる。

    関連サイト:
    「しまね観光ナビ」公式サイト
  • 嚴島神社いつくしまじんじゃ(広島県)

    画像提供:広島県

    嚴島神社いつくしまじんじゃ(広島県)

    世界遺産いさんに登録された海上の神社。満潮まんちょう時は海の上に社殿しゃでんかんでいるような神秘的しんぴてきな光景を見ることができ、干潮かんちょう時には鳥居とりいまで歩いて行ける。

    ※2022年2月現在、大鳥居とりいは工事中(終了予定日は未定)

    関連サイト:
    ひろしま公式観光サイト「Dive!Hiroshima」
  • エンジェルロード(香川県)

    画像提供:土庄町商工観光課

    エンジェルロード(香川県)

    干潮かんちょう時に小豆島しょうどしま中余島なかよしまをつなぐ砂の道が現れる。神秘的しんぴてきな光景が見られることから「天使の散歩道」を意味する「エンジェルロード」とよばれている。

    中余島なかよしま私有地しゆうちのため入ってはいけません。

    関連サイト:
    「土庄町」公式サイト
  • 大魚神社おおうおじんじゃの海中鳥居とりい(佐賀県)

    画像提供:太良町観光協会

    大魚神社おおうおじんじゃの海中鳥居とりい(佐賀県)

    有明海にかぶ3つの海中鳥居とりい干潮かんちょう時には鳥居とりいの下を歩いて通ることができる。満潮まんちょう時は鳥居とりいが海につかり、しおの満ち引きを体感できる。

    関連サイト:
    「観光たら」公式サイト
  • 小島神社こじまじんじゃ(長崎県)

    画像提供:一般社団法人壱岐市観光連盟

    小島神社こじまじんじゃ(長崎県)

    満潮まんちょう時には海に鳥居とりいと小島がかぶ美しい景色が見られ、干潮かんちょう時には歩いて参拝さんぱいできる。島全体が神域しんいきで、「壱岐いきのモンサンミッシェル」ともよばれる。

    関連サイト:
    「壱岐観光ナビ」公式サイト
  • 御輿来おこしき海岸かいがん(熊本県)

    画像提供:宇土市商工観光課

    御輿来おこしき海岸かいがん(熊本県)

    干潮かんちょう時には、風と波によってかれた三日月がた砂紋さもんあらわれる。美しい夕焼けが見られることで有名で、干潮かんちょうと日の入りが重なるタイミングをねらいたい。

    関連サイト:
    「宇土市観光物産協会」公式サイト

しおの満ち引きの差は
どれくらい?

しおの満ち引きは月や太陽の引力によって起こるけれど、じっさいにどれくらい海面が高くなったり低くなったりするかは、海の状況じょうきょうや地形の影響えいきょうも大きくうける。 有明海ありあけかい瀬戸内海せとないかいは、1日の満潮まんちょう干潮かんちょうの差が日本で特に大きな場所だけど、その理由はまだわかっていないことも多い。ちなみに、世界でもっとも満潮まんちょう干潮かんちょうの差が大きいのはカナダのファンディわんで、その差はなんと15m(4〜5階建てのビルと同じ高さ)になることも!

長船さんからのメッセージ
  • しおの満ち引きは、「万有引力ばんゆういんりょく法則ほうそく」を発見した科学者ニュートンによって解明かいめいされたよ。ニュートンのように自然をいっぱい観察して、ふしぎなことをさがして、それがなぜ起きるのかきつめて考えてみよう。君もすごい発見ができるかもしれないよ。
まとめ
  • 海は1日2回ずつ満潮まんちょう干潮かんちょうをむかえる。この現象げんしょうを「しおの満ち引き」という。
  • しおの満ち引きは、月や太陽の引力で海水が引っぱられて起きる。
  • 満ち引きの大きさやパターンは日や季節、年によっても変わる。

Profile

長船 哲史

長船おさふね 哲史さとし

国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC) 
地球環境部門 海洋観測研究センター 研究員 博士(理学)

海の循環やその変化に関して、そのメカニズムや気候の変化との関係性について研究。特に、潮汐(潮の満ち引き)による海への影響に興味を持っており、潮汐の18.6年周期が海洋や気候に与える影響についても研究している。
JAMSTEC
https://www.jamstec.go.jp/