「ふしぎ」を見に行こう

「ふしぎ」な生き物

異界いかいへのとびらが
開いてしまう…?!
「毒きのこ」に会いに行こう

森にはかわいいきのこがいっぱい。
でもちょっと待って。それ、毒があるかも…!
  • 知らないきのこは絶対に食べないこと。
  • きのこをむやみに採取したり、きずつけたりしないようにしよう。
  • きのこをさわって質感や弾力だんりょくを感じることも学びのひとつ。でも「カエンタケ」というきのこは、中のしるにふれると皮ふがただれることがあるので、さわらないようにしよう。

探検たんけんメンバー

  • 隊員りりか
    ふしぎ探検たんけん隊が行くよ!
    隊員りりか
  • 新井文彦さん
    この人に聞いたよ
    きのこ写真家
    新井文彦あらい ふみひこさん

毒きのこには、
どんなきのこがある?

かわいいきのこ♪
ワルそうなきのこ…

これ、ぜんぶ毒きのこなんです…!

  • えー! まちがえて食べちゃいそうなものもあるね。
  • 知らないきのこは絶対に食べちゃダメ! でも食べものとして見なければ、森でいろいろなきのこに出会うのは楽しい体験だよ。
  • 新井さんはどうしてきのこが好きになったの?
  • 見た目はかわらしいのに、毒々しさや、うさんくささもある。すごくおいしいものもあれば、食べたら死んでしまうものもある。その人の心をゆらすような二面性に魅力みりょくを感じたんだ。
  • 森へ行っても、きのこばかり見ているの?
  • ふつうの人には森=木々のイメージがあると思うけれど、きのこを好きになると、きのこが森の中心のように見えるんだよ。
  • きのこが森をつくっている?!
  • 実はぼくたちが見ているきのこは、きのこの一部でしかなく、本体は地中に広がる菌糸きんしなんだ。木と共生するタイプのきのこは、菌糸きんしと木の根の間に菌根きんこんという器官をつくって栄養のやりとりをするんだけど、その菌根きんこんをネットワークのように使って、はなれた木々が情報のやりとりをしているという研究報告もあるんだ。
  • きのこってすごく重要ないきものなんだね!
  • ふだん見慣れているものが、そのものの本質ではないことをきのこは教えてくれる。小さいけれど、ものの見方や世界を広げてくれる大きな存在そんざいなんだ。
  • すごいすごい! ところで新井さんは毎日きのこを食べてくらしているの?
  • ぼくたちきのこファンは意外ときのこを食べないんだよ。毎日たくさん見過ぎておなかいっぱいになっちゃうのかな…。さてさて、それでは絶対に食べてはいけない毒きのこのナゾにせまっていくよ!

毒きのこミニ図鑑

  • ベニテングダケ

    多くのきのこグッズのモチーフになっている毒きのこ界のスター。カサは直径5〜20cmくらい。食べると下痢げり腹痛ふくつう幻覚げんかくなどを起こすおそれがある。夏から秋に、カンバ類や針葉樹林しんようじゅりん林床りんしょうに生える。

  • ヒナノヒガサ

    緑にはえる美しいオレンジ色のきのこ。カサの直径は1cmくらいと小さいけれど、食べると頭痛ずつう幻覚げんかくを起こすおそれがある。夏から秋に、林や草地のコケの間に生える。

  • ドクツルタケ

    1本食べただけで死んでしまうこともある最強の毒きのこ。またの名を「殺しの天使」。カサは直径5〜15cmくらい。夏から秋に、広葉樹林こうようじゅりん針葉樹林しんようじゅりん林床りんしょうに生える。

  • シャグマアミガサタケ

    食べると死ぬこともある猛毒もうどくきのこ。ヨーロッパではゆでこぼして食べる習慣もある。全体の高さは5〜15cmくらい。春〜初夏に針葉樹林しんようじゅりんなどの林床りんしょうに生える。

  • カエンタケ

    食べると死ぬこともある猛毒もうどくきのこ。中のしるにふれると皮ふがただれるおそれがあるので、さわるのもキケン。全体の高さは3〜8cmくらい。夏から秋に、広葉樹林こうようじゅりんなどの林床りんしょうに生える。

  • ツキヨタケ

    日本で一番中毒例の多い毒きのこ。夜、不気味に光るが、光る理由はわかっていない。食べると嘔吐おうと腹痛ふくつう下痢げりを起こす。カサは10〜25cmくらい。夏から秋に、広葉樹こうようじゅ枯木こぼく倒木とうぼくに生える。

聞きたい!知りたい!
毒きのこのナゾ

毒きのこって食べたら死んじゃうの…?

きのこによって中毒症状しょうじょうはさまざま。下痢げりしたり、気持ち悪くなったりするだけのものもあれば、死にいたるきのこもある。個体や地域ちいきによって毒の強さがちがうこともあるので、ある地域ちいきで食べられているからといって安心はできない。基本的に、知らないきのこは絶対に食べないこと。

動物は毒きのこをまちがえて食べたりしないの?

虫や動物がきのこを食べて中毒症状しょうじょうが出たという話はあまり聞かないよ。最強の毒きのこ「ドクツルタケ」も、虫は平気で食べている。ドクベニタケもちょっとかじっただけで2〜3時間は口の中がからくて大変だけど、リスが食べていたのを見たことがあるよ。人間にとっては毒でも、虫や動物にとってはおいしいのかもしれないね。

どうして毒があるの? なんのための存在そんざいなの?

きのこの多くはナゾにつつまれていて、なぜ毒を持つようになったのかもわかっていない。そもそも、どのように進化しようときのこの勝手で、人間にとってたまたまそれが毒だった…というだけのこと。
生態けいのなかでは、植物が「生産者」、動物が「消費者」と考えると、きのこは「分解者」としての役割やくわりをはたす。きのこや菌類きんるいがいないと、森は倒木とうぼくや落ち葉、動物の死体だらけになってしまう。目立たないけど大きな活躍かつやくをしているんだよ。

毒きのこはどこに行けば見つかるの?

きのこの好物があるところであればどこでも。たとえばシイタケはくさった木が大好きだし、生きている木から養分をすい取るきのこもある。「木の子」という語源ごげんの通り、木と大きく関わっているんだ。森や公園、神社、庭園など、緑の多い場所に行けば見つかる可能性はあるよ。日本には少なくとも1万種類以上のきのこがあると言われているけれど、名前がついているのは3000種類くらい。個体差・地域ちいき差も大きく、素人が正確な分類をするのはとてもむずかしい。ぐうぜんの出会いを楽しもう。

※知らないきのこの名前を調べたいときは、各地のきのこ観察会や大学の研究所など、くわしい人に聞いてみよう。きのこを特定するには、カサの表・うらの具合、周りの環境かんきょうなど、さまざまな情報が必要なので、写真をとるときはいろんな角度からとろう。

クイズ
「どっちが毒きのこ?」

問題

どちらかは食べられるよ。
さて、どっちが毒きのこかな?

第1問

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正解:B「スギヒラタケ」

2004年以降いこう、東北地方などで、スギヒラタケを食べたことが原因だと考えられる、急性脳症のうしょうという病気が多く報告されるようになった(死者も出てる!)。おいしい食用のきのこだとみんなが思っていたけど、くわしく分析ぶんせきしてみたら、実は、毒きのこだったんだ。昔の図かんには食べられると書いてあるものがあるけど、ぜったいに食べないで。Aのベニナギナタタケは、色が派手はでで、形もきのこらしくないけど、食べられるきのこだよ。猛毒もうどくのカエンタケに少し似ているので要注意。

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第2問

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正解:B「ヒトヨタケ」

実は、ヒトヨタケも、食べられるきのこ。みんなにはあまり関係ないかもしれないけど、お酒といっしょに食べると中毒を起こすんだ。ヒトヨタケを食べる前、食べた後、数日のうちにお酒を飲むと、ものすごく気分が悪い二日いの状態になるとか。ヒトヨタケは、お酒を飲む大人にとっては毒きのこなんだ。あと、ほとんどのきのこは、生で食べると中毒を起こすから気をつけて。Aのタマゴタケは、ベニテングタケに似ているけど、すごくおいしいきのこ。きのこは、ひとつずつ、しっかり覚えよう。

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第3問

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正解:A「ネズミシメジ」

どちらも、地味な色だし、食べられそうな感じがするよね。秋に針葉樹林しんようじゅりんの地面で発生するネズミシメジは、キシメジの仲間では、めずらしく毒があるきのこ。まちがって食べると、腹痛ふくつう下痢げりなどの症状しょうじょうが出るよ。カサの真ん中がぽこっと出っ張っていること、カサに暗い色の細かい糸のようなものがびっしりついていることが、ネズミシメジの特ちょうだけど、慣れない人にはみんな同じに見えちゃうかも。Bのハタケシメジは、秋に、畑地、道ばた、草地など、ひらけた場所の地面から発生する、おいしいきのこだよ。

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新井さんからのメッセージ
  • きのこに興味を持ちはじめると、今まで見えていなかった命が森にはたくさんあることに気づくよ。発見するよろこびこそ森へ行く一番大きな楽しみ。人間の想像が通じない自然の世界にはキケンもいっぱい。でも、美しいものを見るにはリスクも負わなくちゃ。こわさと、それをえたところにあるおもしろさの両方を感じてほしい。さあ、森へきのこをさがしに行こう!
まとめ
森へ行くと、目に入ってくるものだけじゃなく、土やれ葉のにおい、風やせせらぎの音、しめった地面、きのこのさわり心地…五感を通してたくさんの情報にアクセスできるんだって。まだまだ知られていないきのこもたくさんあるみたい。わたしだけのきのこに出会いに行きたいな。

Profile

監修:新井 文彦

きのこ・粘菌写真家

きのこや粘菌(変形菌)やコケといった、いわゆる隠花植物をテーマに撮影している。著書に『毒きのこ 世にもかわいい危険な生きもの』(幻冬舎)、『きのこのき』(文一総合出版)、『森のきのこ、きのこの森』(玄光社)などがある。人気ウェブサイト・ほぼ日刊イトイ新聞で、毎週菌曜日に「きのこの話 」を連載中。

ほぼ日刊イトイ新聞・きのこの話
http://www.1101.com/kinokonohanashi/
本人ウェブサイト(浮雲倶楽部)
http://ukigumoclub.com/