
これ、ぜんぶ毒きのこなんです…!
毒きのこミニ図鑑
ベニテングダケ
多くのきのこグッズのモチーフになっている毒きのこ界のスター。カサは直径5〜20cmくらい。食べると下痢や腹痛、幻覚などを起こすおそれがある。夏から秋に、カンバ類や針葉樹林の林床に生える。
ヒナノヒガサ
緑にはえる美しいオレンジ色のきのこ。カサの直径は1cmくらいと小さいけれど、食べると頭痛や幻覚を起こすおそれがある。夏から秋に、林や草地のコケの間に生える。
ドクツルタケ
1本食べただけで死んでしまうこともある最強の毒きのこ。またの名を「殺しの天使」。カサは直径5〜15cmくらい。夏から秋に、広葉樹林や針葉樹林の林床に生える。
シャグマアミガサタケ
食べると死ぬこともある猛毒きのこ。ヨーロッパではゆでこぼして食べる習慣もある。全体の高さは5〜15cmくらい。春〜初夏に針葉樹林などの林床に生える。
カエンタケ
食べると死ぬこともある猛毒きのこ。中の汁にふれると皮ふがただれるおそれがあるので、さわるのもキケン。全体の高さは3〜8cmくらい。夏から秋に、広葉樹林などの林床に生える。
ツキヨタケ
日本で一番中毒例の多い毒きのこ。夜、不気味に光るが、光る理由はわかっていない。食べると嘔吐、腹痛、下痢を起こす。カサは10〜25cmくらい。夏から秋に、広葉樹の枯木や倒木に生える。
きのこによって中毒症状はさまざま。下痢したり、気持ち悪くなったりするだけのものもあれば、死にいたるきのこもある。個体や地域によって毒の強さがちがうこともあるので、ある地域で食べられているからといって安心はできない。基本的に、知らないきのこは絶対に食べないこと。
虫や動物がきのこを食べて中毒症状が出たという話はあまり聞かないよ。最強の毒きのこ「ドクツルタケ」も、虫は平気で食べている。ドクベニタケもちょっとかじっただけで2〜3時間は口の中がからくて大変だけど、リスが食べていたのを見たことがあるよ。人間にとっては毒でも、虫や動物にとってはおいしいのかもしれないね。
きのこの多くはナゾにつつまれていて、なぜ毒を持つようになったのかもわかっていない。そもそも、どのように進化しようときのこの勝手で、人間にとってたまたまそれが毒だった…というだけのこと。
生態系のなかでは、植物が「生産者」、動物が「消費者」と考えると、きのこは「分解者」としての役割をはたす。きのこや菌類がいないと、森は倒木や落ち葉、動物の死体だらけになってしまう。目立たないけど大きな活躍をしているんだよ。
きのこの好物があるところであればどこでも。たとえばシイタケはくさった木が大好きだし、生きている木から養分をすい取るきのこもある。「木の子」という語源の通り、木と大きく関わっているんだ。森や公園、神社、庭園など、緑の多い場所に行けば見つかる可能性はあるよ。日本には少なくとも1万種類以上のきのこがあると言われているけれど、名前がついているのは3000種類くらい。個体差・地域差も大きく、素人が正確な分類をするのはとてもむずかしい。ぐうぜんの出会いを楽しもう。
※知らないきのこの名前を調べたいときは、各地のきのこ観察会や大学の研究所など、くわしい人に聞いてみよう。きのこを特定するには、カサの表・裏、柄の具合、周りの環境など、さまざまな情報が必要なので、写真をとるときはいろんな角度からとろう。
どちらかは食べられるよ。
さて、どっちが毒きのこかな?
正解:B「スギヒラタケ」
2004年以降、東北地方などで、スギヒラタケを食べたことが原因だと考えられる、急性脳症という病気が多く報告されるようになった(死者も出てる!)。おいしい食用のきのこだとみんなが思っていたけど、くわしく分析してみたら、実は、毒きのこだったんだ。昔の図かんには食べられると書いてあるものがあるけど、ぜったいに食べないで。Aのベニナギナタタケは、色が派手で、形もきのこらしくないけど、食べられるきのこだよ。猛毒のカエンタケに少し似ているので要注意。
正解:B「ヒトヨタケ」
実は、ヒトヨタケも、食べられるきのこ。みんなにはあまり関係ないかもしれないけど、お酒といっしょに食べると中毒を起こすんだ。ヒトヨタケを食べる前、食べた後、数日のうちにお酒を飲むと、ものすごく気分が悪い二日酔いの状態になるとか。ヒトヨタケは、お酒を飲む大人にとっては毒きのこなんだ。あと、ほとんどのきのこは、生で食べると中毒を起こすから気をつけて。Aのタマゴタケは、ベニテングタケに似ているけど、すごくおいしいきのこ。きのこは、ひとつずつ、しっかり覚えよう。
正解:A「ネズミシメジ」
どちらも、地味な色だし、食べられそうな感じがするよね。秋に針葉樹林の地面で発生するネズミシメジは、キシメジの仲間では、めずらしく毒があるきのこ。まちがって食べると、腹痛や下痢などの症状が出るよ。カサの真ん中がぽこっと出っ張っていること、カサに暗い色の細かい糸のようなものがびっしりついていることが、ネズミシメジの特ちょうだけど、慣れない人にはみんな同じに見えちゃうかも。Bのハタケシメジは、秋に、畑地、道ばた、草地など、ひらけた場所の地面から発生する、おいしいきのこだよ。
監修:新井 文彦
きのこ・粘菌写真家
きのこや粘菌(変形菌)やコケといった、いわゆる隠花植物をテーマに撮影している。著書に『毒きのこ 世にもかわいい危険な生きもの』(幻冬舎)、『きのこのき』(文一総合出版)、『森のきのこ、きのこの森』(玄光社)などがある。人気ウェブサイト・ほぼ日刊イトイ新聞で、毎週菌曜日に「きのこの話 」を連載中。
ほぼ日刊イトイ新聞・きのこの話
http://www.1101.com/kinokonohanashi/
本人ウェブサイト(浮雲倶楽部)
http://ukigumoclub.com/