「ふしぎ」を見に行こう

「ふしぎ」な現象

名月は十五夜だけじゃない?
知らなかった!「月」のふしぎな話

人類がはじめて月に着陸してから今年(2019年)で50周年。
でも私たちは月のことを意外と知らないみたい。月のふしぎを知って、秋の「お月見」をもっと楽しもう!
名月は十五夜だけじゃない? 知らなかった!「月」のふしぎな話

撮影:大熊正美

  • 月や星を見に行く場所ではマナーや安全にも十分注意しましょう。大さわぎしたり、子どもたちだけで行動してはいけません。防犯ぼうはんやクルマの通行、足元にも気をつけましょう。

探検たんけんメンバー

  • 隊員りりか
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員りりか
  • 川口 雅也さん
    この人に聞いたよ
    天文雑誌ざっし『星ナビ』編集へんしゅう長の
    川口かわぐち雅也まさやさん

「十五夜」「十三夜」の由来や風習とは?

  • もうすぐ「十五夜」だね。きれいなお月さまを見たいな。今年(2019年)はいつなのかな?
  • 「十五夜」は旧暦きゅうれき太陰太陽暦たいいんたいようれき)の八月十五日の夜のこと。2019年は9月13日(金)だよ。旧暦きゅうれきでは毎月一日=新月だから、十五日の夜は満月になることが多いんだ。
「十五夜」はいつ?
  • 「十五夜」は中国から伝わってきた風習で、中秋ちゅうしゅうの名月」とも言われる。中国では月餅げっぺいというおかしを食べてお祝いするけど、日本では里芋さといも収穫しゅうかくを祝っていたことからいも名月」ともよばれているよ。
「十五夜」は「中秋ちゅうしゅうの名月」や「いも名月」ともよばれる
  • 中秋ちゅうしゅう」ってどういう意味?
  • 旧暦きゅうれきでは一月から三月を「春」、四月から六月を「夏」、七月から九月を「秋」、十月から十二月を「冬」としていた。八月十五日はちょうど秋の真ん中の日だから「中秋ちゅうしゅうなんだ。
  • そっか! でも月は一年中見られるのに、どうして秋の月が特別なの?
  • 満月が低いところに見える夏や、高いところに見える冬にくらべて、春と秋はちょうどいい高さに満月が見えるんだ。
満月が見える高さは季節によって変わる
満月の動き
太陽の動き

地球の地軸ちじく(自転じく)はかたむいているため、太陽と同じように満月も季節によって見える高さが変わる。「満月」となるのは、月が太陽と反対側に来たときだから、昼間の太陽が高くのぼる夏には夜の満月は低く、昼間の太陽が低くなる冬には、夜の満月は高くのぼる。

  • へー! でも春じゃなくて秋の満月がいい理由は?
  • 「春がすみ」「秋晴れ」という言葉があるように、春は空気がぼんやりする日が多いけれど、秋は空気がんでいて、月を見上げて歌を詠んだりするのにちょうど良かったんだろうね。おだんごをおそなえすることからもわかるように、収穫しゅうかくへの感謝かんしゃの意味もあったようだよ。

撮影:谷川正夫

  • たしかに秋の夜はすずしくて気持ちいいよね。「十五夜」以外にもお月見を楽しめる日はあるの?
  • 旧暦きゅうれきの九月十三日の「十三夜」という日本独自どくじのお月見の風習もあるよ。満月になる手前のちょっと欠けた月だけどきれいなんだ。くり枝豆えだまめ収穫しゅうかくをお祝いしていたことからくり名月」「豆名月」ともよばれるよ。
完全ではないものに美を見出す日本人の美意識びいしき?「十三夜」の月

撮影:大熊正美

「十三夜」はいつ?
  • 「十三夜」もきれい! 満月じゃなくてもお月見しちゃうなんて、日本人は昔からお月見が大好きだったんだね。
  • うん。「十五夜」も、現代げんだいになって決められた厳密げんみつ定義ていぎでの「満月」になるとはかぎらないけど、かたくるしいことは考えずに楽しめばいいよ。そもそも昔の人もお月見を、みんなで集まってワイワイ楽しむための口実にしていたふしがあるから。
  • そうなんだ?
  • たとえば江戸えど時代には「二十六夜待ち」という月見イベントがあった。旧暦きゅうれき七月二十六日に夜中の2時くらいに細い月がのぼるのを見ようというものなんだけど、屋台なんかも出て、食べたり飲んだりとお祭りさわぎだったらしい。
江戸えど時代に流行った月見イベント「二十六夜待ち」

出典:国立国会図書館ウェブサイト『江戸自慢三十六興 高輪廿六夜』

  • 完全に口実だね。でも、そうやってみんなで月を楽しむのもいいね(笑)。
  • 「十五夜」なら太陽がしずむころには月がのぼってくるから夜ふかししなくてもだいじょうぶ。全国のお寺や神社、庭園などで観月会かんげつかいが開かれていることもあるから、景色や音楽といっしょに月を楽しむのもいいかもね。
  • すてき! 見る方角は気にしたほうがいい?
  • もし、満月がのぼるところを見たければ、東の空(太陽がしずむ反対側の空)がひらけたところで見るのがおすすめだよ。
  • 日の出は見たことあるけど、月の出は見たことないかも!
  • ポツンと出てきたかと思ったら、ぐんぐんのぼり、あっという間に大きく丸くなっていくからおもしろいよ。それは地球がそのいきおいで自転しているということでもあるからね。太陽とちがって、月は直接ちょくせつ見ても大丈夫だいじょうぶだから。
  • へ~! 地球の自転、感じてみたい!

お月見がもっと味わい深くなる「月」のお話

知っているようで知らない「月」のふしぎな話。知ると「お月見」がもっと楽しくなるよ。

おおかみ男はなぜ満月の日に変身する?

~月をめぐる文化のちがい~

  • おおかみ男って満月を見ると変身するんでしょ? どうしてなの?
  • 月を愛でる東洋に対して、西洋では月の光をあびると気が変になると思われていたんだ。
  • えー、そうなんだ。ほかの国ではどうなのかな?
  • 中東などの国では、イスラム教のシンボルである三日月と星をモチーフにした国旗が多く、「月」はよいものとされているよ。

みんなが思う三日月の形はまちがっている?

~月の満ち欠け~

  • 「クロワッサン」というパンがあるけれど、あれはフランス語で「三日月」という意味だよ。
  • 三日月ってかわいいよね。
  • 三日月はマンガでは下の左の絵のようにかかれることも多いけれど、この形はまちがいなんだ。
  • え! そうなの?
  • 月の満ち欠けをおさらいすればわかるよ。月は地球のまわりを回っていて、太陽の光に照らされた部分だけが明るく見える。下の図の水色の円の中が、地球から見た月の形だよ。
月の満ち欠け
  • どの方向から太陽の光があたっているかで、月の見え方が変わるんだね。たしかに、マンガによくかかれる三日月のような欠け方はしないね。
  • 月が太陽と反対側にあるときが「満月」。月が太陽と同じ方向にあってまぶしくて見えないのが「新月」。「新月」を0として、そこから数えた日数を月齢げつれいといい、翌日よくじつの月が月齢げつれい1、そのまた次の日の月が月齢げつれい2……と続いていく。新月から次の新月までは約29.5日かかるんだ。
  • 昔の人は月の形を見て、日にちを確認かくにんしていたんだよね?
  • うん。カレンダーの「一日」を「ついたち」と言うのは、新しい月が出たことを意味する「月立ち(月建ち)」語源ごげんと言われているよ。
  • へー!
  • 月は、空の中で毎日だいたい12度ずつ動いていく。地球が自転して12度動くのに約50分かかるから、月が出る時刻じこくは毎日およそ50分ずつおくれていくんだ。
  • 月を見ようと思ったら、同じ時間に同じ方角を見てもダメなんだ!? 三日月が見たいって思ったら、どうすればいいの?
  • 月齢げつれい2くらい、広い意味では月齢げつれい4くらいまでを三日月というね。まず月齢げつれいっているカレンダーで、だいたい月齢げつれい2から4くらいの日にちを調べたら、その日の夕方、太陽がしずんだすぐあとに西の空をさがしてごらん。
  • 三日月は太陽がしずむ方向に見えるんだね。
  • 新月から数日しかたっていないから、方角的にまだ太陽の近くにある。つまり太陽がしずむと、そのあとを追いかけてすぐしずんじゃうんだ。だから実際じっさいに見られるのは、太陽がしずんでからのわりと短い時間しかない。
  • そっかー、うっかりしてると見逃みのがしちゃうんだね。
  • 3、4、5……と月齢げつれいが大きくなっていくにつれて太陽からもはなれていくから、太陽がしずんでもしばらくは見えているようになるよ。さて、月の満ち欠けを体感するために、ゴルフボールを月に、ライトを太陽に見立ててこんな実験してみよう。
ゴルフボールとライトで月の満ち欠けを見てみよう

月に見立てたゴルフボールに、太陽に見立てたライトをあて、その場で回る(回転イスがあると便利。イスにすわった自分が「地球」)。ゴルフボールに当たるライトの光が変化し、月の満ち欠けを再現さいげんできる。

  • おもしろ―い!
  • ゴルフボールのでこぼこが月のクレーターにているから、欠けぎわの見え方もリアルでおもしろいよ。

大きく見えるのは気のせい?

~月の見かけの大きさと明るさ~

  • こないだ夜空を見上げたら、すごく月が大きく見えたの。
  • それは気のせいだよ。
  • えー! でも本当に大きかったよ?
  • 地平線に近い低い月は大きく見え、空の高いところにある月は小さく見える気がするよね。目の錯覚さっかくなんじゃないかと言われているよ。
月が大きく見えるのは目の錯覚さっかく
  • ふしぎ~!
  • それなら今度、五円玉を使って月のサイズをたしかめてみるといいよ。
  • え? 月は五円玉のサイズなの?
  • 五円玉の「あな」のサイズなんだ。うでをのばして五円玉のあなからのぞくと、月がちょうどあなにすっぽりおさまるよ。毎日たしかめてみれば、月の大きさはいつもだいたい同じだということがわかるよ。
月の見かけの大きさは五円玉の「あな」と同じ
  • そんなに小さく見えるの? 信じられない! でも、スーパームーンの日は? 月が大きく見えるんでしょ?
  • 月は地球の周りをだ円に回っているから、地球に近づくときと遠ざかるときがあるんだ。一番近づく日と満月の日が重なると、少し大きく見えてスーパームーンと言われたりするけど、ひと目で「いつもより大きい!」って感じるほど巨大きょだいになるわけじゃないよ。
  • そっか~。でも満月って大きく見えるよね?
  • 明るいから大きく見えるということもあるかもね。満月の明るさは半月の倍どころじゃないからね。
  • そうなの!?
  • これは月の反射率はんしゃりつが関係しているよ。満月は月が太陽と反対側に来たときだから、太陽の光が正面からあたっている状態じょうたい。月の表面をおおうすなは正面から光があたったとき、光がはね返る量が急激きゅうげきにふえる性質せいしつがあるんだ。この図は、満月を100%としたときの明るさのだよ。
満月は月明かりが急激きゅうげきに明るくなる

参考文献:三品隆司, 吉川真(2017)『調べる学習百科 月を知る!』岩崎書店

  • 満月は特別明るいんだね。いろいろなことを覚えたから今年の「十五夜」は楽しみだな。
  • 「十五夜」をきっかけに月に興味きょうみをもったら、それ以外の月にも注目してみてね。月を毎日観察すると発見がたくさんあるよ。形も変わるし、のぼる時間・しずむ時間も毎日変わる。こんなに劇的げきてきな天体はほかにないね。
  • 月のよび名もすてきだから覚えたいな。「今日は十六夜いざよいの月だ!」「立待月たちまちづきだね!」「上弦じょうげんの月だ!」って楽しめるようになりたい!

行ってみたい風流なお月見スポット

「十五夜」の時期には全国のお寺・神社・庭園などでお月見イベントが開かれることがあるよ。近くのスポットをチェックしてみよう。

くわしい開催概要かいさいがいようについては公式サイトなどをご確認かくにんください。

  • 観瀾亭かんらんてい(宮城県松島町)

    観瀾亭(宮城県松島町) 画像提供:松島町

    観瀾亭かんらんてい(宮城県松島町)

    もとは伏見桃山城ふしみももやまじょうにあった茶室を移築いちくした建物。古くは「月見御殿ごてん」ともいわれ、中秋ちゅうしゅうの名月の時期にお月見会が開かれる。松島の景色とともに楽しみたい。

    関連サイト:
    「松島町」公式サイト
  • 偕楽園かいらくえん(茨城県水戸市)

    偕楽園(茨城県水戸市) 画像提供:一般社団法人水戸観光コンベンション協会

    偕楽園かいらくえん(茨城県水戸市)

    日本三名園の一つ。中秋ちゅうしゅうの夜に行われる「月見の会」では、キャンドルでライトアップされた幻想げんそう的なはぎの景色とともに名月を鑑賞かんしょうすることができる。

    関連サイト:
    「水戸観光コンベンション協会」公式サイト
  • 三溪園さんけいえん(神奈川県横浜市)

    三溪園(神奈川県横浜市) 画像提供:三溪園

    三溪園さんけいえん(神奈川県横浜市)

    歴史的建造けんぞう物が点在てんざいする日本庭園で開かれる「観月会かんげつかい」。三重塔さんじゅうのとうのライトアップと合わせて、夜空にうかぶ月を楽しみたい。音楽や舞踊ぶようもよおしも。

    関連サイト:
    「三溪園」公式サイト
  • 月見の森(岐阜県海津市)

    月見の森(岐阜県海津市) 画像提供:海津市農林振興課

    月見の森(岐阜県海津市)

    昼間は四季折々の草花を、夜は月明かりや山々の景色、市街地の夜景を楽しめる月見の森。「観月会かんげつかい」では衣被きぬかつぎ里芋さといも)のふるまいや竹灯籠とうろうによる園内ライトアップも。

    関連サイト:
    「海津市」公式サイト
  • 伊勢いせ神宮(三重県伊勢市)

    伊勢神宮(三重県伊勢市) 画像提供:神宮司庁

    伊勢いせ神宮(三重県伊勢市)

    中秋ちゅうしゅうの名月の日に「神宮観月会かんげつかい」を開催かいさい。全国から応募おうぼされた短歌や俳句はいく秀作しゅうさくを神宮の楽師がくしがよみあげる。管絃かんげん舞楽ぶがく演奏えんそうにもいしれたい。

    関連サイト:
    「伊勢神宮」公式サイト
  • 桂浜かつらはま(高知県高知市)

    桂浜(高知県高知市) 画像提供:公益社団法人 高知市観光協会

    桂浜かつらはま(高知県高知市)

    月の名所として知られる桂浜かつらはまの月見イベント「桂浜かつらはま観月かんげつ会」。太平洋の波の音を聞きながら、海にうかぶ中秋ちゅうしゅうの名月を楽しむことができる。

    関連サイト:
    「高知市観光協会」公式サイト
川口さんからのメッセージ
  • 「月見」ができるのは地球だけ。火星や木星といったほかの惑星わくせいにも衛星えいせい惑星わくせいの周りを回る星)はあるけれど、だいたい惑星わくせいの大きさに対してものすごく小さくて、「月」のような大きな衛星えいせいがあるのは、実はとてもめずらしいこと。月見をするときは、その幸運にも思いをはせよう。
まとめ
  • 「十五夜」は旧暦きゅうれきの八月十五日の月で、「中秋ちゅうしゅうの名月」「いも名月」ともいう。
  • 月はおよそ1か月で地球を一周し、見える形やのぼる時刻じこくは毎日ずれていく。
  • 「満月」は月が太陽と反対側に来たときで、その明るさは半月の約10倍。

Profile

川口 雅也

川口かわぐち雅也まさや

天文雑誌『星ナビ』編集長

天文趣味をサポートするソフトウェアやデジタルプラネタリウムの開発、天文雑誌の編集・出版などを手がける株式会社アストロアーツの取締役を務める。
アストロアーツ
https://www.astroarts.co.jp/