知っているようで知らない「月」のふしぎな話。知ると「お月見」がもっと楽しくなるよ。
狼男はなぜ満月の日に変身する?
~月をめぐる文化のちがい~
- 狼男って満月を見ると変身するんでしょ? どうしてなの?
- 月を愛でる東洋に対して、西洋では月の光をあびると気が変になると思われていたんだ。
- えー、そうなんだ。ほかの国ではどうなのかな?
- 中東などの国では、イスラム教のシンボルである三日月と星をモチーフにした国旗が多く、「月」はよいものとされているよ。
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みんなが思う三日月の形はまちがっている?
~月の満ち欠け~
- 「クロワッサン」というパンがあるけれど、あれはフランス語で「三日月」という意味だよ。
- 三日月ってかわいいよね。
- 三日月はマンガでは下の左の絵のようにかかれることも多いけれど、この形はまちがいなんだ。
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- え! そうなの?
- 月の満ち欠けをおさらいすればわかるよ。月は地球のまわりを回っていて、太陽の光に照らされた部分だけが明るく見える。下の図の水色の円の中が、地球から見た月の形だよ。
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月の満ち欠け
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- どの方向から太陽の光があたっているかで、月の見え方が変わるんだね。たしかに、マンガによくかかれる三日月のような欠け方はしないね。
- 月が太陽と反対側にあるときが「満月」。月が太陽と同じ方向にあってまぶしくて見えないのが「新月」。「新月」を0として、そこから数えた日数を月齢といい、翌日の月が月齢1、そのまた次の日の月が月齢2……と続いていく。新月から次の新月までは約29.5日かかるんだ。
- 昔の人は月の形を見て、日にちを確認していたんだよね?
- うん。カレンダーの「一日」を「ついたち」と言うのは、新しい月が出たことを意味する「月立ち(月建ち)」が語源と言われているよ。
- へー!
- 月は、空の中で毎日だいたい12度ずつ動いていく。地球が自転して12度動くのに約50分かかるから、月が出る時刻は毎日およそ50分ずつ遅れていくんだ。
- 月を見ようと思ったら、同じ時間に同じ方角を見てもダメなんだ!? 三日月が見たいって思ったら、どうすればいいの?
- 月齢2くらい、広い意味では月齢4くらいまでを三日月というね。まず月齢が載っているカレンダーで、だいたい月齢2から4くらいの日にちを調べたら、その日の夕方、太陽がしずんだすぐあとに西の空をさがしてごらん。
- 三日月は太陽がしずむ方向に見えるんだね。
- 新月から数日しかたっていないから、方角的にまだ太陽の近くにある。つまり太陽がしずむと、そのあとを追いかけてすぐしずんじゃうんだ。だから実際に見られるのは、太陽がしずんでからのわりと短い時間しかない。
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- そっかー、うっかりしてると見逃しちゃうんだね。
- 3、4、5……と月齢が大きくなっていくにつれて太陽からも離れていくから、太陽がしずんでもしばらくは見えているようになるよ。さて、月の満ち欠けを体感するために、ゴルフボールを月に、ライトを太陽に見立ててこんな実験してみよう。
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ゴルフボールとライトで月の満ち欠けを見てみよう
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月に見立てたゴルフボールに、太陽に見立てたライトをあて、その場で回る(回転イスがあると便利。イスにすわった自分が「地球」)。ゴルフボールに当たるライトの光が変化し、月の満ち欠けを再現できる。
- おもしろ―い!
- ゴルフボールのでこぼこが月のクレーターに似ているから、欠けぎわの見え方もリアルでおもしろいよ。
大きく見えるのは気のせい?
~月の見かけの大きさと明るさ~
- こないだ夜空を見上げたら、すごく月が大きく見えたの。
- それは気のせいだよ。
- えー! でも本当に大きかったよ?
- 地平線に近い低い月は大きく見え、空の高いところにある月は小さく見える気がするよね。目の錯覚なんじゃないかと言われているよ。
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月が大きく見えるのは目の錯覚?
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- ふしぎ~!
- それなら今度、五円玉を使って月のサイズを確かめてみるといいよ。
- え? 月は五円玉のサイズなの?
- 五円玉の「穴」のサイズなんだ。腕をのばして五円玉の穴からのぞくと、月がちょうど穴にすっぽりおさまるよ。毎日確かめてみれば、月の大きさはいつもだいたい同じだということがわかるよ。
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月の見かけの大きさは五円玉の「穴」と同じ
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- そんなに小さく見えるの? 信じられない! でも、スーパームーンの日は? 月が大きく見えるんでしょ?
- 月は地球の周りをだ円に回っているから、地球に近づくときと遠ざかるときがあるんだ。一番近づく日と満月の日が重なると、少し大きく見えてスーパームーンと言われたりするけど、ひと目で「いつもより大きい!」って感じるほど巨大になるわけじゃないよ。
- そっか~。でも満月って大きく見えるよね?
- 明るいから大きく見えるということもあるかもね。満月の明るさは半月の倍どころじゃないからね。
- そうなの!?
- これは月の反射率が関係しているよ。満月は月が太陽と反対側に来たときだから、太陽の光が正面からあたっている状態。月の表面をおおう砂は正面から光があたったとき、光がはね返る量が急激にふえる性質があるんだ。この図は、満月を100%としたときの明るさの比だよ。
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満月は月明かりが急激に明るくなる
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参考文献:三品隆司, 吉川真(2017)『調べる学習百科 月を知る!』岩崎書店
- 満月は特別明るいんだね。いろいろなことを覚えたから今年の「十五夜」は楽しみだな。
- 「十五夜」をきっかけに月に興味をもったら、それ以外の月にも注目してみてね。月を毎日観察すると発見がたくさんあるよ。形も変わるし、のぼる時間・しずむ時間も毎日変わる。こんなに劇的な天体はほかにないね。
- 月のよび名もすてきだから覚えたいな。「今日は十六夜の月だ!」「立待月だね!」「上弦の月だ!」って楽しめるようになりたい!