「ふしぎ」を見に行こう

「ふしぎ」な現象

なぜ見える?
ふしぎな景色「蜃気楼しんきろう」のなぞ

幻想げんそう的な景色「蜃気楼しんきろう」。
大気の温度差が関係しているよ。いつどこで見られるのかな?
なぜ見える? ふしぎな景色「蜃気楼」の謎

画像提供:魚津埋没林博物館

  • 海岸や湖岸に蜃気楼しんきろうを見に行くときは、天候状況じょうきょうなどに気をつけて見に行きましょう。

探検たんけんメンバー

  • 隊員りりか
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員りりか
  • 荒木健太郎さん
    この人に聞いたよ
    気象を研究している
    荒木健太郎あらきけんたろうさん

出会えたらラッキー! 海や湖で見られる「上位蜃気楼じょういしんきろう

  • こないだテレビで「◯◯おき蜃気楼しんきろう出現しゅつげん!」っていうニュースを見たよ。海の上に町みがぼんやりと見えるんだけど、あれってまぼろしなの?
  • 何もないところにまぼろしかんでいるんじゃないよ。蜃気楼しんきろうは、遠くの景色がのびたり反転したりして、実際じっさいとはちがう景色に見える現象げんしょうなんだ。
  • へー! どうしてそんな風に見えるの?
  • 光が曲がるからだよ。
  • 光が曲がる?
  • コップにストローをさしたとき、ストローが水の中で曲がって見えるよね。あれは目にとどく光が、水と空気の境目さかいめで曲がるからそう見えるんだ。
  • うんうん。
  • 空気の温度差があるところでも光の曲がり方は変わるんだ。蜃気楼しんきろうは、冷たい空気のそうと温かい空気のそう境目さかいめを光が通るときに、光が曲がって見える虚像きょぞうなんだ。
  • 光の魔法まほうなんだね!
蜃気楼しんきろうのしくみ
上位蜃気楼じょういしんきろうの場合

冷気・暖気だんき境目さかいめでの温度変化がゆるやかなら光は小さく曲がって上方にのび、温度変化が急激きゅうげきなら光は大きく曲がって上方に反転する。

下位蜃気楼かいしんきろうの場合

暖気だんきの上に冷気のそうがあるとき、その境目さかいめで光が冷気側に曲げられることで反転する。

  • 遠くの景色が上のほうに変化するものを上位蜃気楼じょういしんきろう、下のほうに変化するものを下位蜃気楼かいしんきろうというよ。下位蜃気楼かいしんきろうはよく見られるけれど、上位蜃気楼じょういしんきろうは出会えたらすごくラッキー。
  • 上位蜃気楼じょういしんきろう、見たいな! いつどこで見られるのかな?
  • 全国の海や湖にいくつか見られる場所があるよ。見られる時期はかぎられ、場所によってもことなるけれど、江戸えど時代から蜃気楼しんきろうの名所として知られる魚津うおづ(富山県)では春ごろに見られるよ。
魚津うおづ蜃気楼しんきろう
実際の景色
↓↓↓
上のほうにのびた景色(上位蜃気楼じょういしんきろう

画像提供:魚津埋没林博物館

  • 向こう岸の町みがのびて見えるね!
  • 海上の船がのびたり反転して見えることもある。あと、上位蜃気楼じょういしんきろうによって太陽の形が四角く見えたり、マッシュルーム型に見えたりすることもあるよ。
太陽の上位蜃気楼じょういしんきろう

四角い太陽

マッシュルーム型

画像提供:尾岱沼シーサイドホテル(北海道)

  • 太陽の形がいつもと違う〜! これはいつどこで見られるの?
  • 太陽の上位蜃気楼じょういしんきろうは地上が冷えた冬の朝などに、東の空がひらけている太平洋側の平野部などで出会えることがあるよ。日の出の時間ねらって見に行ってみよう。
  • 蜃気楼しんきろうって、言葉のひびきも幻想げんそう的だよね。
  • 蜃気楼しんきろうという言葉は、中国の有名な歴史書『史記』にはじめて出てきたんじゃないかと言われているよ。しん(大きなハマグリ)が気をはいて楼閣ろうかく(高い建物)を生み出すというのが語源ごげんらしい。
  • へ〜! 妖怪ようかいのしわざだと思ったのかな?
蜃気楼しんきろう語源ごげん
  • 日本にも妖怪ようかいだと思われていた蜃気楼しんきろうがあるよ。熊本県の八代海で見られる不知火しらぬいという鏡映蜃気楼きょうえいしんきろう(または側方蜃気楼そくほうしんきろう)とばれる蜃気楼しんきろうがそれ。漁船の光が横にのびることで、実際じっさいよりたくさんの光がゆらめいて見えるんだ。
    ふつう蜃気楼しんきろう空気の温度差が上下にあることが重要なんだけど、不知火 しらぬいは横方向の温度差があるときに見られるんじゃないかと言われているよ。
妖怪ようかいだと思われていた「不知火しらぬい

意外と身近! 街でも見られる「下位蜃気楼かいしんきろう

  • 下位蜃気楼かいしんきろうはどんな風に見えるのかな?
  • 下位蜃気楼かいしんきろうは、遠くの景色が下に反転するタイプが多いよ。代表的なのは浮島現象うきじまげんしょう
浮島現象うきじまげんしょう下位蜃気楼かいしんきろうの一種)

画像提供:魚津埋没林博物館

  • 建物がいてる?!
  • 建物の上の空が、建物の下に反転するため、いているように見えるんだ。他にも、下位蜃気楼かいしんきろう太陽がだるま型などに変化して見えることもあるよ。
太陽の下位蜃気楼かいしんきろう

だるま型

  • わー! これもキレイ! 下位蜃気楼かいしんきろうはいつどこで見られるの?
  • 全国どこの海でも見られて、比較ひかく寒い時期に出会いやすいよ。冬でも海水は温かいから、下位蜃気楼かいしんきろうが見られやすい「温かい海面の上に冷たい空気のそうがある」という状況はよく起こるんだ。その他に、夏によく見られるげ水」という下位蜃気楼かいしんきろうもあるよ。
げ水(下位蜃気楼かいしんきろうの一種)
  • 道路に水たまりが見えるよ?
  • 実際じっさいには水たまりはなくて、夏の熱い地面とその上の空気との境目さかいめで光が曲がることで、上の景色(空や木)が地面に反転して水たまりのように見えるんだ。近づいてもそこに水たまりはなく、近づくほどはなれていくように見えるから「げ水」というんだ。
  • 神秘しんぴ的〜! でも蜃気楼しんきろうって意外と身近で見られるんだね。
  • 蜃気楼しんきろうと同じく、光が曲がることで起こる現象には陽炎かげろうもあるよ。夏のアスファルトの上の景色がもやもやして見えたり、ロウソクのほのおの上の景色がゆらゆらしているのも陽炎かげろうだよ。空気の温度差があるところで光が曲がって見られるものなんだ。
光が屈折くっせつすることで起こる「陽炎かげろう
  • ロウソクの上のゆらゆらを思いかべると、空気の温度差があるところで光が曲がるということがよくわかるね。
  • そう。でも、陽炎かげろうはほんの一部分だけの温度差で見られるけど、海や湖に発生する蜃気楼しんきろうは、大きな範囲はんい暖気だんきそうと冷気のそうがないと見られないんだ。
  • 蜃気楼しんきろう妖怪ようかいのしわざじゃなくて、お天気のしわざだったんだね。

蜃気楼しんきろう」スポットへ出かけよう!

出会えたらラッキーな「上位蜃気楼じょういしんきろう」の観測かんそくスポットを紹介しょうかいするよ。運良く見られるかな?

※大気現象げんしょうのためいつでも見られるわけではありません。見られる条件じょうけんは場所や気候によってことなりますので、
自治体のHP等でご確認かくにんください。

  • 魚津うおづ

    魚津 画像提供:魚津埋没林博物館

    魚津うおづ

    春に上位蜃気楼じょういしんきろうまれに、一年を通して下位蜃気楼かいしんきろう頻繁ひんぱんに見られる。

    住所:
    富山県魚津市港町周辺
    https://www.city.uozu.toyama.jp/contents/kanko/sinkirou.html
  • 琵琶湖びわこ

    琵琶湖 画像提供:琵琶湖蜃気楼研究会

    琵琶湖びわこ

    春に琵琶湖びわこ周辺に上位蜃気楼じょういしんきろうまれに、一年を通して下位蜃気楼かいしんきろう頻繁ひんぱんに見ることができる。

    住所:
    滋賀県 琵琶湖沖および湖岸周辺
  • 小樽おたる

    小樽 画像提供:小樽市総合博物館

    小樽おたる

    春から初夏にかけて小樽沖おたるおきに「高島おばけ」とばれていた上位蜃気楼じょういしんきろうが見られる。

    住所:
    北海道小樽市 小樽沖
  • 斜里しゃり

    斜里 画像提供:知床博物館

    斜里しゃり

    オホーツク海にかぶ春の流氷が上位蜃気楼じょういしんきろうとなって見える「幻氷げんぴょう」が有名。

    住所:
    北海道斜里郡斜里町 斜里沖
    https://shiretoko-museum.jpn.org/shizen_rekishi/mirage-genpyo/genpyo/
  • *その他にも東北の海や湖、大阪湾おおさかわんなどでも観測情報かんそくじょうほうがあるよ。

    *日本各地の蜃気楼しんきろう写真の壁紙かべがみをここからダウンロードできるよ。

    提供:日本蜃気楼協議会
    https://www.japan-mirage.org/mirage_calendar/download.html
荒木さんからのメッセージ
  • 蜃気楼しんきろうは光の魔法まほうで生まれた虚像きょぞう上位蜃気楼じょういしんきろうはめったに出会えない神秘しんぴ的ではかない現象げんしょうだけど、下位蜃気楼かいしんきろうなら出会いやすいから、意識いしきして見つけてみてね。
まとめ
  • 蜃気楼しんきろうは温度のことなる大気が層状そうじょうに広がっているときに、光が曲がって生まれる虚像きょぞう
  • 上位蜃気楼じょういしんきろうは出会えたらラッキーな現象げんしょう。海や湖で見られ、見られる条件は場所によりことなる。
  • 下位蜃気楼かいしんきろうは出会いやすく、夏の道路に現れる「逃げ水」や寒い時期の海がねらい目。

Profile

荒木健太郎

荒木健太郎あらきけんたろう

雲研究者

気象庁気象研究所所属。博士(学術)。防災・減災のために、豪雨・豪雪・竜巻などによる気象災害をもたらす雲のしくみ、雲の物理学の研究に取り組んでいる。著書に『雲を愛する技術』(光文社新書)、『世界でいちばん素敵な雲の教室』(三才ブックス)、絵本『せきらんうんのいっしょう』『ろっかのきせつ』(いずれもジャムハウス)などがある。
詳細プロフィール
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/fo/fo3/araki/
Xアカウント
https://twitter.com/arakencloud