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「ふしぎ」な天体
火星人はなぜタコ型？
最接近はいつ？
ふしぎな惑星
「火星」のナゾ
夜空に赤く輝くふしぎな惑星「火星」のナゾにせまろう。
大きく見える「最接近」のチャンスはいつかな？
大きく見える「最接近」のチャンスはいつかな？
画像提供：NASA/JPL-Caltech
探検メンバー
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- ふしぎ探検隊が行くよ！
- 隊員りりか
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- この人に聞いたよ
- 天文雑誌『星ナビ』編集長の
川口 雅也さん
火星人はなぜタコ型？
- 火星人ってタコみたいだよね。
- 頭が大きくて、手足が細長い火星人のすがたは昔からおなじみだね。あれはイギリスのSF作家ウェルズが書いた『宇宙戦争』（1898年）のさし絵に登場して広く知られるようになったんだ。
- タコ型の火星人
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- SF小説に出てきたんだね。
- タコ型火星人が地球にせめてくるという話で、その小説をもとにしたラジオドラマが1938年にアメリカで放送されたときは、現実のニュースだと思った市民がパニックを起こして大変なさわぎになったんだ。
- 大炎上だね…！
- 火星に文明があるのでは？ という論争はそれ以前からあったんだ。
- そうなんだ？
- 火星を望遠鏡で見ると、みぞのようなもようがたくさん見えるのだけど、19世紀にイタリアの天文学者スキャパレリがそのスケッチを発表したとき、イタリア語で書いた「みぞ（canali）」を英語で「運河（canal）」と訳されたことで誤解が広がったらしい。
- 運河をつくることができる生き物がいると思ったんだね。
- 季節によって火星のもようがちがって見えることも、生き物がいるんじゃないかという想像をかき立てたようだよ。
- もよう？
- 火星には「極冠」といって、ドライアイスでおおわれた部分があり、それがあたたかい季節にはとけて小さくなり、さむい季節には大きくなるんだ。
- 火星にはドライアイスがある！
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画像提供：NASA, ESA, and STScI
- ドライアイス？！ ひえひえだね！
- 南北の極に見える白いものが極冠だよ。火星は大気のほとんどが二酸化炭素だから、水の氷だけでなく、二酸化炭素の氷（ドライアイス）ができるんだ。
- 極冠以外にも、もようが見えるよ。
- 表面の山や谷や盆地が見えているんだ。黒っぽい色の砂が集まって、もようのようになっているところもあるね。火星ではときどき大規模な砂嵐が起こって、もようをかき消してしまうことがあるんだよ。嵐がおさまると、もとにもどるんだけど。
- まるで季節によって植物がしげったり、なくなったりしているように見えたのかな。
- うん。SF小説で火星人がえがかれたのには、そうした背景もあったんだ。
- でも、だれも火星人を見たことがないのに、どうしてタコ型だと思ったのかな？
- 宇宙人は知能が発達しているから大きな頭脳をもっているはず。火星は地球よりも重力が小さいから、細い手足で大きな頭をささえられるだろう。という推定からえがかれたんだ。
- ちゃんと根拠があったんだね！ でも、同じ宇宙人でも金星人とか木星人とかは聞かないよね。どうしてだろう？
- 水星や金星は太陽に近くて熱すぎるし、ぎゃくに木星より遠くは冷たすぎて生命は誕生しにくいと思われていたんだ。
- へー！
- でも火星は地球のすぐ外側を公転する身近な惑星だし、地面もあるから、何かいてもおかしくないって考えたんじゃないかな。
- 火星は一番身近な惑星
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- もっとも想像をふくらませやすい惑星だったんだね。
- 今はローバーとよばれる無人探査機が送りこまれて調査が進んでいるけれど、火星人どころか、微生物も発見されていないよ。
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ローバーが撮影した
火星の画像 -
画像提供：NASA/JPL-Caltech/MSSS
- わぁ、地球みたい！ 本当に生き物はいないの？
- 火星ができた約45億年前から約10億年の間は、3分の1くらいが海におおわれていて、大気も濃かったらしい。川も流れていたと考えられている。その当時だったら生命が誕生したかもしれないけれど、現在はその痕跡は見つかっていないよ。
- ざんねん…！ タコ型の宇宙人に会いたかったな。
火星に人は住める？
- 生き物がまったくいない火星に人類は住めるの？ 移住計画があるんでしょ？
- アメリカの民間企業がかかげている火星の人類移住計画だね。でも、移住どころか、人類はまだ火星におり立ったことがないんだ。
- 火星って遠いの？
- 近い将来、火星旅行が実現するようになったら、半年ちょっとくらいで行けると言われているよ。
- 行ったとして人は住めるかな。大きさや重力はどれくらい？
- 火星の直径は地球の半分くらいで、重力は地球の半分より小さいくらい。重力が地球の6分の1くらいしかない月では歩くとぴょんぴょんするけど、火星ではふつうに歩けるはずだよ。
- へー！ 朝が来て、夜が来る…っていう1日のリズムも地球と同じ？
- うん。地球の1日は24時間、火星の1日は24.5時間でほとんどいっしょだから、ほかの惑星よりはくらしやすいかな？
- 息はできる？
- 火星は大気がうすく、約95%が二酸化炭素なんだ。酸素がほとんどないから息はできないね。
- そっか。気温はどれくらい？
- 熱いところで昼間にだいたい30度くらいだけど、夜は冷えこみ、最低気温はマイナス150度くらいになるよ。
- そんなに？！ 大気がうすいからさむいの？
- うん。大気には温室効果があるけれど、火星のように小さな星は重力も小さく、大気が外ににげてしまうんだ。さむくて作物も育たない。もし移住したら、酸素を入れたドームのような建物の中でくらし、そこで耕すことになりそうだね。
- もし人類が火星に移住したら…
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- ちょっとたのしそう！ でも水もないんだよね？ 地球から運ぶのかな。
- かつてあった水が火星の地面の下でこおっているから、それを取り出すことができれば便利だね。電力は太陽光発電でまかなえるだろう。
- 青空は見える？
- 空に砂のつぶがたくさんまい上がっているから、昼間の空はオレンジ色に見えるよ。
- 火星の空はオレンジ色
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画像提供：NASA/JPL-Caltech/Cornell Univ.
- 住んでいるうちに見なれるかなぁ。夜空はどうかな。お月さまは見える？
- 火星にも月のような衛星*が2つあるけど、月よりも小さく形もいびつで、岩がうかんでいるような感じなんだ。月が太陽の前を横切って太陽が欠けて見える「日食」は、火星ではこんなふうにみえるよ。* 惑星のまわりをまわる天体。
- 火星から見た日食
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画像提供：NASA/JPL-Caltech/Malin Space Science Systems/Texas A&M Univ.
火星にはフォボスとダイモスという2つの衛星があり、これは大きいほうの衛星フォボスによる日食。
- ほんとに岩みたいだね！ 青空もお月見もたのしめる地球ってめぐまれているんだね。でも火星もシブくていいかも。
- 火星には海や森はないけど、エベレストより高い山があり、グランドキャニオンより深い谷がある。この火星を横切る黒いすじのように見えるのは、太陽系最大の峡谷といわれるマリネリス峡谷だよ。
- 宇宙から見たマリネリス峡谷
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画像提供：NASA/JPL-Caltech
長さ4,000km、深さ最大11km、幅最大200km。グランドキャニオンは長さ446km、深さ1.6km、幅最大29km。（数値はおよそ）
- グランドキャニオンよりすごいの？！ そんな絶景が見られるなら火星に行ってみたい！
- 宇宙船で火星を一周して帰ってくるくらいのツアーなら、近い将来できるかもしれないね。
- 生きているうちに行けるかなぁ。ところで最近、火星が明るく見えるって聞いたんだけど本当？ どうして？
- 火星は約2年2カ月ごとに地球に接近するんだ。ちょうどその時期が近づいているということだね。
- 接近？
火星の最接近はいつ？
- 地球が1年かけて太陽のまわりを一周するのに対し、火星は1.88年ほどかけてゆっくり一周するから、地球が火星に追いつくのは約2年2カ月に一度になるんだ。
- へー！ そのときに大きく見えるんだね。
- うん。そのときを「最接近」というよ。でも、地球の公転軌道はまん丸い円に近いけど、火星の公転軌道はだ円だから、最接近する場所によって、地球と火星の距離は、いつもちがうんだ。
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火星と地球の公転軌道を
上から見たイメージ -
※「大接近」「準大接近」「中接近」「小接近」は慣例的なよび名で、定義はありません。
- 2020年はなかなか近いね！
- うん。「大接近」のゾーンからはやや外れるけど、それでも「準大接近」といえるくらい近づくね。
- 一番近づく日はいつ？
- 2020年の最接近の日は10月6日。前後2カ月くらいは肉眼でもとっても明るく見えるし、望遠鏡を使えばだんだん大きさが変わっていくのもわかるよ。
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2020年10月6日の星空
（東京の夜10時ごろ） -
※天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ11」で作成
大阪では20分後、福岡では40分後に同じ星空になる。
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2020年の火星の
見かけの大きさの変化 -
※天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ11」で作成
- 火星は赤いからすぐに見つけられるね。
- 火星が赤いのは、地表が鉄さびをふくんだ砂でおおわれているから。明治時代の日本では、最接近した火星を見て「あの赤い光の中に西郷 隆盛のすがたが見える！」と人々がおおさわぎしたこともあるんだ。
- なんで西郷 隆盛なの？！
- 明治10年の火星の最接近は、いわゆる「大接近」とよばれる大きな接近だった。ちょうど西南戦争で西郷 隆盛が亡くなった年。望遠鏡で見える火星のもようが西郷 隆盛の勇姿に見えるとうわさになり、「西郷星」とよばれたんだ。
- みんな星にいろんな思いをたくすんだね。大接近は何年に一度くらいあるの？
- 大接近は15年または17年ごとに見られるよ。最近では2018年が大接近と言われていたね。次に同じくらい大きく見えるのは2035年だよ。
- わたしたちが大人になったころだね！
- 「15年前も見ていたな〜」と思い出しながら見るのもよいものだよ。今年の「準大接近」も見のがせないよ。火星は肉眼でも見えるけど、望遠鏡でもようを見るのもおもしろいよ。
- うん！ どんなもように見えるか、たのしみだな。
まとめ
- 火星の大気の成分は約95％が二酸化炭素で、北極と南極に大きなドライアイスができる。
- 火星は地球のすぐ外側をゆっくり公転し、約2年2カ月ごとに「最接近」する。
- 火星が特に大きく見える「大接近」は15年または17年ごとに見られる。
川口 雅也
天文雑誌『星ナビ』編集長
天文趣味をサポートするソフトウェアやデジタルプラネタリウムの開発、天文雑誌の編集・出版などを手がける株式会社アストロアーツの取締役を務める。
- アストロアーツ
- https://www.astroarts.co.jp/
※このコンテンツは、2020年9月の情報をもとに作成しております。