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「ふしぎ」な現象

温泉おんせんはなぜわく?
なぜ体にいい?
温泉おんせんのナゾとふしぎ

温泉おんせんにつかると体がしんから温まるよ。この熱はどこから来たものなのかな?

探検たんけんメンバー

  • 隊員りりか
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員りりか
  • 菊川 城司さん
    この人に聞いたよ
    温泉おんせんにくわしい
    菊川きくがわ 城司じょうじさん

火山があるところに
温泉おんせんがある?!

  • 日本には北から南まで、いろんな温泉地があるね。
  • 日本は火山が多いからね。
  • 温泉おんせんは火山と関係があるの?
  • 火山の下にあるマグマに関係しているんだ。これは日本の火山と温泉おんせんのある場所をくらべた図だよ。
日本の火山と温泉おんせんのある場所

参考:『温泉―自然と文化』(日本温泉協会)

  • 火山の近くに温度の高い温泉おんせんがたくさんあるね!
  • 火山の下には、地球の深いところから上がってきたマグマがたまっているんだ。マグマからは熱い水や水蒸気すいじょうき、ガスが出ているよ。それが地中にしみこんだ雨水とまざり、地面にわいて温泉おんせんになるんだ。
  • 火山の近くだったら、どこからでもわくの?
  • 亀裂きれつ断層だんそうなど地面のれ目からわき出すよ。熱い水は冷たい水よりも軽いから上にのぼっていくんだ。江戸えど時代まではそうした自然にわき出した温泉おんせんだけだったけど、明治時代より後は人工的にあなってポンプでくみ上げた温泉おんせんもふえたよ。
  • やけどするくらい熱いお湯がわき出すこともある?
  • あるよ。そういう温泉おんせんは昔から地獄じごくとよばれておそれられてきた。大分県の別府の地獄じごくが有名だよ。
別府の
「血の池地獄じごく」「海地獄じごく

画像提供(左):別府地獄組合

  • うわぁ。こわい。色もついているね。
  • 色はとけている成分のせいだよ。熱すぎて入れないけど、見て楽しむ温泉おんせんなんだ。
  • 入れないのに「温泉おんせん」なんだ?
  • 温泉おんせん定義ていぎ法律ほうりつで決められていて、地中からわき出す水や水蒸気すいじょうきのうち「温度が25度以上」「決まった量の成分が1つ以上とけている」のどちらかにあてはまれば温泉おんせんなんだ。だから熱湯の温泉おんせんもあれば、つめたい温泉おんせんもあるよ。
温泉おんせんには定義ていぎがある
  • 水蒸気すいじょうきだけの「温泉おんせん」もあるの?
  • 神奈川県の箱根にある大涌谷おおわくだにがそうだよ。ここも昔は地獄谷じごくだにとよばれていたんだ。
大涌谷おおわくだに水蒸気すいじょうき
  • 地面から湯気が出てる!
  • この熱い水蒸気すいじょうきに地下水をかけてお湯にして、箱根のいろんな温泉おんせん場に運んで入浴できるようにもしているんだ。箱根の中でも山の下のほうには、ちょうどいい温度で自然にわいた温泉おんせんもあるよ。
  • 箱根は温泉おんせんで有名な町だよね。
  • 箱根も別府も、火山があって地面の下がとても熱いから温泉おんせんがたくさんあるんだ。火山に関係した温泉おんせん火山性温泉かざんせいおんせんというよ。
火山性温泉かざんせいおんせんのしくみ

地中にしみこんだ雨水が、マグマから出る高温の水・水蒸気すいじょうき・ガスとまざり、熱や成分を温泉おんせんとなる。「たまり」をった温泉おんせんや自然にわいた温泉おんせんなどがある。

※「たまり」とは熱水ねっすい温泉おんせんのたまっている場所。

火山がない場所で
わいている温泉おんせんのナゾ

  • 東京のど真ん中にも温泉おんせんがあるよね。まわりに火山なんてないのに、どうして?
  • 地球は中心に近づくほど熱くなるから、実は火山がない場所でも、すごく深くれば熱い水を取り出せるんだ。
  • どれくらい熱くなっているの?
  • 火山がないところでも、100m深くなるごとに、地温がおよそ3度上がるよ。
  • へー! じゃあ、地下1,000mになると……
  • 単純たんじゅんに計算すると、地表の温度が15度だとすると、地下1,000mの地温は45度くらい、地下1,500mだと60度くらいになるよ。そこに水があれば……
  • くみ上げているうちに、いい湯かげんになりそうだね! 深くりさえすれば温泉おんせんがとれるんだったら、どこでも温泉おんせんをオープンできちゃう?
  • 温泉おんせん自体はたぶんどこでもとれるけど、チョロチョロとしか出ないこともあるからってみないとわからないんだ。
  • 地下にどれくらい水が流れているかも大事なんだね。地下水のもとはやっぱり雨水?
  • 地中にしみこんだ雨水だったり、「化石海水」といって地層ちそうじこめられた大昔の海水のこともあるよ。そこに現在げんざいの海水や地下水がまざっていることもある。おおもとはみんな雨水だね。
  • 化石海水っておもしろいね! どれくらい前の海水なの?
  • その地層ちそうができた時代の海水だから場所によってさまざまだけど、何百万年も前の海水だったりするよ。
  • そんなに前?!
  • 東京の地層ちそうには化石海水がたくさんあって、それをり出している温泉おんせんが多いんだ。
  • 知らずに入っていたかも!
  • 火山と関係ない温泉おんせん非火山性温泉ひかざんせいおんせんというよ。断層だんそうなどから自然にわいている温泉おんせんもあって、新潟県の松之山温泉まつのやまおんせんや兵庫県の有馬温泉ありまおんせんのように、とても深いところから断層だんそうをつたってきた熱い水がわき出している例もあるよ。
非火山性温泉ひかざんせいおんせんのしくみ

地中にしみこんだ雨水や化石海水などが、地熱で温められて温泉おんせんとなる。有馬温泉ありまおんせんのようにプレートのしずみこみによってできた温泉おんせんではないかとされる例も。

温泉おんせんはなぜ体にいい?

  • 温泉おんせんってもともとは雨水なのに、どうして体にいいの?
  • マグマから出る水やガスの成分がまざったり、地中を流れているときにまわりにあった岩石の成分がとけたりするんだ。
  • どんな成分がとけているの?
  • 食塩や石膏せっこう重曹じゅうそう、鉄、硫黄いおうなどいろいろあるよ。温泉おんせんは、温度やとけている主な成分によって、いろいろな泉質せんしつに分類されるんだ。
温泉おんせんには
いろいろな「泉質せんしつ」がある
泉質せんしつの例 特ちょう

単純温泉たんじゅんおんせん

温度が25度以上。成分の量はあまり多くない。

ナトリウムー塩化物泉えんかぶつせん

食塩がたくさん入っている。「食塩せん」ともいう。

カルシウムー硫酸塩泉りゅうさんえんせん

石膏せっこうがたくさん入っている。「石膏泉せっこうせん」ともいう。

ナトリウムー炭酸水素たんさんすいそ塩泉えんせん

重曹じゅうそうがたくさん入っている。「重曹泉じゅうそうせん」ともいう。

  • この中でも、日本には「単純温泉たんじゅんおんせん」や「ナトリウムー塩化物泉えんかぶつせん」が多いよ。
  • 単純温泉たんじゅんおんせん」ってあまりき目がないの?
  • そんなことないよ。成分の量が少ないだけで、いろんな種類の成分が入っていることもあるよ。それに、おとしよりや体の弱い人には、刺激しげきの強い「塩化物泉えんかぶつせん」や「硫酸塩泉りゅうさんえんせん」よりも、単純温泉たんじゅんおんせんのほうがおすすめなんだ。
  • そうなんだ? 名前でちょっとそんしてるね! 泉質せんしつによって何にくのかもちがうの?
  • ちがうよ。温泉おんせんはけがや病気によいといわれるけど、具体的にどんな風によいかをしめした適応症てきおうしょうは、泉質せんしつにおうじて定められているんだ。
  • どんなき目があるの?
  • たとえば「塩化物泉えんかぶつせん」や「硫酸塩泉りゅうさんえんせん」は、きりきず・うつ状態じょうたい・皮ふの乾燥かんそうなどにいいよ。「硫黄泉いおうせん」はアトピーせい皮ふえん慢性湿疹まんせいしっしんなどによいとされている。掲示証けいじしょうにも書いてあるよ。
  • 掲示証けいじしょうって温泉おんせんの入口とかにってあるやつ?
  • うん。急に熱が出た場合など、入ってはいけない場合を定めた禁忌症きんきしょうも書かれているよ。大事だから入る前によく読んでね。とけている成分も書かれているよ。
  • 温泉おんせんの色やにおいで、どんな成分がとけているかわかることもある?
  • あるよ。タマゴがくさったような、いわゆる硫黄いおうのにおいがすれば、硫化水素りゅうかすいそがとけているとわかる。「鉄」がとけていると金属きんぞくのにおいがして、鉄が酸化さんかしてお湯が褐色かっしょくや茶褐色かっしょくになっていたりするよ。
  • さっき見た別府の地獄じごくみたいな赤色や青色の温泉おんせんは、どうしてあんな色をしているの?
  • 赤色の温泉おんせん「鉄」がとけているからで、青色の温泉おんせん温泉おんせんにとけている「ケイ」などの粒子りゅうしが、波長の短い青い光をよく散乱さんらんするから青く見えるんだ。どちらも温泉おんせんの色としてはめずらしいよ。
  • よくあるのはどんな色の温泉おんせん
  • 多いのは無色透明とうめいの温泉だけど、硫黄いおうがとけて白色黄色をした温泉おんせんもよくあるよ。まれに緑色もある。大昔の植物が分解ぶんかいされてできた「フミンさんという成分がとけている黒色・茶色温泉おんせんもあるよ。
とけているものによって、
ちがう色がつく
  • よく「美人の湯」ってあるよね。あれも何かとけているの?
  • 「美人の湯」といわれるのは、アルカリせい温泉おんせんが多いよ。温泉おんせんって「泉質せんしつ」のほかに、「pH」のちがいもあるんだ。
  • ピーエイチ??
  • pHが低いと酸性さんせい、高いとアルカリせいということ。身近なものでいうとレモンは酸性さんせい、石けん水はアルカリせいだよ。
  • じゃあ、アルカリせい温泉おんせんは、石けん水みたいな感じなの?
  • 入り心地は石けん水のようにぬるっとしていて、湯上がりのはだは、石けんをあらい流した後みたいにつるつるになる温泉おんせんもあるよ。
  • いいねぇ。酸性さんせい温泉おんせんもあるの?
  • レモンより酸性さんせい度が強い温泉おんせんもあって、入るとちょっとピリピリするよ。
  • いろんな温泉おんせんがあるんだね。世界にも温泉おんせんはたくさんあるの?
  • あるよ。太平洋をとりかこむ一帯や、東アフリカなど、火山のある場所に多い。断層だんそうがあるところにわいていたりもするよ。ヨーロッパでは飲泉いんせんといって、お医者さんの指導しどうのもと温泉おんせんを飲んで長期療養ちょうきりょうようする施設しせつが多いんだ。
世界の温泉おんせんのある場所

参考:『温泉―自然と文化』(日本温泉協会)

  • はだかで温泉おんせんにつかって、ぷは〜ってくつろぐのは日本人だけ?
  • 古代のローマ人は日本人みたいに、はだかで温泉おんせんにつかっていたけど、海外で温泉おんせんにつかる場合は、水着を着てプールのように楽しむことが多いよ。
  • 古代ローマ人とは気が合いそうだね。昔の日本人も温泉おんせんを楽しんでいたの?
  • 今のように日帰りや1ぱく温泉おんせん旅行を楽しむ習慣しゅうかんができたのは、江戸えど時代の中ごろくらいから。江戸えどに近い箱根は当時から人気だったんだ。
  • 現代げんだい人と同じことしているね。温泉おんせん自体はもっと昔からあったの?
  • 古くは『古事記こじき』や『日本書紀にほんしょき』などの古代の書物に、温泉おんせんに入ってけがや病気が治ったという神話が書かれているよ。昔々動物やえらいおぼうさんが発見したと伝えられる温泉おんせんも各地にたくさんあるよね。
  • 動物かおぼうさんが見つけがちなんだ?
  • シカやタヌキが塩分をもとめて温泉おんせんをなめていたのかもしれないし、本当は近所の人が見つけたのかもしれないけどね……。
  • それじゃパンチに欠けるね。ミステリアスな伝説があったほうが、きそうな感じがする!
  • 温泉おんせんが体にいいのは、お湯につかることで温まったりリラックスできたり、成分が体にしみこんだり皮ふを刺激しげきしたりするほかに、温泉おんせんは体にいい」と信じることで得られる気持ちの効果こうかも大きいからね。
  • 火山のちからで温まっているんだとか、何百万年も前の海水なんだとか思って入ると、さらに気分が高まりそう! いろんな温泉おんせんの由来をしらべてみるのも、おもしろそうだなぁ。
日本の有名な温泉おんせん
菊川さんからのメッセージ
  • 自然にいやされたり、おいしいものを食べたり、日常にちじょうからはなれてゆっくりできるのも温泉おんせんのよさ。つかれたときは温泉おんせんに入って、地球の大きな活動に思いをはせながらリフレッシュしよう。
まとめ
  • 温泉おんせんには火山のマグマの熱で温められた「火山性温泉かざんせいおんせん」と、火山と関係ない熱で温められた「非火山性温泉ひかざんせいおんせん」がある。
  • 温泉おんせんにはマグマから出た成分や、地中を流れているときにまわりにあった岩石の成分などがとけている。
  • 温度やとけている成分によっていろいろな「泉質せんしつ」があり、泉質せんしつによってき目もちがう。

Profile

菊川 城司

菊川きくがわ 城司じょうじ

神奈川県温泉地学研究所 専門研究員

防災や環境保全を目的とした、神奈川県内の地震・火山・温泉・地下水・地質に関する調査研究や地震火山活動の観測を行っている。温泉については、神奈川県内の温泉の保護と有効利用に役立てるため温泉の起源や成因解明の研究をしているほか、温泉分析の登録分析機関として掲示証の元となる温泉分析書の発行を行っている。
神奈川県温泉地学研究所
https://www.onken.odawara.kanagawa.jp/