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「ふしぎ」な生き物

どこまで
わかってきている?
恐竜きょうりゅう」の
最新のふしぎとナゾ

およそ6600万年前に大量絶滅ぜつめつした恐竜きょうりゅう
どんな風にくらしていたんだろう? どうして大きな体になれたのかな?
恐竜きょうりゅうの生き残りからそのナゾをさぐることができるよ。
どこまでわかってきている?「恐竜」の最新のふしぎとナゾ

探検たんけんメンバー

  • 隊員はると
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員はると
  • 田中 康平先生
    この人に聞いたよ
    恐竜きょうりゅうを研究している
    田中たなか 康平こうへい先生

恐竜きょうりゅうはなぜ絶滅ぜつめつした?

  • 恐竜きょうりゅうがいたのは、今からどれくらい前?
  • 恐竜きょうりゅうが生まれたのは三畳紀さんじょうきのなかばで、約2億3000万年前。その後、約6600万年前に大量絶滅ぜつめつするまで、およそ1億6000万年間も繁栄はんえいしていたよ。
恐竜きょうりゅうのいた時代
  • 今とはどうちがうの?
  • 気候は今よりもあたたかく、大陸の形や配置もちがっていたよ。三畳紀さんじょうきのころは世界が一つの大きな大陸だった。ジュラ白亜紀はくあきと進むにつれて分かれていき、今に近い形になっていったんだ。
  • 恐竜きょうりゅうたちもいろんな大陸に分かれていったの?
  • うん。それぞれの大陸の環境かんきょうにあわせて進化していったよ。
  • 植物の種類も今とちがうんだね。
  • 三畳紀さんじょうきはイチョウやシダ植物など古いタイプの植物しかなかった。ジュラになると植物の種類はふえていき、白亜紀はくあきになって花やイネ科の植物があらわれてふえていったよ。
  • あたたかくて植物がたくさんある時代に生きていたんだね。なのに、どうして絶滅ぜつめつしちゃったの?
  • 恐竜きょうりゅうの大量絶滅ぜつめつにはいろんな説があるけど、まだ完全に決着はついていないんだ。たとえば巨大きょだい隕石いんせきが落ちてきたから」という説がある。隕石いんせきはたしかに落ちてきたし、恐竜きょうりゅうが大量絶滅ぜつめつしたのも本当だけど、それが絶滅ぜつめつにどうつながるのかはまだ研究中なんだ。
  • どれくらい大きな隕石いんせきがぶつかったの?
  • 直径10kmくらい。何千万年から1億年に1回クラスの大きな隕石いんせきだった。といっても直径約1万2700kmの地球にとってはゴマつぶのようなものだけどね。
  • ゴマつぶ?! それでも地球には大打撃だげきなのかな。
  • 恐竜きょうりゅう以外にもかなり多くの生きものが絶滅ぜつめつしているからね。衝突しょうとつによってまい上がったちりで太陽の光がさえぎられ、急激きゅうげきにさむくなったり、植物が育たなくなってエサがとれなくなったから、ということがいわれているよ。
  • それがいま有力な説なの?
  • 有力な説ではあるけど、まだナゾも多いんだ。たとえば多くの恐竜きょうりゅうや、翼竜よくりゅう、海に住むはちゅう類などは絶滅ぜつめつしたけれど、鳥類、ほにゅう類、ワニ・カメなどは生きのびることができた。それはなぜか。まだまだ検証けんしょう余地よちがあるよ。
  • たしかにナゾだね。どうしてだろう……?
  • 本当の答えは永遠えいえんにナゾのままかもしれないね。
  • え?! この先もわからないの?
  • 実際じっさいにこの目で見た人はだれもいないからね。永遠えいえんに追いもとめることができるナゾともいえる。でも研究のバトンが受けつがれていくことで、ちょっとずつ正解せいかいに近づいていくことはできるよ。
  • いつかぼくたちの世代がバトンを受けつぐんだね。

恐竜きょうりゅうの行動やくらしは
どこまでわかってきた?

  • お母さんに「恐竜きょうりゅうは今も生きているよ」って言ったらびっくりしてた。鳥は恐竜きょうりゅうの生き残りなんだよね?
  • うん。昔からその説はあったんだけど、ここ20年くらいで研究が進み、肉食恐竜きょうりゅうの多くはふかふかの羽毛を生やしていたことや、恐竜きょうりゅう時代には歯のある鳥もたくさんいたことなどがわかった。そうなると恐竜きょうりゅうと鳥のさかいは、かなりあいまいになるよね。
  • そうだね。
  • そうしたさまざまな発見をへて、鳥は恐竜きょうりゅうの中から誕生たんじょうした生きものだと結論けつろんづけられたんだ。
  • 恐竜きょうりゅう繁栄はんえいしていた時代に、すでに鳥はいたんだね。
  • 恐竜きょうりゅう時代のまんなかあたり、約1億5000万年前に、恐竜きょうりゅうから鳥が生まれたんだ。始祖鳥しそちょうはもっとも古い鳥のひとつだね。今いる鳥は、ティラノサウルスのような肉食恐竜きょうりゅうの一グループから進化したことがわかっているよ。
  • うちの文鳥もティラノのなかまなんだ?!
鳥はどうもうな肉食恐竜きょうりゅうから
進化した!
  • ここ10年は見た目の研究も進んだよ。昔は恐竜きょうりゅうといえば、ウロコにおおわれた地味なはちゅう類のイメージだった。今はみんなが図鑑ずかんで見ているとおり、鳥のようにカラフルな羽毛をもった恐竜きょうりゅうがたくさんいたと考えられているよ。
モフモフした恐竜きょうりゅう
いっぱいいた!

デイノケイルス

クリンダドロメウス

  • 他にはどんなことがわかってきているの?
  • カラフルな色のたまごがあったこともわかっているし、のうや感覚器官の研究も進んでいるよ。たとえば夜行性やこうせい恐竜きょうりゅうがいたこと、すごくにおいに敏感びんかん恐竜きょうりゅうがいたことがわかってきている。もしかしたら次は鳴き声もわかってくるかもしれないね。
  • だんだん恐竜きょうりゅうのイメージが生き生きしてくるね! どんな行動をしていたのか、もっと知りたいな。
  • 恐竜きょうりゅうの行動をさぐるには、鳥を観察するのがおすすめだよ。鳥と肉食恐竜きょうりゅうはどちらも二足歩行だし、共通している特徴とくちょうはたくさんあるんだ。きっと行動もていただろう。
  • たしかに、うちの文鳥もおこったときは恐竜きょうりゅうっぽい! 先生も鳥をよく観察するの?
  • うん。ぼくらが鳥を見るときは完全に研究目線。「恐竜きょうりゅうもこんな動きをしていたのかな?」と思いながら見ているよ。ワニを観察することもあるよ。
  • 鳥とワニ?
  • 鳥とワニはどちらも主竜類しゅりゅうるいぞくし、恐竜きょうりゅうの両サイドにいる生きものといえるんだ。ぼくらは恐竜きょうりゅうの化石もしらべるけれど、まずは今生きている鳥とワニを徹底的てっていてきにしらべているよ。そうすることで、恐竜きょうりゅうの行動やくらしを推定すいていできるんだ。
鳥とワニは同じ
主竜類しゅりゅうるい」の生きもの

主竜類しゅりゅうるい」は、かつて地球上で支配的しはいてき繁栄はんえいしていた、はちゅう類の大きなグループ。もうひとつの大きなグループ「鱗竜形類りんりゅうけいるい」には、首長竜類くびながりゅうるい やモササウルス類、今生きているものではトカゲ類やヘビ類などがいる。ちなみに、魚竜ぎょりゅうはまた別のはちゅう類のグループ。

  • 鳥やワニは子育てをしているよね? 恐竜きょうりゅうもそうだったのかな?
  • 恐竜きょうりゅうの子育て」はまさにぼくがメインで研究しているテーマ。一部の羽毛をもった小型こがた恐竜きょうりゅうは、鳥のようにたまごをあたためていたことがわかっているよ。
  • へー! かわいいね! さすがに大きな恐竜きょうりゅうには無理かな?
  • それが最近のしらべによると、全長10m近い大きな恐竜きょうりゅう抱卵ほうらんしていたようなんだ。直径3mもある巣の化石を調べてわかったよ。
  • えぇ?! たまごがつぶれない?
  • たまごはドーナツじょうにならんでいたんだ。おそらく親は真ん中にうずくまって抱卵ほうらんしていた。あるいは、あたたかい時代で地上からの熱もあるし、たまごをあたためるというよりは、つばさでかげをつくってあげていたのかもしれない。
オヴィラプトルの抱卵ほうらんイメージ
  • 恐竜きょうりゅうたちも、けなげに子育てしていたんだね。
  • たくさんの赤ちゃん恐竜きょうりゅうの化石のそばで、ベビーシッターをしていた恐竜きょうりゅうの化石が見つかったこともあるんだ。
  • ベビーシッター?!
  • おそらく一部の恐竜きょうりゅうは鳥のように子育てしていただろうと考えられているよ。赤ちゃん恐竜きょうりゅうにエサをあたえたり、エサのとり方を教えたりしていたかもしれない。
恐竜きょうりゅうの子育てイメージ
  • かわいいなぁ。化石をしらべることで、これからいろいろなことがわかってくるの?
  • 行動は化石に残りづらいからむずかしいところだけど、いかにして残された証拠しょうこから行動やくらしぶりを明らかにするかは、今後の恐竜きょうりゅう研究の大きなテーマだね。

恐竜きょうりゅうはなぜ
大きな体になれた?

  • 鳥が恐竜きょうりゅうから進化したということは、今も恐竜きょうりゅう繁栄はんえいしているといえるね。
  • ぼくたち人間がぞくするほにゅう類の数が約6000種であるのに対して、鳥は約1万種もいるから、今も大繁栄はんえいしているといえるよね。
  • でも大きな恐竜きょうりゅうもこの目で見てみたいな。パラサウロロフスみたいな、やさしそうな恐竜きょうりゅうに会ってみたい。もうあらわれないのかな?
パラサウロロフス
  • 残念ながら絶滅ぜつめつした恐竜きょうりゅうは二度とあらわれることはないよ。でも、もしかしたら未来の地球では、恐竜きょうりゅうみたいにまた新しい大きな動物が誕生たんじょうしているかもね。
  • どうして昔は大きな恐竜きょうりゅうがいたの? ブラキオサウルスとかアパトサウルスみたいな陸の大きな生きものは、今いないよね。
  • 恐竜きょうりゅうの体が大きくなった理由のひとつに、ほね空洞くうどうだらけだったことがあげられるよ。丈夫じょうぶだけど軽い構造こうぞうになったことで、巨大化きょだいか可能かのうになった。
  • スカスカのほねだったの?
  • ところどころにあながあいていて、空気をためられるようになっていたんだ。
  • なんのために?
  • 首の長い恐竜きょうりゅうは、息をするのが大変そうだと思ったことはない?
  • うん。すった息がはいまでとどくのに時間がかかりそう。あ、そっか。それでほねに空気をためていたの?
  • そう。恐竜きょうりゅう効率こうりつよく酸素さんそを取りこめるように進化した生きものなんだ。恐竜きょうりゅうから進化した鳥を見れば、それがよくわかるよ。鳥ははいの前後に「気のう」という空気をためられるふくろがいっぱいあるおかげで呼吸効率こきゅうこうりつがとてもいいんだ。
  • たしかに、エベレストの上をゆうゆうと飛んでいたりするよね! 人間なら高山病になっちゃうよ。
  • 恐竜きょうりゅう空洞化くうどうかしたほねの中にも気のうが入っていたと考えられているんだ。軽くて息がしやすい体を手に入れたことで、大きくなれたんだね。
  • でも、どうして、そこまでして体を大きくする必要があったの? 小さいほうが動きやすそうなのに。
  • 鳥のように小さくて飛べる体に進化したものもいるけど、大きな体にもメリットがあったんだ。たとえばてきにおそわれにくくなるし、高いところにあるエサがとれるようになるよね。
  • それぞれによさがあるんだね。でも今、恐竜きょうりゅうみたいに大きな動物があらわれても、住めるような広い場所はあるかなぁ?
  • それがおもしろいことに、パラサウロロフスやセントロサウルスのような白亜紀はくあきの終わりの恐竜きょうりゅうたちは、今でいう北アメリカ大陸の西のはじの、すごく細長いエリアにたくさんいたんだ。
  • ひしめきあっていたんだ? じゃあ今の世界にいても大丈夫だいじょうぶかな……。アメリカでよく化石が見つかるの?
  • 恐竜きょうりゅうの化石はアメリカ、カナダ、アルゼンチン、中国、モンゴル、イギリスの6つの国で見つかることが多いよ。もちろん、これから研究が進めば他の地域ちいきでもたくさん見つかるかもしれない。
  • 日本では「むかわりゅう発掘はっくつが話題になったよね。
  • うん。「むかわりゅう」は北海道むかわ町で、地元の人によって発見された恐竜きょうりゅうの化石。小林快次よしつぐ先生たちが発掘はっくつし、2019年の論文ろんぶん発表でカムイサウルス・ジャポ二クスという学名がつけられたよ。
カムイサウルス・ジャポニクス
通称つうしょう「むかわりゅう」)
  • かっこいい名前だね! 新種の恐竜きょうりゅうってどれくらいのペースで見つかっているの?
  • 年に40種くらいかな。平均へいきんすると10日に1種のペースで見つかっているよ。
  • けっこうたくさん見つかるんだね! 1種っていうと……
  • たとえば「ティラノサウルス・レックス」で1種だよ。生きものの学名は「属名ぞくめい」と「種小名しゅしょうめい」の2つがかならずセットなんだ。一ぞくに何種もいるものもあれば、「ティラノサウルス・レックス」のように一ぞく一種しかいないものもあるよ。
属名ぞくめい」と「種小名しゅしょうめい」は
名字と名前のような関係
  • 図鑑ずかんにのっているのは属名ぞくめいまでのことが多いね。
  • うん。属名ぞくめいのほうで数えると、1000ぞくくらいしか見つかっていないんだ。恐竜きょうりゅうが1億6000万年も繁栄はんえいしていたことを考えると、まだまだすくないよね。
  • ぼくたちが大人になったころでも、研究できることはいっぱいありそうだね。
  • 新種の恐竜きょうりゅうの発見はもちろん、どんな進化をとげたのか、どんな行動をしていたのか、どんな風にくらしていたのか……まだまだけていないナゾがいっぱいあるんだ。恐竜きょうりゅう好きのみんなには、ぜひ将来しょうらいいっしょに研究してほしいな。
  • ねらい目の研究はあるかな?
  • そうだね、たとえば、海に進出した恐竜きょうりゅうはまだ見つかっていないよ。水鳥のような恐竜きょうりゅうは1種見つかっているけど、海の中でくらしていた恐竜きょうりゅうは見つかっていないんだ。いたかどうかはわからない。見つけたら大発見になるね。
  • それはチャンスだね!
田中さんからのメッセージ
  • 将来しょうらいどんな仕事をするにしても、いま勉強する必要のない科目なんて一つもないよ。ぼくは恐竜きょうりゅうだけじゃなく星や昆虫こんちゅう も好きだったけれど、すべて今に役立っている。いろんなことを好きになって、いろんなことにチャレンジしてね。
まとめ
  • 恐竜きょうりゅうの大量絶滅ぜつめつの理由は、まだ決着がついていない最大のナゾ。
  • ここ10年で恐竜きょうりゅうの見た目の研究は大きく進んだ。これからは声や行動などもわかってくるだろう。
  • 恐竜きょうりゅうほねの中にも空気をためることができ、軽くて息がしやすい体を手に入れたおかげで大きな体になれた。

Profile

田中康平

田中康平たなかこうへい

筑波大学 生命環境系 地球進化科学専攻 助教

1985年名古屋市生まれ。北海道大学理学部卒業。カナダカルガリー大学地球科学科修了(Ph.D.)。名古屋大学博物館の研究員を経て現職。恐竜の繁殖や子育てについて研究している。