
虫をつかまえて養分にするために、いろいろな形に進化した「食虫植物」。
大きく4種類に分かれるよ。
代表例「ハエトリグサ」
園芸店でよく見られる「ハエトリグサ」。虫が葉の内側に生えるトゲに2回続けてふれたら、葉をパタンと閉じて虫をつかまえるよ。巨大なハエトリグサに人間がおそわれる…SF映画の題材にもなったくらい、有名な食虫植物。日本で自生している種類には「ムジナモ」があるよ。
代表例「サラセニア」
葉が筒状になった「サラセニア」。筒の中は消化液がたまり、すべりやすく、下向きに毛が生え、穴に落ちた虫はにげることができない(スズメバチが、中から葉をかじって穴をあけ、にげた例はある!)。同じ落とし穴式は、他に「ウツボカズラ」「ヘリアンフォラ」があるよ。
代表例「モウセンゴケ」
葉に生えた毛から、ねっとりした液を出して虫をつかまえる「モウセンゴケ」。モウセンゴケのなかには、つかまえた虫に半日くらいかけてゆっくり葉をまきつけていく、ユニークな動きをする種類もあるよ。同じねばりつけ式は他に「ムシトリスミレ」「ドロソフィルム」「ビブリス」がある。
代表例「タヌキモ」
食虫植物は水の中にもいて、ミジンコやタニシのこどもなどを食べているよ。タヌキモは“すいこみ式”といって、茎に、ごく小さな袋がついていて、その入り口に内側に開くとびらがついている。そこにふれた虫を、スポイトのように水圧を利用してすいこんでしまう。日本で自生している種類は他に「ミミカキグサ」がある。
食虫植物も、他の植物と同じように光合成をしているから、虫をつかまえられなくても飢え死にすることはない。でも、野生の食虫植物は、他の植物と競合しない、栄養のまずしい土地に生えているために、虫を食べて栄養をおぎなっているんだよ。
食虫植物はたんぱく質に反応して消化をはじめるから、原理的には人間も食べられるよ。人の肉もたんぱく質だからね。でも、人を食べられるほど大きな食虫植物はいないから安心して! 日本で生えている食虫植物は数センチくらいの大きさ。主にハエ、ハチ、チョウ、毛虫などの小さな虫を食べているよ。
以前、サラセニアにつかまったスズメバチを見たことがあるけど…葉っぱの中で、ブーンブーンと振動するスズメバチのようすはこわかった! いっしょに見ていたハチの専門家は「これは、かなり苦しんでいると思いますよ…」って言ってたなぁ。一説によると、サラセニアの蜜には麻酔成分がふくまれていて、虫がよっぱらったような状態になって落ちてしまうらしいけど、本当だったら安らかに死ぬ虫もいるのかもしれないね…。
日当たりのいい湿地帯で、栄養のまずしい土地。局所的に生えているので、はじめての人は成東・東金食虫植物群落(千葉県)などの管理された自生地に行くのがおすすめ。その他、尾瀬(福島県・新潟県・群馬県)、赤城山(群馬県)、雲竜渓谷(栃木県)、志賀高原(長野県)、五色沼(福島県)、葦毛湿原 (愛知県)、大雪山(北海道)などにも自生しているよ。全国の植物園で夏に開かれる「食虫植物展」に出かけるのもおすすめ。ふつうには見られないめずらしい種類や解説を聞きながら捕食のようすを見られたりするよ。
この食虫植物は、
どうやって虫をつかまえるのかな?
下の4つの中から答えをえらんでね。
1.はさみこみ式 2.落とし穴式 3.ねばりつけ式 4.すいこみ式
1.はさみこみ式 2.落とし穴式
3.ねばりつけ式 4.すいこみ式
正解:2.落とし穴式
これは「ウツボカズラ」という種類。「サラセニア」と同じく筒のような形をしていて、蜜を分泌して虫をさそう。袋の中はツルツルしているから、落ちてしまった虫は、はい上がることができない!
正解:3.ねばりつけ式
これは「ムシトリスミレ」という種類。スミレみたいなかわいい花をさかせるけど、葉や茎からねっとりした液を出し、くっついた虫をそのまま養分として吸収してしまうよ。
正解:1.はさみこみ式
これは「ムジナモ」という種類。池や沼などの水にうかんで育つ。ハエトリグサと同じ二枚貝の形をした葉が輪状についていて、葉の内側に生えたトゲにふれた虫や小動物をはさんでつかまえるんだ。
監修:木谷 美咲
食虫植物愛好家・文筆家
食虫植物を中心にエッセイ、実用書、絵本、小説を執筆。メディア出演やイベント・展示会・講演会など広く活動している。著書に『大好き、食虫植物。―育て方・楽しみ方』(水曜社)など。
公式サイト
http://kiyamisaki.wix.com/syokuchu
ブログ
http://ameblo.jp/magicalplants/