「ふしぎ」を見に行こう

「ふしぎ」な地形

地球のダイナミズムが
生んだ絶景ぜっけい
「カルデラ」のふしぎ

山にある大きくて丸いくぼんだ場所「カルデラ」。
キレイな湖ができていることも多いよ。火山の大噴火ふんかに関係しているらしい。
地球のダイナミズムが生んだ絶景!「カルデラ」のふしぎ

屈斜路湖(北海道弟子屈町)

  • お出かけするときは事前に災害情報さいがいじょうほうや交通情報じょうほうなどもチェックしましょう。

探検たんけんメンバー

  • 隊員はると
    ふしぎ探検隊たんけんたいが行くよ!
    隊員はると
  • 中田節也先生
    この人に聞いたよ
    火山を研究している
    中田節也なかだせつや先生

「カルデラ」って何? どうやってできたの?

  • 先生は世界のいろいろな火山を見たことがあるんでしょ? ぼくも火山を見に行くことはできる?
  • もちろんだよ。活発な火山の火口には近づかないほうがいいけど、遠くからながめられる火山の景色もあるから。たとえば、湖になっていることも多い「カルデラ」は、緑や紅葉こうように囲まれた美しい景色を楽しめる場所が多いよ
火山が生んだ美しい「カルデラ」の景色

画像提供:洞爺湖有珠山ジオパーク推進協議会

  • わぁ! きれい! この湖のあるところがカルデラなの?
  • うん。カルデラはスペイン語で「なべ」という意味で、火山の噴火ふんかによって大きく丸くへこんだ場所のことを言うんだ。そこに雨水がたまって深い湖になっていることが多い。これは北海道の洞爺とうや湖というカルデラ湖だよ。
上空から見たカルデラ湖
(北海道・洞爺とうや湖)

画像提供:洞爺湖有珠山ジオパーク推進協議会

  • 深いおなべみたいな形をしているんだね。火口とはちがうの?
  • カルデラは火口よりもサイズが大きいよ。大きなカルデラはたいてい、いくつもの山が連なったところで起きているんだ。長い年月の間に山々の地下に大量のマグマがたまり、それが一気にき出す超巨大噴火ちょうきょだいふんかで中がカラになり、天井てんじょうくずれ落ちる。そして地上にへこんだ部分=カルデラができるんだ。
カルデラのでき方
リングじょうれ目から噴火ふんか
噴火ふんか
陥没かんぼつによりカルデラ形成
の断面イメージ)
  • 大きな噴火ふんかが起きたんだね。いつごろに起きたの?
  • たとえば熊本くまもと県の阿蘇あそカルデラは、約27万年前から約9万年前にかけて、4回も超巨大ちょうきょだい噴火ふんかが起きてできたものだよ。
阿蘇あそカルデラ
  • そんな大昔に!? 大きさはどれくらいあるの?
  • 阿蘇あそカルデラは18キロメートル × 25キロメートルくらいの楕円だえん形をしている。世界で一番大きなカルデラはインドネシアにあるトバカルデラで、100キロメートル × 30キロメートルくらいもあるよ。
  • うわー大きい!

カルデラはどこにある? 火山のめぐみとは?

  • カルデラはどこに行けば見られるの?
  • 日本では北海道・東北・九州に多いよ。火山の分布ぶんぷと関係しているんだ。下の絵の三角でしめしたところが主要なカルデラがある場所だよ。
火山やカルデラのある場所

プレートがぶつかり合うところでは、一方が他方の下にもぐりこむ。そのしずみこんだプレートが100〜150キロメートルくらいの深さに達したところでマグマが作られ、その上にあたるところに火山はできる。火山は海溝かいこうにほぼ平行して分布ぶんぷしていて、海溝かいこう側の火山を連ねる線を「火山フロント」という。

  • 日本には火山が多いの?
  • 火山は太平洋を取りまくようにほぼまんべんなくあるから、日本に特に多いわけではないよ。日本やインドネシアのように人口が集中している地域ちいき噴火ふんかすると目立つから、火山国と言われたりするんだ。
  • 噴火ふんかのニュースを見ると「火山ってこわい!」と思っちゃうことも。
  • 噴火ふんかは見た目に衝撃しょうげき的だから印象に残りやすいけれど、火山の一生の間で、噴火ふんか一瞬いっしゅんのこと噴火ふんかによって火山は成長し、高い山に雲がぶつかって雨がり、火山灰かざんばいがつもってできたゆたかな土壌どじょうが水をたっぷりふくんで、いろいろな植物が育つんだ。
  • そうなんだ! 火山があるおかげで、ぼくたちの生活がゆたかになっていることもあるのかな?
  • うん、火山のめぐみはいっぱいあるよ。たとえば今回紹介しょうかいしたカルデラのように、火山は美しい景観を作り出してくれる。日本の国立公園の半分以上は火山地域ちいきだし、世界的にも有名なナショナルパークや世界自然遺産いさんの多くは火山に関係しているよ。
  • へぇ! すごい!
  • 火山を作るマグマの活動は、いろいろな鉱物資源こうぶつしげんも生み出してくれる。オリンピックのメダルに使われる金・銀・どうも、ダイヤモンドもそう。火山のおかげで温泉おんせんを楽しめたり、地下の熱を利用して発電できたり、火山の土は平地よりもミネラル分が多いため、おいしい野菜がとれたりもするよ。
火山のめぐみ
  • 火山は人の生活と関わりが深いものなんだね。いろいろな火山のストーリーや歴史について、もっと知りたくなっちゃった。カルデラも見に行ってみるね!
  • 活火山(おおむね過去かこ1万年以内に噴火ふんかした火山および現在げんざい活発な噴気ふんき活動のある火山)は突然とつぜん噴火ふんかする可能性かのうせいもあるので、もし活火山の火口に近づく場合は、事前に災害情報さいがいじょうほう避難ひなん場所を確認かくにんし、安全を十分に確保かくほしましょう。

日本の美しい「カルデラ」の景色を見に行こう!

一度は見てみたい、日本の代表的なカルデラの景色を紹介しょうかいするよ。

※お出かけ前には災害情報さいがいじょうほうや交通情報じょうほう施設しせつ営業情報えいぎょうじょうほうなども確認かくにんしましょう。

  • 洞爺とうや

    洞爺湖 画像提供:洞爺湖有珠山ジオパーク推進協議会

    洞爺とうや

    約11万年前の超巨大噴火ちょうきょだいふんかによって形成されたカルデラに水がたまってできた湖。有珠山うすざんや湖にうかぶ中島を一望できるサイロ展望てんぼう台からのながめは特に人気。

    住所:
    北海道洞爺湖町・壮瞥町
    関連サイト:洞爺湖有珠山ジオパーク
  • 摩周ましゅう

    摩周湖 画像提供:弟子屈町

    摩周ましゅう

    屈斜路くっしゃろカルデラに隣接りんせつして形成された小さなカルデラにできた湖。青くんだ湖水は世界有数の透明とうめい度。隣の屈斜路くっしゃろ湖は日本最大のカルデラ湖。

    住所:
    北海道弟子屈町
    関連サイト:弟子屈なび
  • 十和田とわだ

    十和田湖 画像提供:十和田市

    十和田とわだ

    約5万5千年前から1万5千年前にかけて起きた超巨大噴火ちょうきょだいふんかによって形成されたカルデラにできた湖。そのカルデラ湖が氾濫はんらんして地表をけずってできた奥入瀬渓流おいらせけいりゅうのながめも美しい。

    住所:
    青森県十和田市、秋田県鹿角郡小坂町
    関連サイト:十和田湖国立公園協会
  • あしノ湖

    芦ノ湖 画像提供:箱根ジオパーク推進協議会

    あしノ湖

    箱根火山で約20万年前前後に形成されたカルデラの中を流れていた早川が、約3千年前の噴火ふんかの時に土砂どしゃくずれによってせき止められてできた湖。富士山ふじさんも望める景勝地。

    住所:
    神奈川県箱根町(大観山展望台)
    関連サイト:箱根ジオパーク推進協議会
  • 阿蘇あそカルデラ

    阿蘇カルデラ 画像提供:阿蘇ジオパーク推進協議会

    阿蘇あそカルデラ

    約27万年前から約9万年前にかけて起きた4回の超巨大噴火ちょうきょだいふんかによってできた。ダイナミックな火山地形と火砕流かさいりゅう堆積物たいせきぶつが作るなだらかな草原の台地とのコンストラストが美しい。

    住所:
    熊本県阿蘇市山田2090-8(大観峰展望所)
    関連サイト:阿蘇ジオパーク
  • 錦江湾きんこうわん湾奥部わんおうぶ

    錦江湾(湾奥部) 画像提供:鹿児島市

    錦江湾きんこうわん湾奥部わんおうぶ

    約2万9千年前の超巨大噴火ちょうきょだいふんかによって形成された姶良あいらカルデラに海水が流れ込んでできたわん桜島さくらじまの景色と合わせて自然のダイナミズムを感じたい。

    住所:
    鹿児島県鹿児島市、姶良市、霧島市、垂水市
    関連サイト:桜島・錦江湾ジオパーク
中田先生からのメッセージ
  • 火山やカルデラの魅力みりょくは、地球のダイナミックな動きを感じられるところ。「どうしてできたんだろう?」と想像そうぞう力をはたらかせてみよう。火山のリスクだけでなく、めぐみやそこで発達した歴史文化にも目を向け、火山のある国で生きていくための知恵ちえ防災ぼうさい上の知識ちしきも身につけてほしいな。
まとめ
  • カルデラは、主に火山の噴火ふんかによってできた丸く大きくくぼんだ地形。
  • くぼんだところに雨水がたまってカルデラ湖ができる。
  • 火山のこわさ・めぐみの両面を知ることで知恵ちえ知識ちしきを深めよう。

Profile

中田節也

中田節也なかだせつや

火山研究者

防災科学技術研究所 火山研究推進センター長。1991年からの雲仙普賢岳の噴火をきっかけに火山噴火の研究に従事。1995年から東京大学地震研究所助教授。1999年から同大学教授。地震研究所では雲仙科学掘削プロジェクト(普賢岳火道掘削)で普賢岳の火道から岩石採取に成功し、噴火のメカニズムを明らかにした。専門は火山岩石学・火山地質学。著書に『Q&A 火山噴火 127の疑問 噴火の仕組みを理解し災害に備える』(講談社ブルーバックス)がある。
Webサイト
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/people/nakada/00NakadaLab/index2J.html
防災科学技術研究所
http://www.bosai.go.jp/