
「一生幸せでいたかったら、釣りを覚えなさい」ということわざがあります。釣りは老若男女が楽しめて、でも自然が相手だから奥が深い。釣れた時の喜び、釣れなかった時の悔しさ、一生ものの学びの機会がそこにはあります。
そして、川だけでなく海でも楽しめて、子どもが成長すれば、出掛けられる釣り場や挑戦できる魚の種類もどんどん増えていきます。もちろん、難しいことも増えて、「どうやったら釣れるんだろう?」と創意工夫をより求められる機会も。釣った魚を自分でさばいて食べる楽しみもあります。大人だっていつはじめても遅くありません。自分の体力に合わせて一生楽しみ学べる。それが釣りの面白さです。
花菜ちゃん
(小学2年生)
お母さん
須崎隆さん
川遊びの楽しさを伝えている須崎隆さん。川に魚を増やす「漁協」の仕事もしている。
ピストン釣りは、夏にバーベキューや川遊びを楽しむ人がたくさん集まるような、山が近くて水が澄んでいる川の中流域で楽しむことができる釣り。手軽な道具で楽しむことができ、子どもでも簡単にできるので、川遊びのアクティビティに最適です。
また、ピストン釣りでは自分でエサをつかまえて、そのエサで小魚を釣ります。魚は川のどんな場所にいるのか? どういうものを食べたがっているのか? ピストン釣りをすると、遊びながら生きものの暮らしぶりが学べます。釣り堀など、放流された魚を売っているエサで釣る釣りでは経験できない、自然界の命の繋がりを直に感じることができる。それは、子どもにとってかけがえのない経験になると思います。
どんな魚が釣れるの?
ウグイは日本中の清流にすんでいる小魚。観察用の水槽があったらじっくり見てみましょう。ふだんは群れで暮らしています。
ウグイとならんでピストン釣りでねらえる清流の魚がオイカワ。オスは夏になると虹のようなあざやかな色になります。
ピストン釣りに必要なのは、サオ、イト、ハリなどの釣り道具。エサは川で見つけます。あとは水の中に入れる川遊びのかっこうをして、暑い日も多いので帽子を忘れずにかぶれば準備オーケー。
釣りザオ
釣りザオは1.8mくらいのこわれにくいものを使います。川の近くの釣具店に1本1000円くらいの安い竹ザオが置いてあったらそれが一番。ほかには金魚ザオと呼ばれるプラスチック製のサオや、あるいは自分で手に入れた細い竹、木の枝などでもOK。
イト、ハリ
サオに結ぶイト(ミチイトという)は、ナイロン製の0.6号がおすすめ(写真右)。ミチイトはサオと同じ長さぶんだけ結びます。ミチイトの先にはハリスの付いた1〜2号の袖バリを結びます(写真左)。「号」はイトの太さやハリの大きさをあらわす単位です。
ハサミ、クリッパー
釣りをする時はイトを切るハサミやクリッパーも必要。クリッパーというのはつめきりの形をしたもののことで、釣具店なら釣り用の使いやすいものが売っています。家にある小型のハサミやつめきりを使ってもOK。
ウォーターシューズ
ピストン釣りはひざくらいまでの深さまで川に入って釣りをします。この時にサンダルだと、水の勢いで脱げてしまって、流されてしまうことがよくあります。川や海などで遊ぶ時に便利で、けがもしにくいウォーターシューズをはくのが一番。
遊漁券
川で釣りをする時は、「遊漁券(ゆうぎょけん)」という券を買う必要があります。ピストン釣りでねらうウグイなどの小魚用なら、だいたい1日500円程度。ただし小学生までは無料のところも多いです。遊漁券は川の近くの釣具店やコンビニで売っています。
釣りイトを結ぼう!
釣りをする時は、サオにミチイトを結んだり、ミチイトとハリスを結んだりして「仕掛け」を作ります。ちゃんと結べていないと、魚を釣る前にほどけてしまったりするので、しっかり練習しておきましょう。
●ピストン釣りの仕掛け
●ミチイトとハリスの結び方
道具の準備ができたら、はじめに川に入ってエサをとります。ピストン釣りに使うエサは、「川虫」とよばれる、川の中で暮らしている小さな昆虫。水の中の生きものなので、かわくと弱って死んでしまいます。つかまえた川虫はティッシュペーパを濡らしたものをしいた容器に入れたり、水で濡らした自分の腕にはりつけておきましょう。元気な川虫を使うほうが、魚もよく釣れます。
ヒラタ(ヒラタカゲロウ)
小魚が一番大好きな川虫がヒラタカゲロウの仲間。名前のとおり平べったい形をしていて、リンゴくらいの大きさのすべすべした石の裏にはりついています。
クロカワムシ
(ヒゲナガカワトビケラ)
イモムシのような形をして黒っぽいのがクロカワムシ。正式な名前はヒゲナガカワトビケラで、石の裏に小さな石の粒を集めて巣を作りその中で暮らしています。
ピンチョロ
(フタオカゲロウの仲間)
川の端や河原にある水たまりが大好きなのがフタオカゲロウの仲間。水の中をはねるように動くので、釣りをする人たちからは「ピンチョロ」と呼ばれています。
エサをとる時のヒント
川虫を探す時は、岸に近いひざくらいまでの深さの場所から、リンゴくらいの大きさの石を見つけて持ち上げてみましょう。表も裏も見ます。川虫は体がやわらかいので、見つけたらやさしく指でつまんでとるように。
クロカワムシはこんなふうに小さな石の粒を集めた巣を作っていて、その中で暮らしています。くっついている石の粒を指ではがすと、なかにクネクネと動くクロカワムシがいるのでそっと指でつかまえましょう。
エサの付け方
ハリは川虫の頭の下に引っかけるように刺します。水の中でとれないようにハリの先をしっかり通しましょう。
エサがとれたらいよいよ釣り開始。ピストン釣りには、少し波があって水がよく流れ、大人のひざくらいまでの明るく日が当たる場所がねらいめです。
浅くて流れがある場所
ピストン釣りをするのによいのはこんな場所。浅くて流れがある、明るい場所を選びましょう。
深い場所は避けよう
写真の奥に見える青いところはピストン釣りをするには深すぎます。手前の浅くて石がよく見える場所ならOK。
ベテランの釣り人も参考に!
夏にアユ釣りを楽しむ人たちが多くいる場所の近くには、ピストン釣りのしやすい浅い流れがよくあるので覚えておきましょう。
釣れない時は、場所を変えて釣ってみよう!
はじめた場所でなかなか魚が釣れない時や、同じ場所で次の魚が釣れなくなったな〜と思ったら、少し歩いてほかの場所も釣ってみましょう。新しい場所をどんどんねらうことで、チャンスが広がります。
ピストン釣りでは、サオの先を水の中に入れ、下流を向いて前後に動かします。この動きが機械のピストンの動きに似ていることが、ピストン釣りと呼ばれる理由です。
コツは全体的に低い位置でサオを動かすこと。そして、「前に出す時は、サオの先を少し持ち上げて川底にこすらないようにする」「後ろに引く時は、逆にサオの先で川底をこするようにする」。こうすると川の底近くにエサが流れて、魚が食いつきやすくなります。
魚が釣れると「ククン」と手に動きが伝わるのですぐに分かります。ハリからはずれないように、ゆっくり持ち上げましょう。
ピストン釣りは、少し練習すればけっしてむずかしくありません。ゆっくりサオを動かしていると、次々にウグイが食いついてきます。
「バーベキューや川遊びをしているすぐそばで、こんなに魚が釣れるなんて知りませんでした!」とお母さん。二人ともたくさんのウグイが釣れて大満足。子どもも大人も一緒に楽しめて、生きもののリアルな暮らしぶりも学べるピストン釣り。この夏休みに、ぜひやってみてください!
そして、釣りに興味を持ったら、ほかの釣りもどんどんチャレンジしてみましょう。川釣りなら、中流部で楽しむパンコイ釣り(パンをエサにしたコイ釣り)や、秋になれば下流部でのハゼ釣りも面白くなります。また、イワシやアジなどの食べて美味しい海の魚を、堤防や海釣り公園でのサビキ釣りでねらうのも楽しいですよ。日本は川や海などの水辺に恵まれた国。いろんな釣りにチャレンジして、家族みんなで楽しい休日を過ごしましょう。
釣りの楽しさを知ったらこちらもチェック!
さまざまな釣りのノウハウを多数掲載中!