ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論「エイムポイント」って何?
プロも実践するグリーンの読み方

2014.10.30

このところトーナメントのグリーン上でちょっと変わった動作をする選手が増えています。パッティングのラインの近くで両足を肩幅ぐらいに広げて立ち、瞑想するように考えていたかと思いきや、ボールの後ろに回り込んで腕をカップの方に伸ばして顔の前で指を立てます。その指は1本のときもあれば、2本のときも、4本のときもあり、片目をつぶって指越しにカップを眺めていたかと思うと、意を決したようにアドレスに入りボールをヒットするのです。

けっこう目立つ動作ですが、アダム・スコットやハンター・メイハン、ステーシー・ルイスといった世界のトップ選手が実際に行っているんですね。
彼らが何をやっているかというと、グリーンの傾斜を足で測り、指を使ってボールをどこに打ち出すべきなのかを決めているのです。

このグリーン・リーディングのやり方は「エイムポイント・エクスプレスリード」と呼ばれる方法で、マーク・スウィーニー氏によって開発されました。スウィーニー氏はテレビの画面上でパッティングの際のボールの軌跡を予測するソフトを提供するエイムポイントテクノロジーズ社の創設者であり、カップに向かって打つ方向と勾配、グリーンの速さによってどれぐらい曲がるかを詳細に記したエイムチャートを開発。2011年にステーシー・ルイスがこのエイムチャートを採用し、世界ランキング1位に上り詰めたことがきっかけとなり一躍脚光を浴びました。

それと共に大勢のツアープロがエイムチャートを採用するようになったのですが、複雑なチャートを使用するエイムチャートはジュニアゴルファーには難し過ぎると感じたスウィーニー氏は、誰でも簡単に実践できる方法としてエイムポイント・エクスプレスリードを開発。そのシンプルさと結果が出ることが評判となり、現在はジュニアだけにとどまらず、一般ゴルファーはもちろんのこと、世界のトップ選手にまで広がっているというわけです。

さて、このエクスプレスリードでどうやってラインを読むのかですが、両足で勾配を感じることが鍵となっています。目から入ってくる情報で傾斜を判断しようとすると錯覚で間違ってしまう場合があるので、グリーンに足を広げて立ち、その勾配が1%なのか2%なのか、あるいは4%あるのかを体で感じ取るのです。

グリーン上で仁王立ちしているゴルファーがいたら、両足への体重のかかり方で勾配を測っているのです

グリーン上で仁王立ちしているゴルファーがいたら、両足への体重のかかり方で勾配を測っているのです

このようにして勾配を測ったら、どれぐらい膨らませて打つのかを指を使って決めます。たとえば勾配1%のフックラインなら指1本ぶん右を狙う、勾配3%のスライスラインなら指3本ぶん左を狙う、といった具合です。顔の前で勾配に応じた本数だけ指を立て、距離に応じて指の片側のラインをカップの低いほうの縁もしくはセンターに合わせたら、もう片側のラインが打ち出す方向です。グリーンが速ければそれだけ曲がり幅は大きくなるので、そのぶん手を顔に近づけて調節します。

グリーン上で指を立てているゴルファーはどれぐらいカップを外して打つのかを決めているのです

グリーン上で指を立てているゴルファーはどれぐらいカップを外して打つのかを決めているのです

マーク・スウィーニー氏のグリーン・リーディング法が多くのゴルファーの心をとらえたのは、そのシンプルさもさることながら、グリーンの傾斜と速さによる曲がり方の違いを的確に示したことが大きいでしょう。速いグリーンほど曲がり幅が大きくなること、上りよりも下りの方が曲がることなど、パッティングが上手なゴルファーが経験則として持っていた情報を科学的に分析しチャートにまとめたのです。そのデータが根底にあるからこそ、ボールはカップに沈んでくれるのでしょうね。

世界中で流行しつつあるエイムポイント・エクスプレスリードですが、最近日本でも講習会が開かれるようになっているので、興味のある方はぜひ出かけてみるといいでしょう。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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