海外でプレーをすると、フェアウェイの一見物凄く良さそうなライからうまく打てず「あれっ?」なんて首を傾げることがありますが、なぜうまく打てないかというと、日本とは芝の種類が違うからです。
日本のゴルフ場では高麗芝や野芝といった和芝がよく使われていますが、海外のゴルフ場に生えているのはバミューダやティフトン、ベントグラスといった洋芝です。和芝と洋芝は特徴が異なるため、同じ打ち方では対処できないのです。
和芝と洋芝の大きな違いは生え方でしょう。高温多湿な日本の気候に合った和芝は横に広がるように成長するのに対し、寒冷地に合った洋芝は縦に成長します。そのため同じフェアウェイでも、和芝のフェアウェイは芝が薄いのに対し、洋芝のフェアウェイは芝が厚くなります。また和芝は葉が太くて硬く、刈り込むとボールがタワシの上に乗っているように浮くのに対し、洋芝は葉が細くて柔らかいので、ボールが自重で沈むのです。
和芝

葉が太くて硬い和芝のフェアウェイはボールが浮く
【野芝、高麗芝、姫高麗芝】
洋芝

葉が細くて柔らかい洋芝のフェアウェイはボールが沈む
【寒地型(関東から北) ベントグラス、フェスキューなど】
【暖地型(関東から南) バミューダ、ティフトンなど】
浮いているボールを打つのは簡単ですが、沈んでいるボールを打つのが難しいのは当たり前。日本のフェアウェイと同じようにクラブを振り下ろすと、クラブがボールにコンタクトできずダフってしまいます。和芝では多少手前からクラブが入ってもボールはそこそこ飛んでくれますが、海外では全く飛びません。洋芝ではクラブを上から入れつつも、厚い芝に潜ってしまわないよう、ターフを薄く長く取る技術が必要です。海外のトーナメントで草鞋のようなターフが取れるのはそのためなんですね。
アプローチでも難しさは同じです。グリーン周りの洋芝にあるボールは沈んでいますし、ボールの下にはぶ厚くてねばっこい芝がありますから、柔らかいタッチでボールを浮かそうとすると、クラブが振り抜けず大ダフリになってしまいます。芝の抵抗に負けないよう、強く振り抜けばボールは浮きますが、ミスを防ぐには無理に浮かそうとせず、上からクラブを入れて確実にボールをとらえ、転がして寄せることなのです。
このように和芝と洋芝では打ち方が違うので、日本の選手が海外の試合に出ると思ったようなプレーができないんですね。広い範囲を転戦するツアーともなると試合ごとに芝の種類が違いますから、それに慣れていかないと、本来の実力を発揮できません。海外のツアーに挑戦する日本のトップ選手が成績を残し始めるまで時間がかかるのは、「芝」と「長旅」という大きな問題をクリアする必要があるからなんです。
自分は海外でプレーしないから関係ないよ、という方も多いかもしれませんが、北海道のゴルフ場はベントグラスが多いので、洋芝の打ち方を知っていないと大叩きしてしまいます。また沖縄のゴルフ場には暖地型の洋芝であるバミューダ芝が多く、和芝に近いとはいえ、やはり打ち方にアレンジが必要です。
冬は休眠して茶色くなってしまう和芝は見栄えが良くないので、フェアウェイにベントグラスを採用する本州のゴルフ場も少なくありません。「おかしいな」と首を傾げて18ホール終わってしまわないように、洋芝の打ち方を覚えておくといいでしょう。