ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論「シャローイング」の正しい“意味”を
フジモンティが徹底解説!

2023.05.18


みなさんは「シャローイング」という言葉を耳にしたことがありますか? ゴルフレッスンの現場ではときどき使われる言葉で、一時期はかなり流行したこともあった「シャローイング」。現在は流行も去り、さほど話題にもならないような状況ですが、海の向こうのPGAツアーでは根強く、「シャローイング」の動作をスイングに内包している選手が数多く活躍しているのはれっきとした事実です。

日本ではどうやらその「シャローイング」の意味が誤解されているふしがあり、そのため世のゴルファーが積極的に取り入れていないのではないかと思われます。そこで今回は、この機会に「シャローイング」を正しく学ぼう! というのがテーマとなります。講師はもちろんブームの火付け役となった「フジモンティ」こと藤本敏雪コーチにお願いしました。

切り返しはシャローでも
クラブは上から下りる


― 一時期は大ブームになった「シャローイング」ですが、最近は「二重振り子」や「引いて引く」に押され気味なのが現実です。もちろんゴルフ理論は流行では語れませんが、日本のゴルファーが間違った理解をしているところに、「シャローイング」がスルーされている原因があると思うのですが、いかがですか?

藤本 結局シャローというと「浅い」というネガティブな印象がありますし、クラブがかなり低い位置から緩やかに下りてくるイメージが強いのではないかと思います。中には横振りのような動作を「シャローイング」としてSNSにアップしている選手もいたりして、世のゴルファーが正しく理解するには難しい環境にあるのは確かですね。

間違ったシャローイング

― クラブヘッドがあのような低い位置からアタックしたらラフで打てないのではないか、なんて声も聞こえたりします。

藤本 それに関して言うと、クラブは絶対に上から下りないといけないんです。シャローイングの動作が入っている海外のトップ選手のスイングは、みなクラブが上から入っています。クラブヘッドが低い位置から下りてくるのではなく、アドレスのシャフトプレーンがあって、それに対して、切り返したときにプレーンと平行にくるのがシャローイングの動きなんです。

正しいシャローイング


ハンドパス(手の軌道)

藤本 トップから手を後ろに落として、低い位置からクラブを下ろしてくると勘違いしている方がいますが、たとえばビクター・ホブランド選手は切り返しで手の位置は前で、手の軌道としてはアウトサイドインです。そのぶん切り返したときにクラブが倒れてシャローな位置に来て、そのまま体を回すことでインパクトを迎えます。

― クラブヘッドはかなり上から入って来ますよね。

藤本 もちろんです。「シャローイング」とは全体のことを言っているわけではなく、重要なのは切り返したときにいかにいいポジションに入っているか、だけなんです。いいポジションに入れば、インパクトに向けて何もしなくてもジャストミートできます。切り返しから体を回し続けるだけでよく、このときちょっとダウンスイングのプレーンが低い人だったらドロー系の球になりますし、クラブが高い位置から来ればフェード系の球になるということです。

シャローイングはあくまでも
スイングの一部に過ぎない


― ということは、切り返しのときのクラブのポジションが「シャロー」なので「シャローイング」と呼ばれているという理解でいいですか?

藤本 その通りです。逆に、クラブが立って下りてくる、いわゆる「スティープダウン」になるとインパクトで合わせにいく動きが必要になりますから、手元が浮いたり、体が起きたりということが起こります。当然ミスの可能性も高くなりますから、切り返しでよいポジションに入れて、そこから何もしないという動作の優位性はおわかりいただけるかと思います。

― 師匠のジョージ・ガンカス氏も「シャローイング」という言葉は使いますか?

藤本 使いますが、本当に切り返しだけなんです。切り返しでクラブがちゃんといいポジションに入るか入らないかだけしか言わないですね。そこから勝手に戻ってくるスイングが彼の理想です。

もう少し具体的に言うと、アドレスのシャフトラインに対して、理想はヘッドとシャフトと左腕がほぼ一直線に重なること。切り返しでスイングを見ているんです。途中がどうこうではなく、トップから切り返したときのポジションが重要なんです。

フラットスイングと
シャローイングの違いは?


― フラットスイングと混同されている場合がありますが、違いは何でしょう?

藤本 「フラットスイング」というのは、全体的にクラブが横に動くようなスイングを指していると思いますが、それでは打てないんです。にもかかわらず、それをシャローイングだと思っている方がけっこういます。

藤本 だから僕は「シャロースイング」とは言わず、あくまでも「シャローイング」といいます。スイング全体を指す言葉ではなく、切り返しのアクションの呼び方なんですよ。僕の好きな選手はクラブが上からドーン! と入ってきますが、これが理想です。

逆に言うと、切り返しでシャローになると上から叩けるんです。これがドライバーになるとクラブが長いから自ずと軌道がフラットになり、比較的低い位置からボールにアタックできるということです。

― 直接お話を伺って、だいぶ理解できたように思います。

藤本 まとめると、クラブにはライ角があり、構えたときにシャフトは斜めになります。その角度に沿ってクラブを斜めに振る必要がある、という事実が根底にあります。そのためには、切り返しでシャローなポジションにもっていき、そこから何もせず体を回してインパクトに向かうということです。

もっともダウンスイングでは何もできませんので、バックスイングで腕のローテーションを入れて、クラブをシャローな位置に持っていくイメージです。クラブがプレーンより少しアップライトに上がり、切り返しでシャローなポジションに入れ、ダウンスイングでは何もせず体を回してインパクトを迎えるのが理想です。

藤本 敏雪

1982年京都府生まれ。京都産業大学ゴルフ部で主将を務め、卒業直後にレッスンの道を志す。2018年にジョージ・ガンカスコーチの存在を知り、日本の常識を覆すスイング理論や情熱的なレッスン動画に魅了され自身のゴルフに採り入れるとスイングが劇的に改善。現在はガンカス本人から学んだGeorgegankasgolf理論をベースに、全国を飛び回ってアマチュアを指導中。「プロをも超えるようなゴルフプレーヤー」になってもらうことを目標に、美しく、淀みのない心地良いスイングの領域を目指している。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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