バックスイングでクラブのシャフトが飛球線と交差することを「シャフトクロス」と呼びます。実はこのシャフトクロスには賛否両論あって、「気にしなくていい」というコーチがいる一方で、イマドキのレッスンではその対極にあるレイドオフの形を教えるというのが普通です。
「一体どっちなの?」という感じですが、ショートバックスイングが主流のプロツアーでは少数派になっていますし、美しいスイングを求めるゴルファーの間では忌み嫌われる形であることは間違いありません。というわけで、今回はこのシャフトクロスについて深掘りしてみようと思います。
ダメなシャフトクロスと
良いシャフトクロス。違いは何?
― アマチュアゴルファーのほとんどがシャフトクロスなのは紛れもない事実だと思いますが、そもそも、シャフトクロスはスイングに悪影響を及ぼす良くないものなんですか? それとも気にしなくても大丈夫ですか?
小野 ありかなしかで言うと「あり」ですね。ただし「ある条件」のもとでは、という但し書きがつきます。
― その条件とは何ですか?
小野 クラブの重心がいきなり外側に外れて、その流れから巻き込むようにバックスイングした結果生じるシャフトクロスは良くありません。
フェースが開いてしまっているため、ダウンスイングで無意識のうちに閉じるような動きになり、アウトサイドインのカット打ちになりやすいからです。クラブの重心も飛球線のほうに来てしまっているので、ダウンスイングで管理しにくいですね。

― それが「ダメなクロス」ですね。「良いクロス」はどんな感じですか?
小野 始動でクラブがある程度いいポジションに上がり、フェースも開いていない状態から体が回った結果、シャフトがクロスの位置に入るのはOKです。この場合はクラブの重心が管理できているので、ダウンスイングに悪い影響を及ぼしません。

― 「ダメなクロス」は修正が必要として、「良いクロス」の場合は何か注意点がありますか?
小野 人それぞれ可動域が違うので、バックスイングで捻転を十分作れない場合もありますが、そういう場合は多少フェースが開いてしまいます。ここからのダウンスイングで回転が足りないと、クラブがインサイドから下りてあおるような動きになるので、しっかり回転することが大事です。
要はバックスイングで右に回転したのと同じぶん、ダウンスイングでは左に回転しなくてはならないということです。左への回転量が足りないとクラブが手前に落ちてしまいますので、とにかく右と左への回転量を同じにすることがポイントです。そうすればスイング軌道の最下点が管理できますし、ボールのあるところに持ってこれます。

シャフトクロスにならない
2つの重要ポイント
― シャフトクロスにならないためにはどうすればいいですか?
小野 バックスイングで胸をしっかり回転することが大事ですね。胸の回転量が不足すると腕が先行して体から外れてしまいます。これだとかつぎ上げるような動きでシャフトクロスになりますし、クラブを下ろすスペースがないので外からしか下ろせなくなります。

胸の回転量を増やすためには、左右の手にクラブを1本ずつ持って、クロスしないように上げるといいでしょう。2本のクラブの平行関係をキープしながら上げると、胸はしっかり回転します。
クラブ2本のドリル

― 手が先行しないように気を付けることですね。他にはありますか?
小野 始動で手元が橈屈(とうくつ)方向に動くのもシャフトクロスの原因になります。アドレスの時点で手首が撓屈側に折れていると、なおさらかつぐようなバックスイングになりやすいので、スタートポジションで尺屈(しゃっくつ)方向にしておきたいですね。

撓屈からの流れ

尺屈からの流れ

― 掌屈や背屈に比べて尺屈や撓屈はあまり聞きませんが、大事なところですね!
小野 バンカーショットやロブショットを除いて、ゴルフでは基本、撓屈動作は使いません。尺屈がピンと来なければ、クラブを持ち上げてみるといいでしょう。重さで自然に尺屈しますし、橈骨側にテンションを感じると思います。
このテンションを感じると、クラブフェースの向きを感知しやすくなりますし、尺屈を意識してバックスイングするとシャフトクロスしないどころか、むしろレイドオフになるのでぜひ試してみてください。