ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論仕組みがわかれば簡単!
ドライバーの打ち方とうまく打つ極意

2022.08.10


「ドライバーが苦手な人、手を挙げて!」と聞いたら、多くのゴルファーが手を挙げることでしょう。「得意です!」と胸を張って言える人は少ないと思います。

テクノロジーの劇的な進化で爆飛びするようになったと言われるドライバーですが、アマチュアはいまひとつその恩恵を受けていないのが現実ではないでしょうか。いったいなぜそういうことが起こるのか、トッププロはガンガン飛ばしているのになぜ一般ゴルファーはそうならないのか。

今回は作り手であるクラブデザイナーの宮城裕治さんにお話を聞きつつ、その謎に迫っていこうと思います。

クラブデザイナーの宮城裕治さんに聞きました。

イマドキのドライバーの宣伝文句は「飛ぶ!」の一色で、実際プロの飛距離は伸びていると思うのですが、アマチュアはその限りではないと思います。それどころか「ドライバーが打てない」という声もよく聞くのですが、どうしてこういうことが起こるのでしょうか?

最新ドライバーはダウンスイングで
クラブヘッドがいなくなる?

宮城 3~4年前からドライバーというクラブの概念が変わって、スピン量を減らす方向にますます進んでいるんですが、複雑な構造のカーボンヘッドを一般のアマチュアが使い切れていないということですね。ドライバーは14本のうち一番長くて一番フラットで一番ヘッドスピードが速い。さらにはヘッド長も一番長い。つまりは一番ダウンスイングで「いなくなる」特性を持っているわけです。

― 「いなくなる」というのは、ヘッドがどこにあるかを把握できなくなるということですか?

宮城 そうです。昔のクラブは製造技術が未熟だったので、ヘッドがいなくならなかった。ところが現在はヘッドの一か所だけ重くしたり、重たいところと軽いところの差をつくったり、内部の構造や材料の比重で質量のバランスを極端に変えているので、とにかく複雑なんです。人間はヘッドの存在をシャフト軸で感じているのですが、そこからはみ出してしまうと構造が複雑なゆえに余計な部分がついてこず、存在が消えてしまうのです。

― 構造が複雑だと挙動も複雑になるんですね。ということは、オンプレーンに振るしかないってことでしょうか?

宮城 そうなんですけど、オンプレーンに振ったとしてもヘッドの重心はプレーンの外にあるわけですから、完全ではありません。クラブを自分のほうに引っ張って、なるべく重心をオンプレーンに近づけたほうがいいでしょうね。今のクラブはドアスイングではうまく打てないんです。

― デザイナーという立場から「こう打って欲しい」というスイングはありますか?

宮城 ダウンスイングで胸を下に向け、手元を低く下ろしてくればシャフトに負荷がかけられますし、ヘッドはプレーン上の高い位置にキープできますから、どこにヘッドがあるのかを把握できます。逆に手が浮いてしまうとヘッドが下がってプレーンから外れ、ヘッドはどこかに行ってしまいます。

手元を下ろせばクラブヘッドはプレーン上の高い位置にキープできるので、ヘッドがどこにあるのかを把握できる。

手元が浮くとクラブヘッドは落っこちて、把握できなくなる。

イマドキのドライバーは
フェースオープンで当てるのが常識です

― オンプレーンに振って、なおかつクラブが外に振られないようにすればいいんですね。球が上がらないという声もよく聞きますが、それはどうすればいいでしょう?

宮城 スピン量が足りていないんです。いまの低スピンのドライバーでいちばん恩恵を受けたのはシニアプロで、彼らはかつてフケ球のスライスを打っていたんですよ。パーシモンはそうしないと球が上がっていきませんでしたから。要はスイングを変えずにスピンを減らして飛ばすことができたわけです。

しかし、そういう技術のないアマチュアが低スピンのドライバーを打つと失速してしまい飛ばないんです。ボールも低スピンなのでなおさらですね。そこでどうするかというと、フェースオープンがひとつの答えです。トップオブスイングでのフェースはシャットで、フェースオープンのまま当てるのが最新のスイング理論で、実際世界のトップ選手はそうやってフェードボールを打っています。これは道具が要求する打ち方ともいえますし、それができている人が活躍しているんです。

― トップオブスイングでシャット(閉じる)というとフェースが上を向いた状態ですね。そのまま何もせず下ろしてきて、フェースオープンでインパクトすればいいわけだ!

宮城 はい。いまはインパクトオープンがノーマルで、インパクトスクエアだと左に飛んでしまいます。軌道がフラットでフェースを開いて当てる人は球が高く上がりますが、アップライトに閉じて当てる人は全然上がらない、それが最近のドライバーの傾向であり弊害ですね。フェースを開いた状態で当てたら無理につかまえずフェードを打つことがコツです。

― スクエアに当てるとうまくいかないのは皮肉ですね。以前は一生懸命スクエアに当てるよう練習していたわけですから。

宮城 バックスピンは浮力ですから、ある程度、具体的には毎分2400回転程度は必要なんです。初速が足りないアマチュアがこれを確保するにはロフトを上げるのが手っ取り早く、12度でも足りないぐいらいです。最新モデルの3番ウッドや5番ウッドをティーショットで使うと驚くほど飛びますが、あれは16度とか19度というロフトのおかげなんです。

最初の1発がうまく打てたクラブが
飛ばせるクラブ

― 間違っても9度などというロフトを選ばないことですね。シャフトに関してはどうですか?

宮城 シャフトに飛距離性能はない、というのが私の考えなんですが、それはつまり「ジャストミートできれば飛ぶ」ということなんです。シャフトに飛ぶ飛ばないがあるのではなく、その人がジャストミートできるシャフトを使えば飛ぶし、ミスヒットしないという安心感があれば自然にスピードが出てきます。ですからクラブフィッティングの際は、最初の1発で判断してください。その1発がうまく打てれば合っているということだし、ダメなら次に行くべきです。2発目からは合わせてうまく打ってしまいますから参考になりません。コースでは必ず1発目のミスがでますから。

― なるほど! いつも通りに振ってジャストミートできるのが自分に合ったシャフトなんですね。試打は1発だけでいいとは目からウロコです。

宮城 何発も打って最大飛距離が出たとしても意味ないんですよ。たまたまオンプレーンで振れたときにいままでより30ヤード飛んだとしても、それが1ラウンドで1回も出ない可能性があります。だったら5~10ヤード飛ぶショットが出る確率を上げたほうがいいじゃないですか。飛距離は平均値で考えてください。

― 造る側からのお話を聞くと、ドライバーの打ち方がだいぶ見えてきた気がします。基本はオンプレーンで、フェースはシャットに使ってややオープンに当てる。購入の際はロフトのあるものをチョイスし、試打は1発で判断して決める。そんなところでしょうか。

宮城 スイートスポットのちょっと上の、ややトウ寄りの部分で打つと最も飛びますよ。狙って当てるのは難しいですが、フェースに厚みがあるドライバーだとそこに当たる確率が高くなりますから、知っておいて損はないと思います。

重心のやや上のトウ寄り、重心から約10ミリぐらいの場所に当たると最も距離が出る。

宮城 裕治

一世を風靡したウェッジ『MT-28』を設計したクラブデザイナー。ヨネックス時代の石川遼選手のクラブをドライバーからパターまで専属で製作し当時の活躍に貢献。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。


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