ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論読み返すほど発見がある!
『モダン・ゴルフ』のスイング理論

2020.11.05

ベン・ホーガンの『モダン・ゴルフ』といえば、言わずと知れたゴルフの名著。1957年の出版以来、いまなお世界中のゴルファーが購入し、専門家たちから熱狂的に支持されるスイング理論のバイブルですが、読み返せば読み返すほど新しい発見があるのがこの本の魅力でもあります。

驚くべきなのは、道具が小振りなパーシモンヘッドから大型チタンヘッドへと大きく変わった今でも、そこに綴られているスイング理論の多くが十分通用するという事実です。
「鉄人」ベン・ホーガンは普遍的なメソッドを残したといえますし、そこに到達していたからこそ20世紀半ばのゴルフ界で、圧倒的な強さを誇ったのでしょう。

ガラス板の内側でスイングを完結させよう

ペン画の挿絵が洒落ている『モダン・ゴルフ』で最も強烈な印象を残すのがガラス板のイメージ。アドレスしているホーガンの両肩にガラス板が乗っていて、ホーガンは「バックスイングのすべての段階で、両腕とクラブがガラスの内側にとどまっている」と説明します。
腕を振り上げたがるアマチュアゴルファーにとって、このバックスイングは「あり得ない」動きでしょう。ですが、イマドキのクラブを使いこなすにはホーガン流が理にかなっていて、これだけでもやってみる価値があります。

またホーガンは「ダウンスイングではこの平面の角度がさらに浅くなる」と言っているのですが、これはまさしく「シャローイング」であり、世の中のゴルファーが身に付けようとやっきになっているクラブの軌道です。
ガラス板の内側で完結するスイングはまるでテニスのようなイメージであり、腕をリフトアップする感覚はゼロに近いものです。ボールが地面にあるから前傾し、そこから胴体で腕を動かすからトップオブスイングに高さが生じていると考えると、ゴルフスイングはかなりシンプルになるでしょう。

あまりにも有名な両肩にガラス板を乗せたイラストだが、アマチュアゴルファーが「ガラス板の内側でスイングを完結」するのは極めて稀だと言わざるを得ない。しかしながら、ヘッドが大型化した現代ゴルフではその重要性がますます増しているし、実行できればゴルフがやさしくなるはずだ。


興味深いのはホーガンが、バックスイングを後方へのスイング、ダウンスイングおよびフォロースルーを前方へのスイングと表現していることです。ボールを中心に「右と左」ではなく、体を基準に「後ろと前」ととらえているところにも達人たるゆえんがあるのかもしれません。

胴体がクラブをスイングするのです

ガラス板の内側で行うコンパクトなスイングでボールを飛ばすには、下半身の動きが鍵となります。ホーガンは第3章でその重要ポイントを語っていて、アドレスとバックスイングにおいて地面に対する右脚の角度が変わらない、と明かしています。
加えて、後ろへスイングするときは左ヒザと右ヒジが曲がり、前へスイングするときはまず右ひざが曲がり続いて左ひじが折れると指摘し、この動きを連続して行うことで「胴体がクラブをスイングしている感じ」が得られると強調するのです。

「胴体のスイング」を覚える
連続素振り

後方へのスイング

前方へのスイング

右脚をアドレスの状態にキープしながら左ヒザを曲げる動きは、現在世界のトップにいる飛ばし屋の選手に多く見られるもので、その後左右の脚を入れ替えることで体の強烈な回転を生み出します。中心軸をブラさずに体を回転し、その回転によって腕を動かすメカニズムは、イマドキのスイングに他なりません。

それにしても60年以上も前に、最新のスイングを提唱していたのですからベン・ホーガン恐るべしです。今回紹介したものだけでなく、ある程度ゴルフスイングを学んだ者なら必ずハッとさせられる記述が随所にあるので、ぜひご一読をお勧めします。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。


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