ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論右ひざが前に出る癖を直す!
伸び悩みを解消する3つのポイント

2020.06.04

小柄な女子プロが筋骨隆々の大男を軽々とアウトドライブしたり、運動神経抜群の男性がゴルフだけはうまくいかない、ということが普通にあるのがこのスポーツの不思議なところ。となれば運動神経や筋力とは別の部分にコツがあると考えざるをえませんが、それが何かがわからないから世のゴルファーは悩んでいるわけで、ならば直接女子プロに聞いてしまおうというのが今回の趣旨。美しいスイングで定評のある瀬戸瑞希選手に、ゴルフのコツを聞きました。

― 力があっても飛ばなかったり。キャリアが長いにもかかわらず上手くならない人が多いのがゴルフの不思議なところですが、その理由をどう考えますか?

瀬戸 力任せにクラブを振ろうとするからかもしれませんね。私自身もつい手に力が入ってしまうことがありますが、そうなるとうまく打てませんから、力ではないコツをつかむことが必要だと思います。

― どうすれば「手打ち」になりませんか?

瀬戸 実はアドレスが大事で、アマチュアの多くが構えたときに肩が上がってしまっているんです。そうなると体と腕が分離してしまって、手先だけでクラブを操作してしまうんです。

― 体の動きが手や腕に伝わらなくなるんですね。

瀬戸 その通りです。私自身も経験があるんですが、気付かないうちに肩が上がってしまうものなんですよ。手打ちになって調子が悪くなるんですが、コーチに指摘されて正しいポジションに肩が入るとショットが元に戻ります。

ですからみなさんも、アドレスで肩を下げるように意識するといいと思います。肩が上がると首が短く見えますが、あれはNG。肩を下げて首を長くしてから前傾姿勢をとるといいでしょう。そのときにお尻の位置を高くすると下半身が余計な動きをしなくなります。

アドレスが正しくとれると
手打ちになりにくい


― 腰を落として下半身の重心を下げると安定しそうですが?

瀬戸 それは逆ですね。プロはお尻の位置が高いと思うんですが、そのほうがスイング中に足がバタつかなくなるんです。両ひざを曲げて踏ん張っているようなアドレスは一見安定しそうですが、ヒザが動きやすく姿勢が不安定になりがちなんです。

― プロのアドレスは足が長く見えてカッコいいのはそのせいですね。

瀬戸 ダウンスイングで右ひざが前に突っ込む癖のあるアマチュアの方は多いですが、あれもミスショットの大きな原因になりますし、放っておくと上達を妨げてしまいます。

ナイスショットもあればひどいミスショットもあるというような場合は、右ひざの突っ込みと、それに伴う体の浮き上がりが考えられますからチェックしてみてください。もしそうなっていたら、ダウンスイングで右脚を伸ばしたまま打つといいですよ。アドレスではお尻の高さを意識して構え、右ひざを曲げずにクラブを振り抜くんです。これで下半身の悪い動きは改善できるはずです。

右ひざの突っ込みは
悪い癖の代名詞的存在


― 悪い癖を抱えたまま経験を重ねても上手くならないということですね。

瀬戸 そうなりがちな動きというのがあるんですよね。ダウンスイングで右ひじを体に引き付ける方も少なくありませんが、あれなんかもインパクトの質が悪くなってしまうのでやめたほうがいいと思います。

タメを作ろうとしているのでしょうが、スピードが出ませんし、そもそも振り遅れてしまいます。切り返しからはむしろ右ひじを伸ばして、クラブヘッドが自分から遠くを通るように振り下ろすことをおすすめします。このほうがヘッドを走らせることができるんですよ。

タメを作ろうとして
ミスになるパターンも少なくない


― 良かれと思った動作がミスの原因になっているとは……驚きました。

瀬戸 私のコーチの三觜喜一プロは「うねり」と表現しますが、魚のように体をうねらせる中でボールをとらえるのがゴルフスイングだと理解するとだいぶイメージが変わりますよ。

確かにクラブを持っているのは手なんですが、手から動かすのではなくて、体とそれにつながる腕や手が順番に動くのがプロや上級者のスイングです。それぞれの動きに時間差があることでしなやかに見えますし、ここがつかめれば手や腕の力に頼ることもなくなります。

ですから、手でクラブを上げて手で下ろしているような方は胸郭から動かしてみてください。手からではなく肩からでもなく、胸郭をまず動かすんです。テークバックでは胸郭を右に回して、ワンテンポ遅れて腕が上がる、切り返しでは胸郭を左に回して、ワンテンポ遅れて腕が振り下ろされる。これが「うねる」ということで、体を上手にうねらせられるようになれば手打ちにはなりなせんし、何よりもスイングがカッコ良くなりますからぜひ試してみてください!

魚になったつもりで体をうねらせよう

― プロのスイングがアマチュアと違う理由がよくわかりました。でもハードルは少々高そうですね。

瀬戸 簡単ではないかもしれませんが、私の言ったことは運動神経も筋力も要りませんから身に付けることは十分可能です。アドレスが変わるだけでも動きはだいぶ良くなりますのでコツコツ取り組んでみてください。

解説
瀬戸瑞希プロ

三觜喜一プロに師事するツアー選手。20歳からツアーに参戦する実力派でスイングの美しさには定評がある。最近はGDO Golfers LINKS HANEDAのスタッフとして働き、近々レッスン活動も開始する予定。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。


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