ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論パッシブトルクの使い方|最大加速を得るための練習法も解説

2018.10.04

欧米のゴルフレッスンで使われる用語に「パッシブトルク」というものがあります。直訳すると「受動的なねじり(の力)」となるこの用語、一般ゴルファーには何のことかさっぱりわからないと思いますが、まずはレベルが高くなればなるほど必要になってくるスイングの重要な要素だと理解してください。ドライバーの飛距離やアイアンのキレが突出しているゴルファーはもれなく、このパッシブトルクを使ってボールを打っているといっても過言ではありません。

ゴルフ用語にはスイングプレーンという言葉もありますが、一般的にはこのスイングプレーンにクラブを乗せ、なおかつインパクトでフェースがターゲットを向いていれば遠くにまっすぐ飛ぶと考えられています。それ自体は間違いではないのですが、さらにボールを遠くに飛ばすプラスアルファの要素となるのがパッシブトルクです。

たとえば金槌で釘を叩くときにはまっすぐ振り下ろしますが、これはスイングプレーン的に妥当な動作です。釘に対して斜めの位置から振り下ろしても釘を強く叩くことはできないからです。斜めの位置から振り下ろして釘を真上から叩くには、どこかで軌道をカーブさせて金槌を真上のポジションに持っていかなければなりません。当然、最初からまっすぐ振り下ろすよりもスピードは落ちるのです。
では、まっすぐ振り下ろすことを前提としたとき、さらにスピードを出して衝撃を強くするにはどうすればいいでしょうか?
答えは2つあって、スナップを効かせることと、てこの支点となる手首の位置を動かすことです。手首を先行させ、後から金槌が下りてくるように振り下ろしたほうが強く叩けることをみなさんは経験から知っていると思います。ゴルフスイングでも同じことが言えて、スイングプレーン通りにクラブを振り下ろしているところから、さらにクラブを加速させるには、手首のタメを利かせることと、タメをリリースする支点自体を動かすことが有効であり、このとき発生するのがパッシブトルクなのです。

パッシブトルクが働いたクラブがどう動くかというと、切り返しではクラブが後ろに振られ、倒れたシャフトがダウンスイングで起きてスイングプレーンに乗り、インパクトを迎えます。なぜそのような挙動になるかというと、スイングプレーンが斜めであることおよび重力とクラブの構造によるもので、クラブフェースの動きのみに注目すると、テークバックでやや閉じ気味になったフェースは切り返しで開きますから、そこから意識して閉じることで、インパクトでフェースはスクエアになりスイングが完成します。

言葉で説明すると難しい動きのようですが、実は極めて自然な動きで、右手でクラブを持って思い切り振ると、誰でもパッシブトルクを発生させることができます。スイングプレーンをなぞるように振るだけでは発生しませんが、速度が最大になるように右ヒジを外に向けながら振りかぶり、その右ヒジを内側に差し込むように振り下ろすと、うまくいくことに気付くはずです。そのとき切り返しでクラブが背中のほうに振られる感覚を体感することができますし、そのままクラブを振り下ろすと、後ろに倒れていたシャフトはダウンスイングの途中でスイングプレーンと一致し、インパクトを迎えます。ここまでできるようになれば、よりスピードを出すためには手元を先行させることが必要だということに気付くのに時間はそうかからないでしょう。

右手でクラブを思い切り振ってみよう

右手1本でクラブを振ると、手元をクラブより先行させ、回転半径を小さくして振ることで最大加速が得られることが理解できる。

つまりパッシブトルクとは、右手1本でクラブを最大加速させたときに発生するものであり、両手で握ってもその動きを再現できるゴルファーがパッシブトルクを使いこなせるのです。「プロになるためには右手1本でプレーできなければならない」とは昔からよく言われますし、右手だけで打つドリルはプロ志望の研修生がよく行っていますが、うまく打つにはパッシブトルクを効かせてクラブを走らせなければなりなせんし、しっかりフェースターンしてハンドファーストにとらえる必要があります。以上のことから、右手打ちはまさにゴルフスイングの大事な要素を覚えられる究極の練習方法といっていいでしょう。

右手1本でクラブを思い切り振ると、切り返しでクラブが背中側に倒れ、スイングプレーンから外れる。しかしそのまま振り続けるといずれスイングプレーンに戻りインパクトを迎える。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

イラスト:野村タケオ

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