ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論クラブを短く持つと距離はどうなる?
飛距離を創り出すメカニズム

2018.05.10

たまにスポーツニュースで「プロがクラブを短くしたら距離が伸びた」的なニュースが飛び込んでくることがありますが、多くのアマチュアにとっては不思議に感じるのではないでしょうか。「クラブは長い方が飛ぶ」のが大多数のゴルファーの実感でしょうし、それが物理的法則に則っていると考えるのは自然です。しかしながら、ドライバーを45.5インチから44インチに替えて飛距離が伸びることは現実としてあるし、長さを変えなくても、短く持つことで飛ぶようになることもあるのです。

なぜこのようなことが起こるのかというと、飛距離を創り出すメカニズムに要因があります。一般的に、アマチュアはクラブが長いほうが飛びますが、これはスイングアークの大きさによって飛距離を出している場合が多いからです。一方、ツアープロや一部の上級者はシャフトのしなりで飛距離を出しています。それゆえに、アマチュアはシャフトが短くなれば距離が落ちますし、ツアープロは短くすることでうまくしならせられるようになることもあるのです。

「シャフトをしならせて飛ばす」という発想が強い選手ほどバックスイングがコンパクトになるし、クラブを短く握るとより上体と下半身の動きの時間差でしなりを作るイメージが強くなる。

もちろん短くすることでジャストミートできるようになり、それで飛ぶようになることもあります。しかしそれは本質ではありません。ここではシャフトのしなりにフォーカスして、「短ければ飛ぶ」ケースについて考察してみましょう。
それにはまず「長ければ飛ぶ」を検証することが必要ですが、「スイングアークの大きさで飛ばす」という発想は、アーリーリリースを前提にしていることが多く、アマチュア的です。左肩からクラブヘッドまでの長さを利用して飛ばすということなのでしょうが、それには大きく振りかぶるバックスイングが必要であり、精度は期待できない打ち方です。また、アマチュアの飛ばし屋はフリップ動作で手首を返してヘッドを走らせることが多いですが、この場合もクラブを長くしたほうが距離は伸びます。ただインパクトでフェースをスクエアにすることは難しいので、「飛ぶけれどどこに行くかわからない」という状態になりがちで、ストロークプレーには向きません。
これに対し、プロはシャフトのしなりを使って飛ばしますが、それにはバックスイングとダウンスイングの時間差が必要です。バックスイングが上がっている間に下半身で切り返し動作に入ることで、時間差が生まれシャフトがしなります。そのしなり戻りを使ってヘッドを走らせて打つのが、プロのスイングというわけですね。

とはいえ、プロも調子が悪くなるとシャフトを上手くしならせられなくなります。時間差を上手く作れなくなっていると言い換えてもいいでしょう。そんなとき、クラブを短くするとうまくいくことがあるのです。長ければそれだけ慣性モーメントも大きくなるので、クラブに引っ張られっぱなしになってしまいますが、短いと下半身を切り返すタイミングを早くできますから、シャフトはよりしなるのです。

「シャフトをしならせて飛ばす」がピンと来ない人は、市販のツアースティックのようなしなやかな棒で、布団でもクッションでもなんでもいいから叩いてみるといいでしょう。ビシッ!と強く叩こうとするときどうしますか? 腕を伸ばして、肩から棒の先端までのアークを大きくする人はいないのではないでしょうか。おそらくほとんどの人が手首のスナップを利かせて、鞭のように棒をしならせることでしょう。中には「いや、俺はアークの大きさで叩くよ」という人がいるかもしれませんが、正確に1点を狙うときにもそうしますか? おそらくそんな場合は、小さく振りかぶってしなりを使って叩くと思いますが、これはゴルフスイングでも同じなのです。以上のことから、「アークの大きさで飛ばす」から「シャフトのしなりで飛ばす」に発想を変えるとゴルフが劇的に変わることを保証します。ただ、シャフトをしならせるスイングの習得が難しいことも、また事実ではありますが…。

細い棒でボールを強く叩こうとするとき、手首のスナップを利かせて棒を鞭のようにしならせるはずだ。ゴルフスイングでも同じメカニズムで打った方が効率が良い。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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