ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論もしもゴルフクラブに「取扱い説明書」があったら

2017.11.02

パソコンや電化製品を買うと「取扱い説明書」がついていて、最初はそれを見ながら使うものです。見ない人もいますが、使い方がわからなければその説明書にどうすればいいか書いてありますから、ユーザーにとっては必需品といえるでしょう。ではゴルフクラブはどうでしょうか? 一応取扱い説明書はついてくるのですが、そこに書いてあるのは「雨の後は水滴を拭き取ってサビを防ぎましょう」といったようなメンテナンス方法だけで、どうやって使うかについての説明は見当たりません。
ゴルフコーチと話をするとき、たまにこの話題になるのですが、優秀なコーチほど「説明書に書いてあればいいんですけどねえ」といったような発言をするものです。ということは、裏を返せば「ゴルフクラブには正しい使い方がある」ということにほかなりません。

もしもゴルフクラブの取扱い説明書に使用方法が書いてあったら? 自己流の練習のせいで上達できないゴルファーが減るのではないだろうか。

ゴルフクラブはとても不安定な物体です。よく言われるのは「長い棒の先にへらのような鉄の塊がついている」という表現ですが、この特殊な形状の物体を振り回すのですから、クラブ自体に発生する慣性モーメントの影響を大きく受けるのです。ところが多くのゴルファーはそのこと自体に気付いておらず、クラブを振るつもりが逆に振り回されたり、フェースが自分の意志とは違う方向を向いたりということが起こっています。極論してしまえば、クラブに発生する力があるためにうまくボールを打つことができないといえます。では、もしもクラブの取扱い説明書に使用方法が書いてあるとしたらどんな内容なのでしょうか? 今回はそのことをテーマにお話ししようと思います。

もし私がゴルフクラブメーカーの社員で使用方法をまとめる仕事を任されたなら、真っ先に2つの項目を入れると思います。それは

① クラブに発生する遠心力をなるべく切らさずに使ってください。
② クラブフェースは開閉して使ってください。

ということです。そして次にくるのは

③ インパクトの直前まで保った手首の角度をリリースすることで加速してください。

ということでしょうか。全部挙げたらキリがありませんが、この3つは外せません。こう記しておけば、「遠心力を切らさないってどういうことだろう」「フェースはどうやって開閉するんだろう」と疑問が湧くじゃないですか。それをコーチに習いに行けば上達は早いと思うのです。
ところがそういう説明がないものだから、力づくでクラブを動かそうとして遠心力を無視した振り方をしたり、フェースを開閉せずに打とうとする人が後を絶ちません。正しい使い方を知らずに自己流で練習するから変なクセがついてしまうのですし、一度付いたクセはなかなか抜けませんから苦労することになるのです。

では、実際にどのように使えばよいのでしょうか? クラブの基本的な使い方を理解するためのドリルを紹介しましょう。
まずはクラブを左手だけで持ち、手首を固定して振り子のように動かしてください。左腕を左胸に乗せ、脇を絞めた状態で行いましょう。右足→左足→右足と交互に体重移動しながら動くと体のターンとクラブが連動します。このときクラブには遠心力が働いているのでまずその確認。
次に、クラブがバックスイング方向に振り上がっている間に、左足を踏み込んで下半身を先に切り返してしまいましょう。こうして時間差を作ると左手首の角度が深くなりますが、この角度がタメであり、タメが作られるメカニズムです。どんなに左手でしっかりクラブを握っていても必ずタメが作られます。これは、左手はしっかり握っておいて構わないということを示しています。左手だけにグローブをするのはそのためで、左手はしっかりと、右手はクラブの自然な動きを邪魔しない程度の力で握ることが基本です。試しに右手1本で持って時間差を作ってみてください。右手は手首の角度を深めず耐えられることがわかると思います。つまり、右手でクラブの動きを阻害してしまうとスイングは崩壊してしまうということです。

クラブの基本的な使い方を理解するドリル

①遠心力を確認

左手でクラブを持って左右に体重移動をするとクラブが振り子運動を始める。このとき発生する遠心力を利用してボールを打つのがクラブの基本的な使い方。

②「タメ」が発生するメカニズム

バックスイングが上がっている間に左足を踏み込んで切り返すと、力の働く方向の違いで手首の角度が大きくなるがこれがタメができるメカニズム。その後タメは自然にほどけてフェースターンが起こる。

このようにして操作の基本がわかったら両手でクラブを持って同じことを行います。そのときフェースの向きに注目してみましょう。下半身の左への運動が起こった瞬間、クラブはまだ右に動こうとすることで手首の角度が深くなります。このときクラブフェースは開いている状態です。間もなく左への運動に引っ張られるようにクラブが戻ってきますが、そこでは開いていたフェースが元に戻る挙動が起こりインパクトでスクエアになります。そのままフォロースルー方向へ振り出されながらフェースは閉じますが、このフェースの開閉にゴルファーの意志は入りません。つまり、フェースの開閉は自動的に起こるものなのです。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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