ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論トラックマンのデータはココに注目!
最も重視すべき数値を解説

2016.11.17

ひと昔前は映像によってスイングを評価、管理することが主流でしたが、現在は映像よりもデータに重きが置かれるようになっています。スイングの形を良くすることよりも、インパクトにおけるクラブの挙動のデータを良くすることにコーチングの主眼が移っているのです。

世界のトップ選手たちがデータ測定に使っているのは『トラックマン』といって、パトリオットミサイルの技術を応用したハイテクなレーザー測定器ですが、測定した数値から弾道を割り出す理論的根拠になっているのが『Dプレーン』という理論。「新飛球理論」と言われるこの『Dプレーン』を理解することが、イマドキの進化したクラブを使いこなすことに直結するといっても過言ではありません。

測定できる数値は多岐に渡りますが、ゴルファーの能力を端的に示すデータはフェースアングル(Face Angle)といって、インパクトにおけるクラブフェースの向きです。ターゲットラインと一致していれば数値は0で、+1度でややオープン、-1だとややクローズです。なぜこの数値が重要かをいまから説明しましょう。

そもそもなぜボールが曲がるのかというと、ボールの回転軸(Spin Axis)が倒れるからです。飛んでいくボールにはバックスピンがかかっていますが、ターゲットに対してまっすぐ回転していれば当然ボールはまっすぐ飛びます。トラックマンではこのときの数値をゼロと設定していて、軸が右に倒れればスライスし、左に倒れればフックするわけです。これは飛行機が方向を変えるときに機体を斜めに倒す姿をイメージしてもらえばわかりやすいと思います。

ボールが曲がるメカニズム

A. フックボール:回転軸が左に傾くとフック回転がかかり左に曲がる。
B. ストレートボール:回転軸がスクエアだとまっすぐ飛ぶ。このときのスピンアクシスの数値は0。
C. スライスボール:回転軸が右に傾くとスライス回転がかかり右に曲がる。

回転軸(Spin Axis)の数値がどのように決まるかというと、クラブの軌道(Club Path)とフェースアングル、そしてクラブのロフト角が関係してきます。このときフェイストゥパス(Face to Path )という重要な数値があるのですが、これは「インパクト時のクラブの軌道に対するフェースの開閉度合い」で、フェースアングル-クラブパス=フェイストゥパスという関係式があります。たとえばインパクトでフェースが1度右を向いていて、クラブの軌道が4度インサイドアウトだったとすると、フェイストゥパスは1-4=-3となります。

フェイストウパス

フェイストゥパス=フェースアングル-クラブパス

フェイストゥパスの数値がマイナスならフック回転、プラスだとスライス回転になりますが、どれぐらい軸が倒れるかどうかは、スピンロフト(Spin Loft)といって、ボールに対してクラブフェースがどのぐらい上から入ったかによって決まります。インパクト時のリアルロフトであるダイナミックロフト(Dynamick Loft)にダウンブロー度合いを加えたものがスピンロフトであり、この数値は当然ながら打つ番手によって変わるのです。簡単に言うと、ロフトが寝ているほど曲がりにくくなり、ロフトが立っているほど曲がりやすくなります。数値的には、フェイストゥパスの数値が同じでも、スピンロフト の小さいドライバーでは回転軸(Spin Axis)の数値は大きくなり、スピンロフト の大きいウェッジでは回転軸(Spin Axis)の数値は小さくなります。このあたりの理屈はちょっと難しいですが、ドライバーは曲がりやすく、ウェッジは曲がりにくいということは経験上ピンとくると思います。

スピンロフト

スピンロフト=ダイナミックロフト-アタックアングル

このように、クラブの軌道とフェースの向き、そしてスピンロフトという3つの要素で理論上のスピン方向は決まるのですが、実際にプロ選手のデータを取ると、スイングやクラブの軌道に個性はあるものの、おしなべてフェースアングルの数値がゼロに近いという傾向があります。トップ選手は必ずしもストレートなボールを打たず、フェードを打ったり、ドローを打ったりと曲げて攻める場合が多いですが、そのときでもフェースアングルはほぼスクエアなのです。

この事実はゴルフの上達のカギを握っているといえるでしょう。どんなスイングであれ、ターゲットに対してまっすぐフェースを向ける能力がボールコントロールの根拠となり、スコアメークに直結しているということなのです。ということは、われわれアマチュアがもしデータ測定をする機会があった場合にはフェースアングルの数値にこそ最も注目すべきだし、その数値が安定してゼロに近くなるよう練習することが必要だということです。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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