ゴルフ理論

スコアアップにつながるゴルフ理論ティーショットはどこを狙う?
苦手ホールの大崩れを防ぐ攻め方

2017.05.25

どんなレベルのゴルファーでも苦手なホールがあるものです。よくプレーするゴルフ場で、「このホールのティーショットは必ず曲がるんだよな~」みたいなホールってありませんか?
苦手意識はプレッシャーとなってのしかかり、そこまでどんなに好調だったとしても、そのホールに来ると妙に緊張してミスを繰り返す…。そういう「苦手ホール」を作ってしまうとスコアはなかなかまとまらないものです。

では、なぜ曲がってしまうのでしょう?

いろんな要因が考えられますが、視覚的な影響は少なくないはずです。フェアウェイの傾斜やその向こうに見える森のシルエットといったもので平衡感覚を狂わされ、正しいアドレスがとれない場合が多いのです。どういう景色で立ちにくいかには個人差があるため、「苦手ホール」は人によって違うのです。

たとえばドッグレッグのホール。一般的にスライサーは左曲がりのドッグレッグが打ちにくいし、フッカーは右曲がりが打ちにくいと言われます。これは狙ったラインに打ち出すためにはホールに対して斜めに立つ必要性が出てくるからで、そうすることでスイングが影響を受け、ミスが起こりやすいと考えられます。

この問題を解消するために提唱されているのが、ティーチングプロの永井延宏氏によるBOX理論。どんな理論かを一言でいえば、ホールに対して斜めに立たない、ということになります。
たとえばスライサーが右サイドOBのホールでティーショットを打つ場合、左の林方向を向いていつも通りにスイングをする人が多いでしょう。アライメント通りに打ち出せて、ボールが右に戻ってくればフェアウェイをとらえることができるという考え方です。
しかしここには落とし穴があります。人は視覚的に開けている右のスペースに向かってクラブを振りたくなるものなので、フェアウェイ方向に打ち出す可能性が大きいということです。となれば右に飛び出して右に曲がるプッシュスライスでOBということにもなりかねません。
また、ホールの外に体を向けて打つことがそもそもの間違いだと永井プロは言います。スライスせず快心のストレートボールが打てた場合、左サイドのバンカーにつかまったり、飛び過ぎて林に飛び込むこともありますし、「スライスを打ち続ける」という思考自体が技術の向上を放棄しているというのがその根拠です。

BOX理論の考え方

ターゲットをホールの外に設定すると、ストレートボールが出たときにトラブルになってしまう。また出球がフェアウェイ方向に飛ぶと右OBの危険性もある。

体の向きとターゲットラインでつくる四角いBOXの中にボールを収めるように打つのがBOX理論。右に曲がるとBOXを出てしまうのでドローボールが基本の球筋となる。

そこでどうするかというと、いつでもホールに対して平行に構えて打つのがBOX理論。体の向いている方向と飛球線で四角形の箱(BOX)を作り、その中にボールを収めるという発想です。
この理論でホールを攻略する場合、右サイドを狙う場合はティーマークの右端から打ち、左サイドを狙う場合はティーマークの左端から打ちます。斜めを向いて打つことには、人間の感覚を狂わせる要素がたくさん詰まっているという考えに基づいたコースマネジメントであり、ボールを動かせない2打目、3打目はどうすればいいかというと、ボールを曲げてターゲットに近づけるという方法をとります。右サイドから左サイドのピンを狙う場合はドローボールで攻めるということですね。

2打目、3打目の考え方

左サイドから右のピンを狙う場合は、右を向いて立たず、まっすぐ立ってボールを右に曲げる。
右サイドから左のピンを狙う場合は、左を向いて立たず、まっすぐ立ってボールを左に曲げる。

BOX理論の詳細は永井プロの関連書籍を読んでいただくとして、ここで注目したいのはホールに対して「斜めに立たない」という考え方です。なるほど記憶を辿ってみると、ホールに対して素直に立てないホールで曲げてしまう場合が多いような気がします。ホールに素直に立って打てば多少のミスは許容されますが、ホールに逆らって立ったときのミスはけっこう大きいのです。

ですから基本的にホールにまっすぐ立って、ピンが体の向きとそれに伴って決定される仮想のターゲットに対して、左にあればドローボールを打ち、右にあればフェードボールを打つという発想は悪くなさそうです。「意識的に曲げることなんてできないよ」という人もいるでしょうが、それでは技術の向上がない、というのが永井プロの主張ですし、実際問題として、曲げにくくなっているイマドキのギアにおいては有効なマネジメント法と言えそうです。
フック回転をかけるのか、それともスライス回転をかけるのかをあらかじめ決めてから打つことは技術を向上させてくれますし、打ち出し方向さえ確保すればホールを飛び出すほどには曲がりにくいからです。

ですから「このホールは立ちにくいな」と思ったら、ホールに対してまっすぐ立って、運びたい場所に応じてボールを曲げてみてください。この作戦で苦手意識が解消できるかもしれませんし、少なくともトライすることでレベルアップにつながるはずです。

どちらのルートで攻める?

右ドッグレッグでティーグラウンドが左サイドにある場合は、ホールセンターラインと平行に立って打つAがおすすめ。Bはホールに対して斜めに立つのでスイングが崩れる可能性がある。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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