海外メジャー2勝、しかも誰もが憧れる全米女子オープンを2度制した笹生優花選手は紛れもなく世界のトップアスリート。それでいながら驕らず、つねに自然体でいる彼女はゴルファーのお手本のような存在だ。ゴルフのみならず、人間としての成長を目指す日々で気付いたことがあるというが、それはいったい何なのか?
今後も変わらずに、自分をしっかり持っている人になりたいなと思います
ゴルフって答えは1つじゃないんだな、と思うようになりました
― 昨年のインタビューでしきりに「成長したい」と言っていたのがとても印象的ですし素敵だと思いましたが、この1年でどのような部分が成長したと感じていますか?
笹生まだ振り返ってみていないので、具体的にどこが成長したかはわかりませんけれど、去年の自分といまの自分を比べると、去年わかっていなかったことが今年わかっていますし、発見したことも多いので、そういう部分では成長できたんじゃないかと思います。
― 去年気付いていなかったことって、どんなことですか?
笹生たとえばゴルフでは「1+1=2」みたいな考えがありましたが、そうでもないなと…。1つのことをやっていったらここに辿り着く、ということを信じてやっていたんですけれど、それをやることで違う気付きがあったりして、ゴルフって答えは1つじゃないんだな、と思うようになりました。でも同時に、1つじゃないってことは…どういうことなんだろう???って(笑)。はっきりした答えはまだ出ていないんですけれど…。
― そういう思考の積み重ねって面白いですか?
笹生逆に面白いですね。1つじゃないなら答えはいくつあるんだろうなって思ったりとか。ゴルフって先が予測できないな、ってことを実感しています。
― いま何かを変えようとしていますか? スイング改造中ということも聞きますが。
笹生特に何かを変えようとかはしていないです。スイングを変えようということもありません。大きく変えると1からになってしまうので、いまのスイングをどうやって良くしていくか、ということですね。たとえばトレーニングで体を鍛えれば動きは少し変わるし、ミスをどうやってなくしていくかとか、そういうちょっとしたアジャストはしますけれど、スイングを変えるということはしていません。スイングだけでなくクラブも含めて、フラットからアップライトにというのもアジャストの範囲内の話です。ただ今年はアイアンをけっこう替えていて、いま3セットめです。
― クラブには何を求めていますか?
笹生できるだけ変えたくないほうなんですが、ここ最近、アイアンだけは落ち着いていなくて、気に入るものが見つけられていない状態です。すっきりしたデザインのヘッドが好きで、できるだけ左に行かないものを求めているんですけれど、なかなかこれ!というものに出会えていませんね。ウッドは合うものが探しやすくて、新しいモデルからもすぐ選べますが、アイアンはそう簡単にいきません。
― この1年で何か印象的な出来事はありましたか? ゴルフ以外でも構いませんから教えてください。
笹生何もやってなさ過ぎて、ないですね。ただF1が好きなので観に行きたいですね。テレビではよく観ていますけれど、サーキットで観たいです。運転もしてみたいんですが、それはHondaの方に「無理!」って言われました。まずはゴーカートに連れてってもらって、そこから始めたいと思います。
― 車が好きなんですね。
笹生好きですね。日本ではZR-Vに無限のパーツをたくさん付けて乗っていますし、アメリカではけっこう攻めたチューンナップをしたパイロット(米国市場向けの大型SUV)を乗り回しています。荷物をいっぱい詰めるし、いいですよ!
子供の頃の自分に会ったら「楽しんで!」と言ってあげたい
― さて、ここで先日行ったHonda GOLFのキャンペーン参加者から寄せられている質問に答えていただければ思います。
笹生え~!?どんなことを聞かれるんだろう!?
― まずはベテランゴルファーの方からです。『ゴルフを20年、30年と続ける上で、体のケアで特に大事にしていることは?』という質問なんですが。
笹生私はまだ15年ぐらいですけれど(笑)、いま自分が大事だなと思うのはリハビリですね。ケガのリハビリではなく、同じ動作を何十年も続けていくと体にダメージが残るしバランスも悪くなるじゃないですか。それがケガのもとになったりとかするので、リセットというか、ゼロの状態に戻すリハビリをやったほうがいいと思います。ストレッチは自分でやってしまうと、どうしても自分でやりやすいやり方になってしまってゼロに戻れないと思うので、しっかり人に診てもらって、歩き方とか、細かいところまでチェックしていったほうがいいかなと思います。ゴルフってターゲットにまっすぐ向かうわけじゃなく横を向いて打つので、自分のまっすぐがわからなくなりがちなんですね。そういうのをしっかり直して、いつもまっすぐ向ける状態にしておくケアとかリハビリはとても大切だと思います。
― では次にいきます。これはとても良い質問だと思うのですが、『ゴルフを続ける中で「もっと早く知っておけば良かった」と思うことはありますか?』というものです。これは20歳~30歳代の若い方の質問ですね。
笹生早く知ってしまっていいことってないですからね(笑)。うん、早く知っていいことはないです。
― 3年前の自分に何かアドバイスすることってありますか?
笹生3年前の自分があっていまの自分があると思っているので、違うことを言ったらいまの自分がないような気がします。
― ではジュニアの頃の自分に会ったらどうですか? 教えてあげたいことはないですか?
笹生自分がゴルフを始めた頃はジュニアのクラブを使ってなかったんですよ。父のクラブを切って使っていたので、もしジュニア用のクラブで始めたらどうなっていたんだろう、とは思いますね。ただ逆に、大人のクラブを使っていたからいまの自分があると思うので、なにが正解かはわからないですね。なにしろ答えは1つじゃないので(笑)。
― 結局そこなんですね。じゃあタイムマシンで過去に戻ってジュニアの自分に会っても、特にアドバイスはしない、と。
笹生「楽しんで!」と言ってあげたいですね。技術面では、早めにマキロイのスイングを学んだほうがいいとは思いますけれど、その頃まだマキロイは知られていなかったので…言ってもダメか。フィリピンではプロを目指している選手と毎日ひたすらゴルフをしていて、テレビでゴルフを観ることがあまりなかったので、テレビでも直接でも、一流選手のプレーを見たほうがいいとは思います。
― 最後に今後の未来予想図を教えてください。
笹生成長はし続けたいですね。もちろんゴルフの目標はありますし、全部のメジャー大会に勝ちたいと思いますけれど、一番大事なのは「自分をしっかり持つこと」だと思うので、今後も変わらずに、自分をしっかり持っている人になりたいなと思います。
取材・文
Honda GOLF編集部 小林一人
Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。