宮里藍×イ・ボミ スペシャルインタビュー 変わらぬ想い。 宮里藍×イ・ボミ スペシャルインタビュー 変わらぬ想い。

北の大地・北海道でHonda Summer Camp(8月13日、14日)が開催! 宮里藍プロとイ・ボミプロがタッグを組んでジュニアゴルファーたちを応援するイベントです。DAY1はあいにくの雨模様でしたが、おふたりは雨にも負けずの熱血指導! 場所を移しクラブハウスで行われたクロストークではジュニアたちや親御さんから活発に質問が飛ぶなど充実の内容でした。

Honda GOLFでは特別にお時間をいただくことができましたので、超レアな組み合わせのインタビューをぜひご覧ください!

2024.09.26

トッププレーヤーに昇り詰めた
経験から得たノウハウ

― あいにくのお天気でしたが、ジュニアたちは頑張って練習していましたね。

イ・ボミかわいい子たちでいっぱいでしたね! こういうジュニアのイベントに参加するのは初めてだったのですが、みなさんが真剣な顔で一生懸命やる姿を見ていて私も負けないように「頑張って教えよう!」と思いました。とてもいい時間でしたし、日本のゴルフの明るい未来が見えた気がします。

宮里藍あいにくのお天気でしたけど、その中でも集中力を維持して打っているジュニアの選手が多かったので「凄いな~」と思いました。始めて半年からしっかりやっているジュニアまで幅は広かったと思いますが、「いまこういうので悩んでいるんですけど」とか、「レッスン以外でも質問いいですか」など、しっかりコミュニケーションが取れるジュニアが多かったですね。人としてのスキルも高かった感じがします。

Honda Summer Campの会場となったのは札幌国際カントリークラブ島松コース。ドライビングレンジはイ・ボミプロが担当してスイングのアドバイス、アプローチグリーンは宮里プロが担当してショートゲームのアドバイスを行いました。

― 参加者の質が良かったせいか、おふたりのレッスンもレベルが高かったですね。スイングを指導されているイ・ボミさんはティーチングプロのようでした。

宮里藍え~! 見たかった!

イ・ボミ最初は何を喋ればいいのか戸惑いましたけれど、みんな真剣に聞いてくれるので、私もちゃんと教えなければダメだと思ったんです。スイングの動きとかミート率の話とかの質問が多かったから、その部分に関係する私の練習方法とかドリルを教えました。

― 現役時代にスイングは細かく研究されたほうでしたか?

イ・ボミ引退する直前は自分も上手くいってなかったから、スイングのことを考えたり悩んだりする時間は多かったですね。今日はそのときに経験したことを教えました。

― 宮里プロのアプローチレッスンも実戦的だったように思えました。

宮里藍限られた時間だったので、人数をこなすとなるとハードルが1つ上がるので難しいですけれど、だからこそ対話をして、「何番で打ってるの?」とか聞くようにしましたね。そこがないと一方的なレッスンになってしまうので…。ボールを打つよりも話をよく聞いて、「それならもうちょっと転がしの練習したほうがいいね」とかそういうやり取りをしていました。

― 途中で「雨強いな」とか思わなかったんですか?

宮里藍笑ってました(笑)。でも誰も手を止めないから、みんな凄いな~と感心してましたね。真剣に練習しているからついていくのに必死、みたいな感じでした。

― クロストークでは睡眠時間や集中力のキープの仕方などを細かく話されていましたが、共通する点が多かったような気がします。

宮里藍ビックリしました! 選手同士でそういう話はしないので。もちろん試合で会うと会話はしますが、全然違う話をしていましたし「いま睡眠何時間取とってる?」とかはなかったですね(笑)。お互いに一線を退いているから話せている内容でもありますし、同じようなことをやっていたのがわかって凄く嬉しかったです。

クロストークでは「試合前日の過ごし方は?」「ラウンド中に何を食べればいい?」など活発な質問が飛び交いましたが、「睡眠時間は7時間」「3ホールごとに何か食べて集中力を維持する」などおふたりの答えは不思議なほど一致。トッププレーヤーになるための秘訣を聞くことができました。

― 現役バリバリのときに今日みたいなイベントがあったら、話す内容は変わっていましたか?

イ・ボミ一緒だと思います。

宮里藍変わらないと思います。

― 技術以外にもジュニアたちに伝えたいことはあるかと思いますが、伝え切れた感じはありますか?

イ・ボミひとりに教える時間が短かったからスイングの悩みしか対応できませんでした。そこは少し残念ですね。

宮里藍友達同士で参加しているジュニアたちもいて、そういうつながりがあるのは見ていて良いなと思いましたね。何はともあれまだ先は長いし、もっと言うと、親御さんの質問にもありましたけど、小学生なんかは練習にムラがある時期でもあるし、選手にならなくてもなんらかの形でゴルフは続けてもらいたいなと思います。

― ところでおふたりはジュニア時代にこういうイベントに参加したことはありますか?

宮里藍私たちの時代にはこういうイベントはあまりなかったような気がします。プロと触れ合える場所は限りなく少なかったですね。自分がアマチュアの予選に出て、プロの試合に出るのであればなんとなく憧れの人は見れるんですけど、質問しに行くとか、その次元ではなかったですね。

イ・ボミ私も雑誌のインタビューを読んで勉強したことはありますけれど、直接話を聞くことはなかったです。


練習し続けることで芽生える
「自分を信じる」気持ち

― おふたりのジュニア時代はどんな感じだったんですか? 練習量は1日500球から700球、時には1000球打つこともあったとのことでしたが、楽しくやっていたのか、辛かったのか、どっちでしょう?

イ・ボミ一緒に練習する友達がいるから楽しかったですね。友達より一生懸命頑張ろうと思ったし、そういうちょっとの気持ちとかも成長にプラスになっていると思います。私は「球をたくさん打つとプラスになる」と信じる気持ちがあったので練習を休めなくて…遊べないのは辛かったけど、その時間があったから、自分を信じることができました。それがプロになって自分の強さになったと思います。

宮里藍球を打つのが楽しい時期があって、そこからある程度上を狙ってくるとやらなきゃいけない練習が出てきます。そこからまた上達したいとなると、またさらに上の練習をしなくちゃいけなくて、その都度、ステージが上がるごとに苦しいことは増えていきます。純粋に楽しいだけではこの先もう行けないよね、っていう時期になると、「ああ、やりたくないな~」という気持ちが出てくるので、継続するのが難しくなります。練習に行きたくない日ももちろんあるんだけど、行かなくちゃいけない、続ける上でその時期が一番ハードルが高いと思います。

― そのときに親はどうあって欲しいですか? どういう存在であって欲しい?

イ・ボミ高校2年生ぐらいのときに母が突然「やめたほうがいいんじゃない」って言ったんです。そのときは練習が本当にしんどかったので真剣にちょっと考えましたね。で本当に一週間やめたんです。

宮里藍一週間かい!(笑)

イ・ボミ一週間休んだら、いままで朝早く起きて打ってきたボールの数がもったいなく感じて…もう一度頑張るからお母さん助けてください、ってお願いしました。それまでは父と試合に行ったりしていたんですけど、そこからは母がサポートしてくれるようになって、食事の世話とか睡眠の仕方のルーティーンを作ってくれました。

― 宮里プロはお父さんとお母さんの役割は違ったりしましたか?

宮里藍全然違いますね。うちは父がスイングコーチだったというのもあって、試合に帯同するのは父が多かったです。プロになって食事のサポートなどは母で、メジャー大会には来てくれていましたね。全英とかに行くと一軒家を借りるんですが、そこで一週間食事を作ってくれたりとかは凄く助かりました。外食にはないリラックスがあったので。ただそのときは親に求めることはあまり考えていませんでした。

いま親になって、親の役割はどうあるべきかを考えますけど、選手時代はトレーナーもいて、コーチもいて、ある程度自分が中心になってそこが固まっている部分があるので、あまり「親」という意識はなかったですね。でもイップスになって挫折したときは、私が求めているときにすぐ答えてくれてとても助かりました。ただそれでいてつねに傍にいられると、ちょっともういいかなとなってしまう。「こっちもやりたいことがあるから!」って。

― 自分のお子さんにゴルフはさせますか?

宮里藍産む前は絶対にさせたくなかったですね、「もうこんな大変な競技!」って思っていました。

イ・ボミ周りにいい先生いっぱいいるじゃないですか!

宮里藍それは別!(笑)
でも実際に産んだら、避けられないことがわかって…ですから一緒にやるのは楽しいだろうなって思います。でも選手でというのは別の話です。あくまでも「時間を共有できるスポーツ」としてゴルフはいいと思います。

イ・ボミ私も以前は絶対にやらせたくなかったです。
でも去年ギャラリーとして試合会場に行ったときに、私の子どもが20歳でプロになってそれを観戦するのもいいんじゃないかなって急に思いました。家族全員ゴルフが好きだから、みんなで一緒に回れるんだったらそれが一番いいんじゃないかなと。選手としてやりたいというんだったら応援してあげて、違う夢があるというならそれを助けてあげればいいから、いったんゴルフをやるのもいいかな。

宮里藍そうなんだ。いいお母さんになるね~。

イ・ボミ子どもがいないからそう思ってるだけかも(笑)

― 今日は日本のジュニアゴルファーたちでしたが、韓国のジュニアの環境は日本と違いますか?

イ・ボミ韓国はアカデミーが流行っていますね。趣味でじゃなくて、選手になって欲しくてアカデミーに親が一緒に行きます。もっと真剣な感じで、「楽しく」っていう雰囲気はありません。レッスンも「プロになるためにはスイングはこうでなければならない」とすごく理論的です。

宮里藍プロを目指す制度がちゃんとあるんですね。

イ・ボミ韓国アカデミーの選手強化体制はとてもシステム化されています。


現役復帰の可能性は?

― 最後におふたりの今後についてお聞かせいただければと思います。

宮里藍私は「宮里藍インビテーショナル」というジュニア大会があるので、そこを柱として活動していきたいですし、「VISION54」など、メンタルトレーニングのノウハウを培ってきた側なので、そういう環境をもう少ししっかり作っていきたいと思っています。

イ・ボミ引退してそろそろ1年経ち、いろんなイベントに参加したりもしましたが、今日がとても幸せな時間だったので、これからもこういうジュニアのイベントがあれば参加したいですね。子どもたちにもっとゴルフをやって欲しいなと思いますし、自分の子どもも欲しくなりました。そして何よりも、私は本当に藍ちゃんが大好きで、選手としてだけではなく人間として凄く尊敬しているので、藍ちゃんのやることを真似したいです。

宮里藍うれしい!

イ・ボミまた一緒にこういうイベントができればうれしいです。

― 試合にちょっと出てみたいとかはないですか?

宮里藍わたしはもう…ボミは引退が去年だからまだできるんじゃない?

イ・ボミ私も大丈夫です(笑)。そう思った瞬間もありましたが、もうあのぐらいの努力は無理だなと…。

― ところで宮里プロはあいかわらず洗車が趣味なんですか?

宮里藍ははは、そうですね。

イ・ボミ洗車が趣味!? 本当ですか? 私やったことないです!

宮里藍やって(笑)。ZR-Vに大事に乗っています。納車からもうすぐ1年になりますけど、いまだにすごく言ってます。「凄くカッコいい! このクルマ」って。

2023年11月撮影。「ZR-V」の納車式にて。
その際に行ったインタビュー記事「宮里藍さんの愛車がZR-Vに! クルマは子育てや毎日の生活に欠かせない

イ・ボミ私は自分のクルマがないんです。免許を取ってから間もないこともあって。

宮里藍クルマがないから洗車しないのか! じゃあこれからだね。洗車してください。私がいろんな技を教えますから。

イ・ボミはい! それも真似します!

取材・文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

写真・岡沢裕行