マメ知識

ゴルフの雑学・マメ知識飛んで曲がらない
夢の「短尺ドライバー」が完成!
組み方を職人が解説

2023.09.14

アマチュアゴルファーにとっての心配事といえばやはり、ドライバーがまっすぐ飛ぶかどうかではないでしょうか。「お願いだから次が打てるところに飛んでくれ」「絶対に曲がらないドライバーがあったらいいのになあ」視界に入るOB杭におののきながらそんなことを考えたりしませんか?

今回はクラブデザイナーの宮城裕治さんにそんな思いをぶつけてみました。「ドライバーのミスをクラブで何とかしたい!」とお願いしてみたわけですが、やさしい宮城さんはそんなムチャ振りに答えてくれるだけでなく、「曲がらないドライバー」の試作までしてくれました。いったいどんなクラブに仕上がったのでしょうか!?

ドライバーを短くすると
やさしくなる?


― ドライバーが苦手なら短くすればいい、という声もありますが、クラブデザイナー的にその考え方はどうなんでしょう?

宮城 「あり」とも「なし」ともいえます。というのは、クラブが短くなれば確実にミート率は上がるんです。3番アイアンとPWだったら絶対にPWのほうがやさしいですからね。

― でも手放しでは賛成できない?

宮城 クラブを作る側から言えば、短くなればスイングプレーンがアップライトになって、クラブが上から入ってくるということをまず指摘しなくてはなりません。球が上がらなくなりますし、スピン量が増えて飛ばなくなります。

― 飛ばなくなるんですか! でも曲がらないことを重視しているから仕方がないか…。

宮城 今回の依頼を受けて43.75インチというギリギリの線で組みました。43.5インチだとリッキー・ファウラーぐらい振らないと球が上がりませんからね(笑)。ロフト角10.5度のヘッドを使い、リアルロフトは11.2度で仕上げています。そしてここが重要なんですが、ライ角をアップライトにしています。

― スイングプレーンに合わせるわけですね!

宮城 そうです。短くするとインパクト付近のシャフトプレーンはアップライトになりますから、当然クラブもアップライトにしなければなりません。ですから、みなさんが自分で組む場合は、ゼクシオなどライ角がアップライトのヘッドを使ってください。海外ブランドのフラットなヘッドで組むと、球が滑って右に飛んでしまいます。

短尺ドライバーは
「ロフト角の大きいヘッド」と
「重くてやわらかいシャフト」で
組む


― ディープフェースとシャローフェースだと、どちらがおすすめですか? 「シャローはやさしい」というイメージがあるんですか?

宮城 それは逆で、ディープフェースのほうがやさしいといえます。これはシンプルに確率の問題で、ディープフェースなら上に当たったり下に当たったりするのをカバーできます。テニスのデカラケと一緒で「当たるところを広くする」という考え方です。テニスやバトミントンの試合を見ると全然真ん中で打っていませんから、当てるところが増えたほうがやさしいんです。ディープフェースのヘッドでロフト11.5度とか12度のものを用意するといいですね。

― となると、レディースクラブもありですか?

宮城 レディースだとヘッドが軽すぎます。軽いものを短くするとヘッドを感じなくなって、打てたもんじゃありません。スイング中にヘッドがどこにあるかわからないし、シャフトのしなり感もなくなってしまいます。

宮城 今回私が組んだのは202グラムのヘッドで、さらに鉛を2.1グラム貼ってあります。バランスはC7.5で、シャフトは65グラムのフレックスRです。手元と先がやわらかくて真ん中が硬いシャフトなんですが、昔でいうダブルキックのような特性を持つシャフトです。

― 短くすればいいってものでもないんですね。

宮城 単純にドライバーのシャフトを切って短くすると失敗します。ヘッド重量を上げる一方で、ロフトを寝かしたりやわらかいシャフトで組んだりというように、メリットとデメリットを相殺していくことが必要です。

宮城 間違えると振りづらいクラブになってしまうので要注意です。「自分で組むのはハードルが高い」という人は中古クラブ屋で3番ウッドのシャフトを買うといいですよ。使うヘッドを決めたら同じメーカーのスリーブつきのシャフトを買うんです。

ドライバーのヘッドに
スプーンのシャフトを刺すのもアリ


― ドライバーにスプーンのシャフトを入れるんですね!

宮城 3番ウッドだと60グラム台のシャフトがあるので、60グラム台のフレックスRぐらいがいいでしょう。ドライバーよりやや落としたスペックを選ぶのがポイントです。ドライバーがSならSR、SRならRですね。

― 短尺ドライバーの組み方はよくわかりましたが、結局それで曲がりは防止できるのでしょうか?

宮城 うまく組めればミート率が上がるので、OBは減らせると思います。最初に指摘したように球が低くなりますから、ヘッドスピードがある程度速くて、ミート率が悪く、球が高い人にはありといっていいでしょう。実際に打つときはティーアップを低くしてください。ヘッドが上から来るのでティーが高いとテンプラしやすいので。

― 短尺にする以外にドライバーをうまく打つコツはありますか?

宮城 ドライバーを練習しないことですね。

― え? 練習しない!?

宮城 そもそもドライバーが苦手な人は、振り過ぎているんです。ティーアップしているから、ボール付近にヘッドが通ればそれなりに打てるはずで、本来はアイアンより簡単なはずです。にもかかわらず苦手になるのは、練習し過ぎるからです。

試しに9番アイアンだけひたすら練習してみてください。そのスイングでドライバーを打てば、おそらく上手く打てるはずです。「球が上がらないから」「つかまらないから」と考えながら打つから失敗するんです。ドライバーからPWまでスイングは一緒なので、9番だと思って打ってください! それに、短く握るだけでもミート率が上がってOBは減ると思います。短く握ってうまく打てるようなら、そのままドライバーのシャフトを切っても大丈夫です。

短尺ドライバーを打ってみたら
魔法のクラブだった!


宮城さんに組んでもらった短尺ドライバーを打ってみました。同じヘッドで組んだ45.5インチのドライバーと比較したところ、構えたときに感じるやさしさは別格!「これならミスは出ないよ」と思いながら打つと、やはりまっすぐしか行きません。


ドライバー別平均DATA

飛距離 キャリー
飛距離
打ち出し角 スピン量 ボール初速 ヘッド
スピード
45.5インチ
ドライバー
234.9
ヤード
206.1
ヤード
16.4度 2246.2
回転
57.08m/s 41.4m/s
43.75インチ
ドライバー
237.24
ヤード
209.0
ヤード
16.4度 2319.8
回転
57.32m/s 41.2m/s
45.5インチ
ドライバー
43.75インチ
ドライバー
飛距離 234.9
ヤード
237.24
ヤード
キャリー
飛距離
206.1
ヤード
209.0
ヤード
打ち出し角 16.4度 16.4度
スピン量 2246.2
回転
2319.8
回転
ボール初速 57.08m/s 57.32m/s
ヘッド
スピード
41.4m/s 41.2m/s

データ的にも互角どころか短尺のほうが飛距離が出るという驚きの結果に。おそらく宮城さんが組んだからでしょうが、これならコースで十分使えそうです。短尺ドライバー、ありですね!

宮城 裕治

一世を風靡したウェッジ『MT-28』『MTi』を設計したクラブデザイナーで最近の作品には『PROTO CONCEPT』がある。クラフトマンとしてもツアープロの信頼が厚く、世界トップ選手から指名されるほどの高い技術力を誇る。クールデザイン主宰。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

「マメ知識」の記事一覧へ