マメ知識

ゴルフの雑学・マメ知識ゴルフグリップ|おすすめの選び方を
最新グリップ事情から解説!

2022.03.17

みなさんはどれぐらいグリップに気を使っていますか?

ゴルファーとクラブとの唯一の接点がグリップなので、ここはけっこう大事なところなのですが、割と無頓着な人が多いのではないでしょうか? 買ったクラブについていたグリップをそのまま使っているよ、という場合がほとんどだと思います。

これは実にもったいない! というか損をしているといっても過言ではありません。グリップの影響はものすごく大きくて、自分に合ったものを使えば不要なミスを減らすことが可能だからです。というわけで、今回はグリップについて掘り下げてみようと思います。教えてくれるのは、トッププロのクラブを数多く手掛けてきたクラブデザイナーの宮城裕治さんです。

グリップの重量がスイングに及ぼす影響は?

― 宮城さんよろしくお願いします。グリップには太いものや細いもの、重たいものや軽いものなどいろいろありますが、どのように選べばいいのかいまひとつわかりません。基準みたいなものってありますか?

宮城 クラブを組むということから言うと、グリップ重量がけっこう大事ですね。同じモデルでもわずかに重量の個体差があるんですが、自分はそれを逆に利用してロングアイアンには軽めのもの、ショートアイアンには重めのものを使うようにしています。

宮城 なぜかというと、同じバランスにするときにグリップが重いとヘッド加重をしなければならないので、総重量が上がってしまうからです。ロングアイアンでこれをやると振りにくくなってしまいます。一方、ウェッジなどショートアイアンはゆっくりとリズムよく振りたいわけですから重たくていいんですね。逆にグリップが軽くヘッドも軽いとなると、リリースが早くなってしまうので都合が悪い。リリースを遅らせるためにも重めがちょうどいいわけです。

― グリップ重量でリリースのタイミングを変えてるんですか! 知りませんでした。

宮城 プロの場合はけっこう大胆に変えますよ。ロングアイアンはリリースがしやすくなって球が上がりやすくなります。ショートアイアンはリリースが遅れるので、よりフェースにボールを乗せて、ロフトを立てながらスピンをかけることができます。100%そうなるわけではありませんが、重量によってそういう特性を引き出すことができます。

クラブの設計やスペックは「スライスを直したい」とか「アーリーリリースを直したい」というニーズに応えるためのものであり、それができない状態を作らない、ということが大事なんです。そういう意味でグリップの太さや重量は大事だし、「振りやすい=上達が早い」ということが言えると思うんです。

― どれぐらいの重さが適正なんでしょう。

宮城 その質問の答えになるかわかりませんが、たとえば女性用のクラブは「打ちづらい」「上手くならない」という声を聞いたことがありませんか? あれはグリップが軽いからで、メーカーは「総重量が軽ければ打ちやすい」という考えのもとに30グラム台をつけたりするんですが、果たしてそれが振りやすさになっているのか…。私の場合、女性用に組むグリップは軽くても47グラムぐらいからで、男性用の50グラム台のグリップを伸ばして下巻きも薄くして、細くして使います。そうするとウェッジなんかはほとんどダフらなくなりますし、バンカーも簡単に出るようになりますよ。

― 女性ゴルファーには聞き逃せない情報ですね。どうしてですか?

宮城 グリップが重いぶんダウンスイングで手が下がるようになるからです。女性に限りませんが、力があまりなかったり初心者だったりするほど、ダウンスイングで手が浮いてクラブヘッドが落っこちてしまいます。

宮城 グリップが軽いと余計そうなりやすいので、重たくしてそれを防いであげるわけですね。もちろん必ず手が下がるわけではなく、その動作の習得を目標に練習している人がやりやすくなるということです。ですからいたずらにグリップ重量を軽くすると、クラブ全体の振り心地が壊れてしまうという危険があることは知っておいてください。

手を使わないスイングには太いグリップが
やりやすい

― 軽いグリップの弊害についてはよくわかりました。太さに関してはどうですか?

宮城 細いグリップだと間違いなく手を使ってしまうと思います。たとえば、野球のバットを普通にグリップ側で持つといろいろできてしまいますが、反対側の太いほうを持つと何もできませんよね? あれと同じで、これからゴルフを上手くなろうという人にとっては「何もできない」ほうがいいわけです。となると、握ったときに余り感のない太さがよく、そういうグリップを使うことによって大きな筋肉で始動でき、手先で操作しようという気になりません。一方余りがあって手の中で遊ぶようだと、小さな筋肉を使ってしまいますからミスにもなりやすいし、そもそもスイングを覚えること自体が難しくなります。クラブは振れる範囲で重たいほうが、大きな筋肉でスイングできますから再現性は高まりますね。

宮城 いまアメリカでは右手部分を太くして、テーパー(太さの差)をなくしたグリップがスタンダードになりつつあります。つまり細いグリップでフェースのローテーションを駆使して、という時代はもう終わったんです。ヘッドの機能が上がったことによって、なるべく余計なことをしない、フェース面を閉じるのではなく自分が回転してフェースを閉じていく、という考えに変わったんです。だからクラブも短くなってきたし、グリップを太くして手も使わなくなったということですね。

― 昔から「つかまりが悪いなら細いグリップで」などと言われてきましたが、もはや通用しないということですね。

宮城 もちろん手打ちだったら細いほうがつかまります。手打ちでうまくいっている人には、シャフトを軽くて硬いものにしてグリップを細くして、ということをやることはあります。でも細いとつかまりにくくなることがあって、なぜかというとダウンスイングで右手が左手の下に来やすいからです。ところが太いと右手が上のまま動かしやすいので、こういう場合もやはり太いグリップでスイングが良くなりますね。もっとも太いというか、「隙間なく握れている」ということが基準になります。

― お話を聞いているとやはり太いグリップのメリットが大きそうですね。「手が下がりすぎちゃって」というアマチュアは見かけませんから(笑)。

宮城 悪い動きを練習量だけで克服しようとするのは「根性論」になってしまいます。趣味がウォーキングやランニングだったらそれをしやすいスニーカーを買うのと同じで、ある動作を習得しようと思ったら、やりやすいクラブであることが大事なんですよ。それを可能にするのが、グリップの重さであり太さだということです。

海外で主流になっている「自分が速く回転して飛ばす」というスイングをしたければ、グリップを太くするのが効果的だし、それには太いグリップに変えるか下巻きを厚くすればいいわけです。たとえば左手部分を2回、右手部分を4回巻くなどしてテーパーをなくせば、右手が効かなくなるなどの調整もできます。特にウェッジでこのように左右差をなくすと、アプローチで全くダフらなくなるのでここはぜひ活用してほしいですね。

まとめ

これから上達する人には右手が太いテーパーをなくしたグリップがおすすめ

正直、グリップが太いとひっかけにくく細いとつかまりがよくなる、というような答えを予測していましたが、どうやら最先端の現場では違うようです。クラブとボールの進化によって、手先で操作せず体全体のターンでボールを運ぶスイングを採用する選手が増えているという状況で、グリップはそれをやりやすい太めの、しかもテーパーがないものが好まれているという事実があるようです。このようなグリップのメリットは、右手と左手の位置関係を変えずにスイングできるということで、左手より右手が上にあるという状態をキープできれば、球がつかまるしダフることもなくなります。

実際にグリップの太さを変えてデータをとってみると、確かに細いものはつかまりが良いのですが、飛距離が出るかといえばそうでもなく球のバラつきも多くなってしまいます。一方、太いグリップは明らかに右手の余計な動作が減るのでミスが減りますし、体がうまく回れば飛距離が出ます。やはり現代ゴルフにおいては「ボディターンスイング+太めグリップ」という組み合わせがベストマッチといえそうです。

注目すべきは「太い+重い」グリップのスイング矯正効果で、ダウンスイングで手元を下げやすいという特性は見逃せません。ここはアマチュアが最も苦手とするところなので、クラブが下から入る、ダフりやすい、という悩みがある方はグリップを見直してみるといいでしょう。また、ウェッジの右手部分を太くしてみたところ、宮城さんのいうようにかなり打ちやすくなりますので、アプローチのダフリをなくしたい人はぜひ試してみてください。

グリップの交換は自分でも比較的簡単にできますし、お店に頼むときは「右手の下巻きを増やしてテーパーをなくしてください」とお願いすればやってくれると思います。

宮城 裕治

竹林隆光氏のもとでクラブ造りを学び、(株)フォーティーン在籍時にはウェッジの名器MT-28の開発を手がけ大ブームを巻き起こす。その後世に出したMTIウェッジも大ヒットすると共に、止まり過ぎて角溝論争を呼び起こすなど、つねに時代をリードしてきたクラブデザイナー。ヨネックスと契約時には石川遼プロのクラブ開発を専属で担当するなど、トッププロからの信頼も厚い。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

「マメ知識」の記事一覧へ