マメ知識

ゴルフの雑学・マメ知識ドロップの正しいやり方は?
間違いやすいゴルフ新ルール3選

2019.06.27

2019年1月1日から施行された新ゴルフルール。内容が大幅に変わったため、競技の現場ではある程度混乱が起きるだろうと予測されていましが、案の定、トーナメントではルールトラブルが少なからず起こっています。



不自然な体勢のドロップが正しいから気を付けよう

プロゴルファーたちの多くが戸惑っているのが、ドロップのやり方でしょう。以前は肩の高さからドロップしていましたが、新ルールではヒザの高さから行うことが義務付けられました。これがかなり違和感のある動作で、つい肩からドロップしたくなってしまいます。
2019年2月に行われた「WGCメキシコ選手権」で、リッキー・ファウラーは肩からドロップしたままプレーを続けて、1罰打を受けました。「完全に無意識だった」とファウラーが語ったように、長年行ってきた肩からのドロップは体に染みついているものです。その意味で、この新ルールが最も間違えやすいものかもしれないので注意しましょう。ちなみに肩からドロップしてしまっても、間違いに気付いてヒザからドロップし直せば無罰です。



キャディの立ち位置を常に意識しなくてはならなくなった

スタンスをとってから、キャディが飛球線後方に立つこともできなくなりました。このルールの運用を巡ってもトラブルが起きています。
同じく2019年2月の「ウェイストマネジメントフェニックスオープン」の第2ラウンドで、デニー・マッカーシーが素振りをしていた際、キャディは飛球線後方に立ってグリーン方向を見ていましたが、ボールにセットアップする前に立ち去りました。マッカーシーは一度アドレスを解き、自分で飛球線後方に立って方向を確認した後に打ったのですが、この行為が違反とされ2罰打を受けました。
マッカーシーはペナルティを受け入れたものの、「自分はキャディをライン上に立たせてから打ったことはないし、この時もルールを破ったとは感じていなかった」と弁明。他の選手からも「この行為がペナルティを受けるなんて」と批判が集まりました。すると事態は急転。翌日の朝、大会を主催するPGAツアーはR&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフクラブ・オブ・セントアンドリュース)およびUSGA(全米ゴルフ協会)と協議をしたうえで罰打を取り消しました。

新ルールの10.2b(4)には「プレーヤーがストロークのためのスタンスをとり始めてからそのストロークを行うまで」キャディはどのような理由であれ、プレーの線の後方延長線上やその近くに故意に立ってはならず、もし違反をしたらスタンスを解いても罰を逃れることはできないとあります。しかし、どの時点でスタンスをとり始めたのかの判断は難しく、素振りの時点で飛球線後方に立てなくなると、キャディの行動はかなり難しくなるでしょう。

実はこの裁定には伏線があり、1月の欧州ツアー「オメガドバイデザートクラシック」で中国のリー・ハオトンが最終ホールのバーディパットを打つ際に、キャディがプレーの後方線上に立っていたとして2罰打を科され、物議を醸していました。その1打は短いパットで、キャディが後方に立ってラインを見ている時にハオトンはボールに歩み寄りましたが、ボールの手前にパターをセットした時にはキャディは立ち去っていました。それからボールにセットアップして沈めたのですが、昨年まではよくある光景であり、キャディはプレーに何の影響も及ぼしていないように見えます。しかし、裁定は覆らず、R&Aは「スタンスをとり始める」の定義について「どちらかの足が最初にポジションに入る時を含む」という見解を発表したに留まっています。

競技としてのゴルフを楽しむ人にとって、このルールは重要であり、危険です。グリーンが複雑でキャディにラインを読んでもらうような場合は、特に注意が必要です。うっかりするとペナルティを科されるので、キャディがどこにいるかつねに意識している必要があるでしょう。



自然の力で動いたボールは基本そのままプレーする

最後にもう1つ。日本の女子ツアーで起こったのが風でボールが動いた場合のルールトラブルです。
2019年3月の「Tポイント×エネオス ゴルフトーナメント」の第2ラウンド、篠原まりあが10番グリーンでバーディパットを外した後にタップインしようとすると、風でボールが20cmほど動いてしまいました。競技委員の指示を仰ぎ、元の場所にリプレースしてプレーしたのですが、これが間違いでした。一度マークしていたならこの処置で正しいのですが、そのままプレーする場合は、「動いた後の場所から無罰でプレーしなければならない(ゴルフ規則9.3)」となっています。本来なら2罰打でしたが、ゴルフ規則20.2dが適用され「競技委員による間違った裁定」によって無罰となりました。

風や水など自然の力でインプレーのボールが動いてしまうことはたまにありますが、新ルールでは新しい箇所からプレーしなければならないので、覚えておきましょう。例外として、パッティンググリーンのボールを拾い上げてリプレースした後に動いた場合のみ、元の箇所に戻してからプレーすることができます。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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