マメ知識

ゴルフの雑学・マメ知識世界一面白いグリーンの形状は?
「ビアリッツグリーン」の特徴

2013.12.26

昔フランスにビアリッツゴルフクラブというコースがあり、その3番ホール(パー3)がユニークな形状をしていることで世のゴルファーの話題となりました。どんな形かというと、全体的には縦長の大きな長方形なのですが、真ん中に深い窪みがあり、グリーン面を前と後ろに分けています。もしもカップの切っていない面にボールが乗ると、パッティングはいったん谷のような窪みにボールを転がり落とし、そこから転がり上げていくという難しいものになります。つまりバーディをとるためにはピンの立っている面に乗せなければならず、ティショットの距離感が重要になるというわけですね。

このホールはグリーンの形状がユニークなら、ホールのレイアウトそのもの自体もユニークでした。グリーンの左右は2つずつの四角いバンカーでガードされていて、ホール全体が幾何学模様を描いていたのです。

ビアリッツグリーンを攻略する鍵はピンの立っている面に乗せることだが、それがなかなか難しい…

ビアリッツグリーンを攻略する鍵はピンの立っている面に乗せることだが、それがなかなか難しい…

このホールでのプレイはエキサイティングでした。なぜなら、ただグリーンに乗せただけではパーをセーブできないからです。カップのある面と反対側の面に乗せてしまうと3パットは必至。窪みからのパッティングですら、距離を合わせるのが難しいのです。変な場所に乗るよりは、アゴが深くないバンカーからのほうがパーがとれることもあります。自分の得意なショットを把握しつつ、ピンの立っている場所を考えつつ、使うクラブの番手や球筋、ミスした場合に外す場所を考えながらティショットを打つ、という面白さがあるわけですね。

ビアリッツゴルフクラブを設計したのはウィリー・ダン・ジュニアというスコットランド人です。父親はロイヤルブラックヒースGCのグリーンキーパー、そして15歳年上の兄もまたグリーンキーパーという家庭に育ったウィリーは、1881年に兄のいるノースベリックGCに入り、自身もグリーンキーパーとしての道を歩み始めます。1880年代の後半、フランスのビアリッツで兄と共にコース設計の仕事を行い、兄がイギリスに戻ってからもビアリッツGCに残り、コースを完成させたというわけですね。その後、ウィリーはフランスからアメリカに渡り、シネコックヒルズの所属プロゴルファーになります。そこで12ホールだったコースを18ホールに拡張させるなど、ここでもコース設計の才能を発揮しました。

ウィリーはゴルフの腕も突出していて、1894年には全米オープンで優勝します。残念ながら、全米オープンが公式イベントになったのが1895年からなので、歴代チャンピオンに彼の名は刻まれていませんが、1895年の第1回大会でも2位になっています。

ビアリッツGCは現存していませんが、ウィリー・ダン・ジュニアの造った3番ホールのグリーンは世界中でコピーされています。距離がそこそこあり、グリーンの面積が広く、縦長で、真ん中に深い窪みのあるパー3ホールは「ビアリッツ」と呼ばれ、コース設計に面白みを加えているのです。形が長方形でないものもありますが、真ん中に大きな谷のような窪みがあってグリーンを前後に分断されているグリーンはビアリッツGCの3番ホールをアレンジしているといっていいでしょう。日本にも「ビアリッツグリーン」を採り入れているコースがいくつかありますから、このグリーンと出会った際は存分に楽しんでください。

絵と文
Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

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