マメ知識

ゴルフの雑学・マメ知識ゴルフ偉人伝「ジーン・サラゼン」
〜サンドウエッジの生みの親

2013.02.27

毎年3月が来るとゴルフシーズンの到来を実感し、4月になると気分はすっかりゴルフモードに、というゴルファーは多いことだと思います。なぜかというと、4月の第2週の週末にはマスターズトーナメントが開催されるからで、最も季節を感じるゴルフイベントといっていいでしょう。

マスターズは1934年に球聖ボビー・ジョーンズと実業家クリフォード・ロバーツによって開催された招待試合。以来、世界中のゴルファーの憧れとして特別な地位を保ち続けています。

マスターズの舞台となるオーガスタナショナルGCでは幾度となく名勝負が繰り広げられましたが、1935年、第2回大会でジーン・サラゼンが放った1打はいまでも語り継がれています。最終日の15番ホール、池越えのパー5の第2打を4番ウッドで打ったサラゼン。このボールが直接カップインしダブルイーグルを達成。ゴルフ史上最も有名な1打で首位を走っていたクレイグ・ウッドに追いつくと、翌日に行われたプレーオフでウッドを退け、メジャータイトルを獲得。栄光のグリーンジャケットに袖を通すと共に、史上初のグランドスラマーとして永遠に名を残すことになったのです。

ジーン・サラゼンは親日家で、自身の名前が付いたトーナメントが長年日本で開催されていたこともあるので日本のゴルファーにはよく知られていますが、当代きってのアイデアマンだということをご存知の方は少ないのではないでしょうか。スイング軌道を正しくするため、クラブヘッドに鉛を詰めた通常の2倍の重さのドライバーで練習をしたり、「リマインダーグリップ」といって、右手で持つ部分が太く、さらにはつねに左手を正確な位置に収められるように、グリップエンドの一部が削り取られているグリップを考案したのもサラゼンなのです。

サンドウエッジのバンスを発明したのもサラゼンです。サラゼンはバンカーが苦手で、なんとか克服しようとあれこれ考えていましたが、ある日離陸しようとする飛行機の尾翼を見たときに閃いたのです。パイロットが尾翼のフラップを上げ、飛行機が頭をもたげて離陸するその姿。9番アイアンのソールに同じような傾斜をつければクラブが砂に潜らないのではないかと考えたのでした。

サラゼンは9番アイアンのソールに様々な形の鉛をハンダ付けし、サンドウエッジの原型を作り上げると、自宅の裏にあるバンカーでテストを重ねます。1931年のことでした。そしてようやく納得できるソールの形状に到達すると、1932年からバンスのついたサンドウエッジをキャディバッグに忍ばせてトーナメントに出場し始めます。その絶大なる力を借りつつ、その年の全米オープンと全英オープンに勝利。翌33年は全米プロに勝ち、1935年のマスターズで達成するグランドスラムにつながるのです。

ダブルイーグルを達成した伝説の4番ウッドは行方がわからなくなっていましたが、1937年にサラゼンが日本に立ち寄った際、当時JGA(日本ゴルフ協会)理事だった石井光次郎に譲り渡したクラブが本物の可能性が高いということで、2000年4月6日にJGAからオーガスタナショナルGCに寄贈されました。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

Illustration by Takashi Nemoto

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