マメ知識

ゴルフの雑学・マメ知識ゴルフのカップ(ホール)の直径は
なぜ108ミリなのか

2011.01.31

パッティングの調子が悪いときってホールが小さく見えるものですよね。「穴が開いてないんじゃないの!?
なんて思うときすらあったりして…でももちろんホールの大きさはゴルフ規則で直径108ミリメートルと決まっています。
このサイズに決まったのは19紀後半のこと。場所はゴルフの聖地、セントアンドリュースのオールドコース。その頃のホールといえば、グリーンに適当な大きさの穴を掘ってそこに鉄の棒を差し込んだだけのものでした。穴の大きさはバラバラでしたし、次のホールのティーショットを打つため、プレイヤーがホールの中の土をつまんで持っていくので穴はだんだん大きくなってしまうのでした。
当時はリフトティーなどというものはなく、地面に土を盛ってその上にボールを乗せてティーショットしていましたからね。

この頃セントアンドリュースのコース管理を任されていたのはトム・モリスという老人。ただのお年寄りではありませんよ。全英オープン4度の優勝を誇る往年の名選手です。
もともとトムはセントアンドリュースのプロ、アラン・ロバートソンの元でクラブとフェザリーボール(牛革に羽毛を詰めたボール)を造る職人として働いていましたが、プレイでも頭角を現しプロになります。ところがトムは新しく考案されたガッタパーチャボール(歯の治療に使うゴムを使用したボール)の優れた性能にいち早く気付いてこれを使用し始めたため、フェザリーボールの売り上げが下がるのを危惧したアランから師弟関係を解消されてしまったのです。
仕方なく新設のコースであるプレイストウィックに移ったトムでしたが、ここでコース設計や管理、クラブとボールの製造販売、そしてレッスンと精力的に活動したことが認められ、1865年にセントアンドリュースに呼び戻されたのです。

トムはプレイストウィックで培ったノウハウを生かしてセントアンドリュースを改造していきますが、ホールはいまだ昔ながらに穴を掘っただけのものでした。これに納得のいかないトムは穴が広がらない方法を模索していましたが、ついに水道工事で使う排水管を切ってホールにはめ込むことを思いついたのです。
この秀逸なアイデアはたちまち周辺のコースにも広がり一般的になりましたが、トムが使った土管の直径がたまたま108ミリだったことから、1891年にゴルフの総本山であるR&Aはホールの直径を4.25インチ(108ミリメートル)と正式に定めたのでした。

それから120年が経ちましたが、このとき定められたサイズは全く変更されていません。誰も「変えよう」と言い出さなかったのですから、いかに108ミリメートルというサイズが絶妙だったかということですね。もしトム・モリスが違うサイズの土管を使っていたら、ゴルフというスポーツはこれほどまでの発展を遂げなかったかもしれません。

ちなみに現在のゴルフ規則では「ホールの直径は4.25インチ(108ミリメートル)、深さは少なくとも4.0インチ(101.6ミリメートル)以上でなければならない。円筒をはめこむ場合、円筒は土質の関係上そうすることが無理でなければ、少なくとも1.0インチ(25.4ミリメートル)以上パッティンググリーン面よりも下に沈めなければならない」となっています。


Honda GOLF編集部 小林一人

Honda GOLF編集長のほか、ゴルフジャーナリスト、ゴルフプロデューサー、劇画原作者など、幅広く活動中だが、実はただの器用貧乏という噂。都内の新しいゴルフスタジオをオープンし、片手シングルを目指して黙々と練習中。

Illustration by Takashi Nemoto

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