両手が自由に使え目線が立位に近い着座型ハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE」の研究開発



座ったまま体重移動するだけで、まるで歩くかのように全方位へ自然に移動でき、両手も使える。そんなモビリティがあれば従来の歩行や車いすでの移動を超えたいろいろな可能性が拡がります。

生活の中で人の役に立つことを目指すHonda Roboticsのコンセプトのひとつである「身体機能の拡張」に基づき、身体やスキルに制約されず、新しい価値を提供するためにハンズフリーパーソナルモビリティ UNI-ONE(ユニワン)の開発を行っています。

UNI-ONEとは

さまざまな人の可能性と喜びを拡げるハンズフリーパーソナルモビリティ

座る際は安定したローポジションで、移動の際は座面が上がってハイポジションに移行し立っている人に目線が近くなること。そして、体重移動だけで全方位に移動でき移動中も両手が自由に使えることがUNI-ONEの最大の特長です。立っている人の目線に近いと、移動しながら自然にコミュニケーションができます。また、手が自在に使えるため、移動しながらの作業が可能になるなど、さまざまな人の可能性を拡げることができます。

UNI-ONEの特長

UNI-ONEを実現した技術

人協調バランス制御技術と独自の車輪機構

Hondaは、生活空間におけるパーソナルモビリティとして、2012年にUNI-CUB、2013年にUNI-CUB βを発表しました。UNI-ONEは、そのUNI-CUB βから引き継ぐ「人協調バランス制御技術」と独自の車輪機構「Honda Omni Traction Drive System」をさらに進化させ、採用しています。

・人協調バランス制御技術
搭乗者の“歩行する時のような自然な姿勢の動き”を姿勢センサーにより検知し、その傾きや角速度といったデータを使って意図推定制御器で演算することで、搭乗者がその場に留まっていたいのか、あるいはどの方向にどのような速度で動きたいのか、という搭乗者の意図を推定します。その推定結果をもとに、安定化制御器で演算を行い、UNI-ONEが倒れすぎないように車輪を制御し、速すぎず遅すぎない自然な挙動を実現するフィードバック制御を行っています。
なお、2013年に開発したUNI-CUB βの2倍以上の制御演算速度でフィードバック制御を行うことで、姿勢のわずかな挙動によっても意図通りに移動することができるようになりました。その結果、高齢者から子どもまで、さまざまな人がより操縦しやすく、小回りが容易な高い操作安定性の実現につながっています。また、座位バランスがとれる下肢障がいの方にも対応できるように開発を進めています。

・独自の車輪機構「Honda Omni Traction Drive System」
歩行感覚を実現する移動機構として、全方位に高応答に移動することができるHonda独自技術の車輪機構Honda Omni Traction Drive System(HOTドライブシステム)を進化させ、左右に2基搭載し協調制御することで、全方位へのスムーズな移動を実現しています。

これらのソフトウェア:人協調バランス制御技術と、ハードウェア:HOTドライブシステムにより、車いすなどの従来の着座型モビリティでは実現困難だった、「壁や机などに手をついて進路変更すること」を容易にするとともに、中速域以上での移動の際の良好なライントレースを可能にしました。

※横浜市総合リハビリテーションセンターの監修のもと研究開発

  • 歩行のような自然な姿勢の動き

  • HOTドライブシステム

モード切り替え時のスムーズな昇降遷移と万一の際に可能な限り転倒を防ぐメカトロニクス技術

移乗時の「ローポジション」と、バランス制御を行う走行時の「ハイポジション」、2つのモードを切り替える際、地面の凹凸や搭乗者の少しの姿勢のずれが原因で、UNI-ONEが予想以上に大きく移動してしまう、地面への着地の衝撃がシートを通じて伝わってしまうなどの課題がありました。
これらの課題を解決するため、モード切り替え時に昇降する部分(シートおよび着地脚部)と車輪機構ユニットの間に柔らかいゴムブッシュを組み込み、安定化制御器でゴムブッシュの特性を考慮した最適なバランス制御を行うことでスムーズなモード遷移を実現しました。
また、通常はモード遷移を昇降ボタンにより電動で行っていますが、なんらかのエラーが発生した場合には、エラー検知と同時に機械的にローポジションに速やかに移行することで、可能な限り転倒を防ぐようにしています。

  • UNI-ONEの昇降機能

  • 各モードの機能と遷移方法

UNI-ONE基本動作の紹介

開発に携わった3人の技術者によるUNI-ONEの紹介

UNI-ONEのユースケース

さまざまなシーンでこれまでにない選択肢を増やし、喜びを拡げるために

たとえば、親子3代でテーマパークに行った際、UNI-ONEがあれば、長時間の歩行に自信がない年配の方の負担を軽減し、家族と一緒に移動して楽しむことが可能になるかもしれません。また、下肢に障がいのある方でも、UNI-ONEに乗れば、移動しながら両手が自由に使えて仕事や作業をしやすくなるでしょう。移動に車いすが欠かせない方も、介助の方に車いすを押してもらうのではなく、一緒に並んで会話しながら自分の力で歩くように移動することもできます。あるいは仕事で広いエリアを移動する場合には、負担を減らすことができます。
さまざまなシーンでこれまでにない選択肢を増やし、日々の生活をより楽しんでいただき喜びを拡げること。それがUNI-ONEのグランドコンセプトです。

UNI-ONEの利用想定シーン

さまざまな施設で長時間の歩行に自信がない方の移動をサポートしたり、スタッフの負担軽減のための利用。


歩く人と近い目線で散歩を楽しんだり、下肢に障がいがある方の仕事の幅を拡げるための利用。

新たなエンターテイメントへの活用も想定

両手が自由に使えて身体機能を拡張するUNI-ONEの特長を活かし、XRゲームへの活用など、リアルな体験の中にデジタルを融合することで新しい価値を提供することも想定しています。

※XRとは、Extended Realityの略。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった、現実世界と仮想世界を融合することで現実にはないものを知覚できるようにする技術の総称。

想定しているゲームシーン

ルートを辿るゲームで乗り物として使用し、障害物に接触すると機体が振動するなどの演出を行ったり、自在に移動しながら両手を活かすレースゲームなどへの利用。

UNI-ONEのユースケースイメージ

開発チームの想い

乗っている「人」の笑顔を思い浮かべ
より楽しく人生を過ごしてもらうことを目指して

長時間の歩行に自信がない年配の方や下肢に障がいのある方でも、転倒の不安を低減し安心して乗っていただくために、屋外使用も想定しさまざまな状況での転倒対応の研究を進めました。シートの高さなどは、実際に車いすを使っている方や介助している方にお話を伺い、検証を重ねながら決めていきました。デザインも、人混在空間で活用するモビリティとして、小ささと安定性という相反する課題を両立させながら、人に優しい丸みのあるデザインを設計とともに煮詰め、成立させました。
UNI-ONEは、いろいろな用途へ使用できる使い勝手のよさだけでなく、とてもリラックスして歩くように移動できることも魅力だと考えています。

そんなUNI-ONEを身近に体験いただくために、2022年10月から鈴鹿サーキットパークで実証実験を実施しています。さまざまな方に楽しんでいただき、貴重なデータやノウハウを蓄積していきます。また、大分県の障がい者支援施設である太陽の家や、障がいのある方が活躍するホンダ太陽などで意見交換やヒアリングを行い、UNI-ONEの開発にフィードバックしています。
障がいの有無や年齢を問わず、多くの方にもっと笑顔になってもらいたいという想いを実現するために、チャレンジし続けます。

鈴鹿サーキットパークでのUNI-ONE実証実験のひとつである体験ブース

お名前

(写真左から)

株式会社 本田技術研究所 先進技術研究所 フロンティアロボティクス
UNI-ONE 電装領域担当

五島 正基(ごとう まさき)

株式会社 本田技術研究所 先進技術研究所 フロンティアロボティクス
UNI-ONE 車体領域担当

野原 大督(のはら だいすけ)

株式会社 本田技術研究所 デザインセンター イノベーションデザイン室
ソリューションデザインスタジオ UNI-ONE担当

望月 鞠花(もちづき まりか)

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