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※ドライビングシミュレーターの使用シーンです。

交通事故死者ゼロ達成のために
ヒューマンエラーゼロを目指す知能化運転支援

開発ストーリー

Hondaは、2050年に全世界でHondaの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロの
実現を目指しています。バイクやクルマの安全技術が進化しても
それだけでは交通事故死者をゼロにすることはできません。
ヒューマンエラーをなくし、「人の運転を安全にする」取り組みが必要です。

完全な自動運転が実現すれば、ドライバー側のミスはなくなりますが
自由な移動の喜びを大切にするHondaでは、これからも人による運転を重要と考え
知能化運転支援技術で人の能力を拡張し、運転を安全にすることに挑みます。
人々が安心して移動できる社会の実現を目指して。

交通事故死者ゼロを目指すために

人に寄り添う

交通事故死者ゼロ社会の実現のためには
ドライバーの誤った運転操作=ヒューマンエラーによる事故も
なくさなければなりません。Hondaは、ヒューマンエラーを
解明するために人の脳に着目。ヒューマンエラーは一律ではなく
それぞれの人に寄り添う対応が必要であることがわかりました。

脳の働きとヒューマンエラーの
研究を始めた経緯

ドライバーによる誤った運転操作、すなわちヒューマンエラーとは、運転経験不足による危険の見落としや誤操作、高齢者の機能低下や体調変化などです。人の運転からヒューマンエラーをなくすことができれば、事故低減につなげることができます。
脳研究を始めたのは、クルマの運動性能が向上する研究の過程で、ドライバーが性能進化を感じる要因と運転行動の関係に注目したのがきっかけでした。そこから運転行動と事故の関係を研究しはじめ、運転行動の真因を探るために、人の脳の働きとヒューマンエラーの関係の研究に着手し、ヒューマンエラーを起こさない運転支援についての研究へと発展させました。

出典:平成29年版交通安全白書の法令違反別
(第1当事者)死亡事故発生件数

ドライバーの視線と脳の働きと
ヒューマンエラーの多様な関係

地球上に目の機能を持つ生物が誕生したあと、約5億年遅れて脳が発達したことを知り、目の情報を高次に処理する脳を把握して人の安全運転に応用したいと考えたことが、脳研究を進展させる大きな動機となりました。
fMRIを使って、ドライビングシミュレーターを操作している人の脳の働きと目の動きを調査しました。その結果、安全運転に関してリスクの高いドライバーは空間認識力が低く、危険が見えていなかったり予測していないことが大きなリスク要因であることがわかりました。その他に経験した記憶や知識を元に、人はリスクを判断していることがわかりました。

※fMRI:functional magnetic resonance imaging=磁気共鳴機能画像法。MRI装置を使って無害に脳活動を調べる方法

ドライビングシミュレーターを操作できるMRI装置
一般ドライバーと危険と出遭うことの少ないリスクミニマムドライバーの脳の働きの違い
運転には脳の各部の働きが関わっています。安全運転に関してリスクの高いドライバーはこの働きが弱くなります。

規範運転モデルを設定

リスクミニマムに導く

人によってさまざまなヒューマンエラーが存在することから
リスクミニマムの運転を行う規範運転モデルを設定し
規範運転モデルとその人の差分を支援するシステムを研究しました。

AIがリスクミニマムの運転に導く

安全運転に関するリスクには個人差があるため、すべてのドライバーを支援するためには、ものさしとなる見本運転のデータが必要です。そこで、安全な運転を行う人の脳の働きを、リスクミニマムの規範運転モデルとして設定しました。ドライバーの視線の動きと運転操作、周囲の道路交通状況のデータを取り、規範運転モデルと比較してドライバーのリスク度を推定し、規範運転モデルとの差分を埋めるアシストを行うのが「知能化運転支援」の基本の考え方です。
ドライバーの運転に対し、規範モデルの運転と同じになるような支援をAIシステムによってリアルタイムに導き出します。規範運転モデルには、リスクミニマムとなる目の使い方、脳の使い方、手足の動かし方の特性が組み込まれてあり、ドライバーの目の動きや運転操作に時間的な遅れや量の不足などがある場合にはAIがサポートしていきます。

ドライバーの目の動きと運転操作から、安全運転に対するリスクの高さを推定し、AIが規範運転モデルと比較しリスクミニマムになるよう支援する

知能化運転支援により
リスクドライバーの能力を拡張

知能化運転支援は、安全運転に関するリスクの高いドライバーの運転を矯正することを目指しているわけではありません。そのドライバーには見えていなかった歩行者などを見つけられたり、カーブで正しいタイミングでステアリングを切り始められたり、合流車に対して適切なタイミングでアクセルコントロールができるようなHMIや操作支援を行い、まるで運転が上手くなったような感覚を与えることを目指しています。それにより、さまざまなドライバーが抱える運転に対する不安を取り除くことができ、積極的に出かけてみたいという気持ちを引き出すことができると考えています。

※Human Machine Interface:人間と機械が情報をやり取りするための手段や装置


経験不足のドライバーに多い狭い視野を、リスクミニマムドライバーのように広げ
運転操作の支援を行うことでヒューマンエラーを低減し
まるで運転が上手くなったと感じるような運転能力の拡張を目指す

運転能力を直感活用HMIで支援

運転を安全にする

知能化運転支援のAIシステムを導入したドライビングシミュレーターをつくり
現在、さまざまな人に体験していただきながら、評価と運転データを蓄積中です。
さらに、一部の機能を導入したテスト車両で支援の体験走行を行っています。

直感活用HMIで運転を支援する
ドライビングシミュレーター

知能化運転支援のAIシステムを導入したドライビングシミュレーターを製作し、運転支援を体験する実験を行っています。視線の動きと操作情報、走行結果からヒューマンエラーのリスク度合いを推定し、状況に応じた運転支援を、ヘッドアップディスプレーの表示やシートベルトの引込みなどによる認知のアシスト、ステアリング操作のアシスト、アクセルペダルの反力など直感的なHMIでリアルタイムに支援します。さまざまな方のドライビングシミュレーターの実験結果に基づいて、リスク推定と運転支援の仕方を検証・進化させています。これからは、実際のクルマで実際の道路を走行し規範運転モデルの妥当性を検証して、規範運転モデルのアップデートをしていく必要があると考えています。

■ ヒューマンエラーを推定 ・ドライバーモニタリングカメラで目の動きと顔の向きを把握
・ハンドル操作/ペダル操作/車両挙動をセンシング
・AIシステムで規範モデルと比較
■ 直感活用HMIで運転支援を実施 ・ヘッドアップディスプレーで注意喚起
・シートベルトの引き込みで注意喚起
・ハンドル操作支援/ペダル操作支援

システムの一部を導入したテスト車両で
知能化運転支援を体験

ドライバーの視線と顔の向きを測定するドライバーモニタリングカメラを搭載し、AIシステムを導入したテスト車両を試作しました。ルーフ上に設置した特殊なカメラでクルマの周囲の状況をモニタリングし、ドライバーの視線の動き・運転操作のデータ・車両挙動の情報からAIシステムがリスク度を推定し、規範運転モデルに近づける運転支援を行う車両です。
HMIとしては、左右への注意を促すLEDインジケーターとシートベルトの引き込み装置、どの方向から危険が迫っているかを音で体感できる立体音響システムを搭載。実車で運転支援を体感し、システムの検証・進化を行っています。

システムの一部を搭載したテスト車両
運転支援の1シーン。カメラが捉えた歩行者の存在を事前にインジケーターで知らせる

世界の人々の運転を安全にしたい

運転と脳の働きの関係を研究するなかで、安全運転に関してリスク度の高いドライバーは視野が狭く空間認識力が低いことがわかりました。また運転には記憶も重要で、人は経験した記憶や知識に照らし合わせてリスクを減らす運転をしています。
知能化運転支援で、今まで見えていなかった危険をドライバーが認識でき、安全かつスムーズに運転ができるようになることは、「今までできていなかったことができる」ことであり、達成感や満足感を得ることができます。運転に対するそれぞれの人が抱える不安が解消され、喜びを得ることができれば、人は自由に移動する喜びを得続けたいと思うのではないでしょうか。そして、すでにHondaが世界に展開している安全運転普及活動のネットワークも利用しながら、その国で最も安全な運転をする方の協力を得て、世界の交通事情に合せた規範運転モデルを構築し、世界のお客様一人ひとりに合せて安全・安心な運転にしたいと考えています。

お名前
株式会社本田技術研究所
先進技術研究所
樋口 実

1983年入社。ビークルダイナミクスの研究、アコード、オデッセイ、レジェンドの開発に従事。2014年よりヒューマンファクターの研究、運転支援技術のプロジェクト推進責任者、現在は次世代技術の企画を担当

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