スジアラ
分類
スズキ目スズキ亜目ハタ科スジアラ属
学名
Plectropomus leopardus
別名
アカジンミーバイ、ハージン
分布
主に九州南部の島々と琉球列島に分布し、伊豆・小笠原諸島、相模湾から屋久島までの太平洋沿岸、九州西岸の東シナ海沿岸に散発的にみられる。
大きさ
最大で1.2mに達する。
釣期
春~秋の高水温期によく釣れる。
棲んでいる場所
沿岸の岩礁やサンゴ礁外縁に定住し、水深3~100mの幅広い水深帯に棲む。
生活史
沖縄海域における産卵期は5~7月で、径0.82~0.93mmの分離浮性卵を産む。仔魚は長い第2背ビレ棘と腹ビレ棘をもち浮遊生活を送り、背ビレ・臀ビレ棘の長さは全長8~12mmで体長を超える。浮遊期から着底期の生態は詳しく分かっていないが、10cmを超える幼魚は主に砂地のガレ場やサンゴの隙間にすみ、成長に伴って徐々に深場へ移動し、40cmを超えるとやや深い岩礁域に定着する。雌性先熟型の性転換を行ない、性転換中の個体は55~70cmにみられ、それよりも小さなものは雌、大きなものは雄である。肉食性で、エビやカニなどの甲殻類や小魚を食べる。資源は減少しておりその回復を図るため、人工種苗生産と放流が行なわれ、八重山漁協では35cm以下の水揚げが禁止されている。近年では養殖も行なわれている。
特徴
大型のハタ類は互いによく似ているが、本種を見分ける際には尾ビレの形に注目するとよい。多くの大型ハタ類では、尾ビレの後縁が丸みを帯びるか直線的なものが多いが、本種は少し湾入することが最大の特徴。体色の個体変異は大きく、鮮やかな赤色をはじめ、褐色や紫色のものなど様々で、沖縄では赤い個体をアカジン、黒い個体をコクジンと呼ぶ。頭部、体側と各ヒレには瞳孔よりも小さな白~水色の小斑点が散在する。最もよく似た同属のコクハンアラ(P. larvis)とは、胸ビレが淡色(コクハンアラは胸ビレ全体または一部が黒色)、眼が水色で縁どられる(コクハンアラは縁どられない)ことで識別できる。食用魚として世界的に人気が高く、乱獲による資源の減少が懸念されており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。
主な釣り方
大型魚の豪快なファイトと食味の良さとが相まって、沖縄方面では人気の釣りもの。近年は温暖化傾向を背景として分布域が北上。九州南岸でもねらって釣れるようになってロックフィッシュファンを熱くさせている。釣り方は磯からのブッコミ釣りとルアー釣り、船からのルアー釣りと泳がせ釣りに大別される。ブッコミ釣りではイシダイ用のタックルを流用し、ハリはすっぽ抜け防止のためモロコバリなど大きなものを使う。アジやサバなどの死にエサを1尾掛けするほか、現地で釣ったイスズミ(Kyphosus vaigiensis)やタカサゴ類(Pterocaesio spp.)なども有効なエサとなる。ルアー釣りは大型スピニングリールを用いたキャステイングが基本となり、ミノーやメタルジグなどのハードルアーとシャッドテールワームやグラブなどのソフトルアーを状況によって使い分ける。船からはバーチカルジギングでもねらえる。泳がせ釣りは、ドウヅキ仕掛けの1本バリに活きたムロアジ類(Decapterus spp.)やタカサゴ類を掛けて海底直上を泳がせる。いずれの釣り方でも、アワセが決まったら一気に根から引きはがすことが肝要で、サオで聞いたり躊躇すると根に潜られて一巻の終わりとなる。
美味しい食べ方
沖縄三大高級魚のひとつ[他2種は、マクブー〔シロクラベラ(Choerodon schoenleinii)〕、アカマチ〔ハマダイ(Etelis coruscans)〕]、近年では全国的に評価が高まっている「超」がつく高級魚。味は一年中よく、旬は特にないようだ。身は透明感がある白身で、皮、アラ、身からは深い旨味の出汁と脂が出る。締めて4、5日置くと旨味が強くなり、刺身、煮物、蒸し物、焼き物、揚げ物、鍋や味噌汁とどのように調理しても美味い。特にマース煮は少量の塩水を使って蒸し煮にする沖縄の郷土料理で、頭やカマを使うと身だけではなく皮のゼラチン質や骨からの出汁も同時に味わえる絶品である。
※この図鑑は、釣り人のために作られています。
そのため魚の名称は標準和名ではなく、釣りの人の間で呼ばれている通称名が使われているものもあります。