オヤニラミ
分類
スズキ目スズキ亜目ケツギョ科オヤニラミ属
学名
Coreoperca kawamebari
別名
カワメバル、ヨツメ、ミコノマイ、ミズクリセイベイ
分布
京都府桂川水系(保津川)・由良川以西の本州、四国北東部、九州北部の河川に分布。人為的に移入され滋賀県、奈良県、岐阜県、愛知県、東京都などに定着。
大きさ
最大で14cmになるが、通常は8cm前後。
釣期
水温が高い5~10月が釣りやすい。
棲んでいる場所
水が澄んだ河川の中・下流域の緩流部や小川、農業用水路などに棲む。砂礫~砂泥の底質で水生植物が繁茂する環境を好む。
生活史
産卵期は4~9月で、盛期は5~6月。雄はヨシの茎や流木等の産卵基質を中心に顕著なナワバリをつくり、産卵基質を掃除して雌を招き入れて卵を産みつけさせる。雌は径2.2~2.4mmの卵を数日のうちに100~500粒産む。卵は雄によって保護され、2週間ほどで全長5.1~5.8mmの仔魚が生まれる。仔魚は1~2日は植物の陰などに隠れ、雄親に守ってもらう。この保護習性を利用して、コイ科のムギツク(Pungtungia herzi)が托卵(オヤニラミの産卵基質に卵を産みつけて卵や仔魚を雄親に守らせる)することが知られている。
稚魚になると単独生活を始め、動物プランクトンや小型の水生昆虫などの動くエサしか食べなくなる。性質は非常に攻撃的で、特に卵保護中の雄は自分よりはるかに大きな他の魚やヒトの手に対しても攻撃を仕掛ける。産卵期以外でも同種に対しては雌雄とも闘争性を示し、ナワバリをもつ。満1歳で5~6cmになり、成長がよい個体は繁殖に参加する。寿命は5歳前後と考えられるが、飼育下では10年を超えて生きるものがある。
特徴
日本産の純淡水魚としては珍しいスズキ目スズキ亜目の魚類。海産魚類のメバルに似た印象から「カワメバル」とも呼ばれ、これが学名「kawamebari」の由来になっている。
「ヨツメ」との地方名が広くあるように、エラブタの上方に青~緑色で前方は赤く縁どられた特徴的な眼状斑をもつ。眼から後方へ放射状に延びる暗朱色の帯は、体の上に「にせの魚」の頭部輪郭や口を描き出し、眼状斑はにせの魚の眼となる。体色は緑がかった黄褐色で背面はやや暗色、体側には6~7本の暗褐色の横帯をもつが、体色変化が激しく横帯は判別し難いことが多い。環境省レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されている。
主な釣り方
動くエサにしか反応しないため、動きが良いキジを使ったエサ釣りが最も効果的であるが、近年はルアー釣りが注目されている。いずれの釣り方でも、オヤニラミはヨシ帯の穴やワンド状のくぼみ、倒木や沈木などのストラクチャー周り、積まれたコンクリートブロックの穴やくぼみに単独でナワバリを構えているので、そこをピンポイントでねらえる仕掛けを用いる。
エサ釣りでは、ノベザオによるミャク釣り・チョウチン釣りのほか、メバル・アジングロッドやウルトラライトのバスロッドを用いたダウンショットリグにエサのキジをつける。ルアー釣りでは、ワームを筆頭に極小のスプーンやミノーで実績がある。興味深いのは体長に近いサイズのサスペンドミノーで釣れたケースである。同種に対する強い闘争性に照らすと、ナワバリ防衛のためミノーを攻撃した可能性があり、アユの友釣り的な釣法への発展を予感させる事例である。
美味しい食べ方
原産地域で食用にされておらず絶滅の懸念もあることから、キャッチ・アンド・リリースが推奨される。ただし、釣った場所以外への放流は分布をかく乱させるおそれがあるため厳禁である。
※この図鑑は、釣り人のために作られています。
そのため魚の名称は標準和名ではなく、釣りの人の間で呼ばれている通称名が使われているものもあります。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。