ガザミ
分類
十脚目短尾下目ワタリガニ科ガザミ属
学名
Portunus trituberculatus
別名
ワタリガニ、ガンツ、ガネ、ヒシガニ、ガンチン、ガゼガニ、オドリガニ
分布
北海道南部から九州までの日本沿岸に分布。
大きさ
最大で全甲幅25cmになる。
釣期
4~12月に釣れ、6~10月が最盛期。
棲んでいる場所
内湾の水深30mまでの砂泥底に棲む。夏場は水深数mの浅所で盛んに活動し、冬場は深場に落ちて越冬する。
生活史
夏から秋に交尾し、交尾後の雌は雄から受け取った精子を貯えて深場で越冬する。雌は越冬明けの4~9月に小型で2回、大型で3~4回産卵する。産卵数は80~450万粒で雌の大きさに比例する。卵は半年以上も貯えられた精子によって受精し、受精卵は腹節(フンドシ)に抱えられてふ化するまで2~3週間保護される。ふ化したゾエア幼生は3週間前後の浮遊生活中にメガロパ幼生から稚ガニへと変態し、全甲幅11mmになって干潟のクリークやアマモ場に着底する。稚ガニは、砂に潜ったりアマモの茂みに隠れてハゼ類などの外敵から逃れつつ、主に底生動物を捕食して急速に成長する。稚ガニの出現盛期は7月で、11月頃までに大きいもので18cmに達し、成熟・交尾して越冬する。越冬明けの5月から再び成長し、2度目の秋には25cm近くに育つ。寿命は2歳で、遅生まれの一部は3歳。
特徴
美味な水産有用種を多く含むワタリガニ科の代表種で、北洋や深海の大型カニ類が登場するまで日本を代表する食用ガニだった。一番後ろの脚先が平たいオール状の遊泳脚であることが本科の大きな特徴で、これを使って活発に泳ぐ。ハサミ脚は強大で、挟まれると怪我をする。甲は横長で左右に大きな棘が張り出す。甲や脚の背面は黄緑褐色で、輪郭が不明瞭な不定形の白い斑紋が散る。雄は雌より大型になる。刺網、篭網、小型底びき網などで漁獲されるが、近年は多くの海域で環境悪化や乱獲により減少傾向をたどり、中国、韓国などからの輸入が増えている。九州などではブランド化に力を注いでおり、水揚げサイズや漁期の厳しい規制と種苗放流によって資源保護を図っている。東京湾ではかつて本種がカニの代名詞だったが、高度経済成長期に激減したうえ2000年代に入るとさらに減少が進み、代わって同属のタイワンガザミ(P. pelagicus)が増えている。
主な釣り方
市販のカニアミ仕掛けにエサを仕込んで海底に沈め、網目に絡んだカニを釣り上げる。20~40号のオモリを背負える投げ竿などに中大型スピニングリールの組み合わせで、足元~沖合に仕掛けを投入しての待ち釣りとなる。アタリはほとんど出ないので定期的に仕掛けを回収してエサの食われ具合をチェックする。サオを2組出すと効率的にポイントを探ることができ、夜に行動が活発化するので夜釣りに分がある。エサはイワシなどの小魚を用いるのが一般的だが、各種集魚剤の使用など工夫の余地が大きい。
美味しい食べ方
旬は越冬期に入って脱皮をしなくなる晩秋~春で、俗に「カニ味噌」と呼ばれる肝膵臓が充実し身入りもよい。特に濃厚な内子を持った雌は珍重される。一方、夏場は脱皮にエネルギーを費やすので平均して身入りがよくない。上品な身は淡泊だが甘味が感じられ、カニらしい風味も強い。食べ方のバリエーションは乏しく、蒸すか茹でるかにほぼ限定される。味噌汁では味噌との相性が最高で、小型のものは殻が薄く食べる際にあまり邪魔にならない。殻から外した身を炊き込んだカニ飯は、かけた手間に余りあるぜいたくな一品。生食は水っぽくて味わいに乏しくお勧めしないが、韓国では辛い調味液に漬け込んだものを「ケジャン」と称し盛んに生食する。
※この図鑑は、釣り人のために作られています。
そのため魚の名称は標準和名ではなく、釣りの人の間で呼ばれている通称名が使われているものもあります。