どんなジャンルの釣りを楽しむ時にも欠かせないテクニックに「釣り糸の結び方(フィッシングノット)」があります。テクニックというと、少し大げさに聞こえるかもしれませんが、上手な釣り人はまず例外なく、自分の釣りの仕掛けに使う釣り糸の結び方を吟味しています。
もし釣りで糸が切れたりほどけたりしてしまったら、どんなに他の道具が立派であっても魚は釣れません。釣り糸はまさに生命線で、だからこそ昔から多くの釣り人たちが「どういう結び方をしたら失敗しないのか」を熱心に探究してきました。
釣り糸の結び方には、いろいろな種類がありますが、それには理由があります。釣り糸の結び方に求められる要素が1つではないからです。
などがあります。複雑すぎる結び方は実践的ではありませんし、釣りを始める前に家でしっかり結ぶことが前提でよい場合もあれば、揺れる船の上や風が吹いている屋外でも結べないと意味がない場合もあります。釣り糸の結び方にはそうした適材適所もあるので、「1つ覚えておけば充分なんじゃないの?」とはならないわけです。そこが面白いところでもあります。
いずれにしても「何回やっても安定して結べて」「充分な強度が得られている」なら、それは正しい釣り糸の結び方です。その際は、もちろんある程度の練習も必要になります。
そして現在の釣りで使用されている釣り糸の結び方を理解するには、釣り糸の種類についてもあらかじめ頭に入れておくほうが役立ちます。現在の釣り糸は大きく分けて「PEライン」と「モノフィラメント系ライン(ナイロン、フロロカーボン、エステルなど)」の2つがあり、PEラインとモノフィラメント系ラインを結ぶ時と、モノフィラメント系ライン同士を結ぶ時とでは基本的な結び方が違うからです。
もともと釣り糸はモノフィラメント系ラインだけでした。幅広く使える透明な釣り糸のことで、ハリに結ぶハリスは今でもすべてモノフィラメント系ラインになります。
PEラインというのは、1990年頃から登場するようになった、モノフィラメント系ラインとは構造が異なるラインです。ミクロレベルの極細の原糸(原糸自体はモノフィラメント系ラインと同じく化学繊維)を密に撚り合わせたラインになっています。PEラインはモノフィラメント系ラインと比較すると、同じ直径ならおよそ3倍の強さがあり、なおかつモノフィラメント系ラインのように引っ張っても伸びません。そのためリールに巻いて使う釣りのミチイトの主役になりました。ただし、伸びがなくなおかつ表面が滑りやすいという性質から従来の方法では結びにくく、PEラインのための専用の接続方法(摩擦系ノットと呼ばれます)がいろいろと考えられるようになりました。
現在の釣りシーンでは、このように違う種類の釣り糸が存在していることと、釣りのジャンルごとに仕掛けが違うことから、釣り糸の結び方もさらにバリエーションがある状態になっています。
ここでは同じ春に人気の高い「メジナ釣り」「メバル釣り」「ヤマメ釣り」の3つの釣りジャンルを例に、仕掛けの中でよく使われている釣り糸の結び方を挙げてみましょう。ひとくちに釣りといっても、多彩な釣り糸の結び方が利用されていることがわかると思います。
メジナ釣りは磯や堤防から楽しむ「ウキフカセ釣り」の一種になります。サオは5.3mほどのリールザオ(磯ザオ)とスピニングリールを使い、潮の流れに乗せて仕掛けをねらった場所に運びます。
よく使われる釣り糸の結び方は、「ブラッドノット」「ストロングノット」「外掛け結び」などです。また、もともとはミチイトにナイロンラインを使う人が多かったのですが、最近はPEラインを利用する人も増えてきました。その接続には「FGノット」などが使われます。
メバル釣りも春に人気の釣りです。メジナと同じく磯や堤防から釣れますが、近年特に人気が高いのが、アジングと並んで海のライトゲームの代表格になっているメバリングです。
アジングやメバリングなど、海のライトゲームでよく使われる釣り糸の結び方は、「FGノット」「トリプルサージャンズノット」「ハングマンズノット」「パロマーノット」「ユニノット」などです。
渓流で楽しめるヤマメ釣りには、エサ釣り、フライフィッシング、テンカラ釣り、ルアーフィッシングと多彩な釣り方がありますが、エサ釣りの場合は長いノベザオ(渓流ザオ)に糸、目印、オモリ、ハリのシンプルな仕掛けで釣りをします。
この時にはノベザオにミチイトを接続するための「チチワぶしょう付け」や、「目印をとめる結び(これも結びの1種)」「8の字結び」「外掛け結び」などが使われます
メジナ釣り用の結びはクロダイ釣りでも使えますし、メバリング用の結びはアジング、エギング、シーバスフィッシング、ロックフィッシュゲーム、さらには渓流のトラウトルアーフィッシングにも使えます。ヤマメのエサ釣りで使う結びも、同じノベザオの釣りであるハゼ釣り、テナガエビ釣り、タナゴ釣りなどで役立ちます。つまり1つのジャンルの釣り糸の結び方をしっかり覚えておくと、挑戦できる釣りの幅もあっという間に広がるのです。だからこそ、釣りをもっと深く楽しむためには、これが間違いないという正しい釣り糸の結び方を少しでも多く覚えることが役立ちます。思い立ったが吉日。ぜひいろいろな釣り糸の結び方にチャレンジしてみてください。
動画でチェック!
メジナ釣り、メバル釣り、
ヤマメ釣りの名手が
こだわりの
釣り糸の結び方を直伝
メジナ釣り(磯のウキフカセ釣り)、メバル釣り(海のライトゲーム)、ヤマメ釣り(渓流釣り)の名手として知られる3人のアングラーが、自身の使っている釣り糸の結び方を詳しく紹介。ほかでは見られないリアルなアドバイスと実演は必見です!