新品のリールの巻き心地は滑らかでついついクルクルと回したくなりますよね。しかし、そんな快適な巻き心地も含め、リールは手入れをしなければすぐに性能が落ちてしまいます。釣行後の水洗いはもちろん、定期的にメンテナンスをすることでリールの性能を長持ちさせることができます。

リールメンテナンスにはリールを分解して清掃する(オーバーホール)という方法もありますが、これは非常に難しいのでメーカーやプロショップに依頼するのがベターです。しかし、メンテナンスはオーバーホールだけではありません。今回は誰でも簡単にできる注油方法やオイルそのものについて、お話しします。

オイルを差す頻度

前提として水洗いは必須です。釣行から帰ってきたら毎回水洗いをしましょう。これはスピニングリールでもベイトリールでも同じです。温かいと内部のグリスが溶け出てしまうのでお湯はNGです。注油は毎回である必要はありません。頻度や使用状況にもよりますが、目安としては5~6回釣行したら注油するようにしましょう。

複雑な工程で次第に面倒になりメンテナンスしなくなってしまう…ということを避けるために今回は必要最低限で簡単にできるリールの注油箇所をご紹介します。

リールメンテに必要なものは注油するオイルやグリスのほか、古い油分を脱脂するためのパーツクリーナー、拭き取るためのペーパーや綿棒、リールを分解するのであればドライバーなどの工具

ベイトリールの注油箇所

ベイトリールへの注油はサイドカバーに付いているベアリング、スプールに付いているベアリング、レベルワインダーが簡単です。後述しますが、回転部であるベアリングにはオイル、レベルワインダーのような摺動(しゅうどう)部にはグリスを注油するのが基本となります。レベルワインダーのグリスが変色していた場合はパーツクリーナーと呼ばれるケミカルを使って古いグリスを落として(脱脂)から塗り直すとよいでしょう。オイルは一ヵ所につき一滴たらせば充分で、ペーパー等を使って余剰分を取り除きます。グリスも綿棒などを使い、極少量を薄く塗り広げるようにしてください。

①サイドプレート

1
2
ベイトリールのサイドプレートに注油。余剰分は綿棒で吸い取る
ベイトリールのサイドプレートに注油。余剰分は綿棒で吸い取る

②レベルワインダー

1
2
3
レベルワインダーにはグリスを塗布。綿棒で大まかに塗ったらリールのハンドルを回せば全体に行き渡る
レベルワインダーにはグリスを塗布。綿棒で大まかに塗ったらリールのハンドルを回せば全体に行き渡る

スピニングリールの注油箇所

スピニングリールの場合はベールアームの可動部にグリス、ラインローラーにオイルを注油するのが簡単です。ラインローラーは汚れを含みやすいのでパーツクリーナーを使って入念に掃除するとよいでしょう。ラインローラーを分解して注油すると性能維持により効果的ですが、小さいパーツばかりなのでなくさないように注意してください。

また、ハンドルノブにもベアリングが使われている機種があるので、その場合もオイルを差しましょう。

①ベールアーム

ベールアームの可動部も忘れずにメンテナンスを行いたい。ここはグリスが推奨されている

②ラインローラーなど細かいパーツ

1
2
ラインローラーなどの細かいパーツを脱脂する際はパーツクリーナーを直接吹きかけるのではなく、綿棒にしみこませてから拭き取るようにするとよい
ラインローラーなどの細かいパーツを脱脂する際はパーツクリーナーを直接吹きかけるのではなく、綿棒にしみこませてから拭き取るようにするとよい

③ボールベアリング

1
2
ボールベアリングを取り出すことができればパーツクリーナーを吹きかけてしっかり脱脂できる。フレッシュなオイルを注油したらペーパーを押し当てて余剰分を拭き取ればよい
ボールベアリングを取り出すことができればパーツクリーナーを吹きかけてしっかり脱脂できる。フレッシュなオイルを注油したらペーパーを押し当てて余剰分を拭き取ればよい

オイルとグリスの使い分け

リールにはオイルやグリスといった油分が使われています。使われている場所は主にリール内部の駆動部で、その役割はリーリングを滑らかにするための潤滑剤であったり、パーツの腐食やギア同士が接する箇所の摩耗防止であったりしています。

オイルとグリスは何が違うのでしょうか。一番わかりやすいのは粘度の違いで、オイルが液体(粘度が低い=軟らかい)、グリスが固体(粘度が高い=硬い)であるということです。液体であるオイルは隙間に浸透しやすいので塗布しやすいのが特徴で、粘度が低いものほど回転性能は向上しますが、オイル切れを起こしやすいので頻繁なメンテナンスが必要になります。一方、固体のグリスは粘度が高いため浸透しません。一度塗ってしまえばオイルよりも長く持ち、強い負荷がかかりやすい場所にもよく使われます。

左がオイル、右がグリス。オイルはペーパーに浸透していくのに対し、グリスは残り、周囲も滲んでいない

基本的にはオイルは回転する際の摩擦を軽減したいベアリングなどに、グリスは噛み合うギアなど摩耗しやすいところに使用されることが多いですが、いずれも潤滑や腐食・摩耗の防止のために塗布するものです。目的さえ達成できればどこにどんな油脂を使用しても構いません。とはいえ性能維持を目的にするのであればメーカーから指定されたものを正しく使いましょう。

粘度やメーカーでどう変わる?

オイルには純正品(リールと同じメーカーのもの)のほかに社外品があります。どんな違いがあるのでしょうか? 純正オイルは販売されているリールに初めから使われているものです。正しく使えば性能が落ちることはありませんし、反対に使い始めの時以上に性能が向上することもありません。つまり、巻きの滑らかさや軽さが変わることはなく、初期の状態に戻るだけと言えます。ちなみに純正オイルはギアやベアリングなど金属パーツの保護が目的のオイルなので頻繁なメンテナンスをしなくてもいいように粘度は高めになっています。

一方の社外オイルは、保護性能よりも飛距離や巻き心地など性能向上を重視しているものが多いです。純正オイルと比べて社外オイルには様々な粘度が用意されていて、この粘度が回転性能に違いをもたらします。さらに社外オイルには防錆剤や潤滑剤などが添加されており、それが各オイルメーカーのこだわりや特徴となっています。オイルに使われる添加剤には目に見えない細かい凹凸を埋めて巻心地を向上させる効果があるものもあります。シャリ感やゴリ感と表現されるような症状があるのならこういったオイルを使ってメンテナンスをしてみるのもいいかもしれません。

リール性能の維持なら純正オイルがスタンダード
巻き心地アップなど性能向上には社外オイルが選択肢になる

簡単でもこまめにメンテナンスをしていればリールの性能を長く維持することができます。また、注油するオイルを変えればリールの性能をチューニングすることもできるのでぜひ試してみてください。

※このコンテンツは、2023年3月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。