釣りに欠かせない透湿防水生地を使ったウェア。代表的なものは釣り用のレインウェアやパンツですが、ウェーダーやシューズなどもあります。新品が快適なのは当然ですが、意外に迷うのがその後のメンテナンス。つまり洗濯です。高価格のものも少なくないため、そもそも「洗ってしまってよいのだろうか?」と考える人も少なくありません。結論からいうと、基本を押さえたなら、洗濯はむしろ積極的にしたほうがよいといえます。

釣り用の透湿防水ウェアに付けられているメンテナンスタグ。いろいろな制約があるようにも見えるが、よく確認すると「手洗い」「洗濯機」「低温のアイロンがけ」などはいずれも問題ないことが分かる
釣り用の透湿防水ウェアに付けられているメンテナンスタグ。いろいろな制約があるようにも見えるが、よく確認すると「手洗い」「洗濯機」「低温のアイロンがけ」などはいずれも問題ないことが分かる

透湿防水生地は、水を弾く表地と、透湿調整をするメンブレン(微細な孔が空いていて、内部への水の侵入は防ぎながら、外部への蒸れの放出は可能にするシート)の組み合わせで出来ています。表地の表面は「撥水基(細かいうぶ毛が立っているイメージ)」という構造になっていて、これが水を弾くことで雨や水の進入を防ぐのですが、生地に汚れや油分がこびりついた状態だと、撥水基の突起が寝た状態になってしまいます。するといくらタオルなどで拭いたり、市販の撥水スプレーなどを吹きかけても、本来の効果が得られません。釣りは塩水やエサなどの汚れも着きやすく、また雨にも汚れは含まれているので、つまり「他のアウトドアウェア以上に洗濯は必要」になります。撥水基はきちんと洗って汚れを落とし、乾かしてやれば元に戻る性質があるためです。

大手の透湿防水生地メーカーも、洗濯によって機能が低下することはなく、むしろ定期的に洗うことのほうが大切としています。汚れは時間が経つほど取れにくくなるので、洗濯回数を減らして汚れをこびりつかせてしまうのは、その製品を長く快適に使いたいのなら本末転倒というわけです。ただし、生地の目詰まりが起きやすい粉末洗剤や、生地の変質や剥離を起こす恐れのある柔軟剤、漂白剤などは使用しないのがポイントになります。また、生地を強く絞る動作も同様に剥離を引き起こす可能性があるので避けます。

手での押し洗いのほか、洗濯機の使用もOK。ただしその場合は洗濯ネットに入れて生地が強くねじれないようにする

洗剤は一般的な家庭用のもの(上記の避けるべきアイテム以外のもの)なら問題ありません。その他にアウトドアウェア店なら透湿防水ウェア専用のシャンプーも販売しています。どちらの場合も大切なのは、「洗い終わったらすすぎまで行なって、最後は洗剤成分をしっかり落とす」ことです。洗う時は1~2着程度なら手洗いがおすすめですが、各部のジッパーを閉めて洗濯ネットに入れれば洗濯機でも構いません。そして真水でしっかりすすぎ洗いもします。あとは干すだけ……と言いたいところですが、最後の決め手は「熱」処理です。

アウトドア店では透湿防水生地用のこうしたクリーナー(液体洗剤)が売っている。家庭用のものでも柔軟剤や漂白剤が入っていないものならまず問題ない
洗剤で洗ったあとに大切なのが充分なすすぎ。汚れが強い場合は洗剤も使ってまず手でしっかり押し洗いをしたあと、仕上げのすすぎ洗いだけ洗濯機でやるのもよい
すすぎ終わったら干して乾かす。市販のメンテナンス用品にはこの段階で吹きかけるタイプの撥水スプレーもある

前出の撥水基は、汚れがない状態で熱を加えると、それらが立ち上がって整列する(柱が起きる)性質があります。これが高い撥水性能を生みます。アイロンを使用する時は低温にセットし、スチームなどの余分な機能はすべてオフにして、バンダナなど手近なもので当て布をしてごく普通に掛ければOK。また、洗濯機に「乾燥」機能が付いていれば、洗濯とすすぎのあとに標準設定で一度ウェアを乾かし、ウェアが完全に乾いたら、さらに20分以上を目安に温風の乾燥機に掛けます。どちらも実際にやってみれば効果を実感できるはずです。逆にこれらの一連のメンテナンスをしてもウェアが全く撥水しなくなったという場合は、製品寿命による買い替え時と考えましょう。このようにレインウェアやパンツなど丸ごと洗えるものは、「汚してしまったらいつでも洗ったほうがよい」といえます。

せっかく透湿防水ウェアを洗ったら、ぜひ最後の熱処理まで実践しよう。当て布をして低温のアイロンをかけると、表地がふわっとした感触になるのが分かる
上が洗って干したままの状態、下が干してからアイロンがけまでした状態で、それぞれに霧吹きで水をかけた状態。アイロンがけしたもののほうが細かく撥水しているのが分かる
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なお、透湿防水生地を使ったウェーダーの場合は、まずは表面に付いた汚れを水洗いでしっかり落とすのが基本です。この時、汚れが強ければ生地を傷付けないスポンジなどで落とします。あとはウェーダーの場合、表側の主な汚れを落としたら、なるべく早く内側まで乾かして、カビが発生しないようにするほうが大切です。

ウェーダーは生地も厚いので、釣りに行くたびにすべてを洗うよりは、毎回のメンテナンスは表側の汚れを落とす程度にしておき、あとは内側を早く乾かしてカビの発生を防ぐとよい

表裏をひっくり返せるストッキングウェーダータイプの場合は両面を干し、それができないブーツフットタイプ(靴が一体になっているもの)の場合は、逆さに吊るすと早く中まで乾かせます。あとはストッキングウェーダータイプであれば、月に1回など頻度を決めて、内側も含めて全体を湯船に張った温水の中で手洗いし(方法はレインウェアと同じ)、シャワーなどで充分にすすいでから干せばよりきれいな状態に保てます。

※このコンテンツは、2022年2月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。