誰もが経験する魚釣りのトラブルといえば「臭い」です。釣りは楽しかったのに、帰宅したら家族に「クサイ!」と指摘された。あるいは、別の日に自分のクルマに乗ろうとしたら魚臭くてびっくり。そんな臭いにまつわる失敗を、多くの釣り人が経験しています。
釣りをしていれば、臭い自体をゼロにすることはできません。その代わり、釣りが上手な人ほど、臭いが付きそうな状況をあらかじめ把握し、最小限のケアで心地よい状態(臭くない状態)をキープできるように、準備や手入れを工夫しています。
対策の基本は「付けない」「移さない」「残さない」
釣りの臭い対策は、「付けない」「移さない」「残さない」の3つが基本です。プラスして「なるべく早めの対応」を心がけます。 たとえば以下のような注意点を意識することで、釣りの臭いトラブルはずいぶん抑えられます。
たとえばオキアミを例に考えてみましょう。オキアミは、磯釣り、堤防釣り、船からのコマセ釣りと多くの釣りで使用されるエサですが、臭いが強く、また冷凍されたブロックが解けると汁が出ます。磯釣りや堤防釣りであれば、まずはバッカンやクーラーなど汚れに強く洗いやすいもので持ち運ぶのが大前提ですが、オキアミを触った手はこまめにタオルで拭くようにします。また、釣りを終えたら、オキアミが直接触れたものはもちろん、釣り場で使用した水汲みバケツやシューズ、さらにオキアミを触った手で操作したリールやサオなどを早めに水洗いします。
臭いは元になる雑菌が繁殖してしまったあとほど落ちにくいのでスピードも大切。また最後は天日干しによる完全な乾燥と殺菌をしっかり行ないます。厄介なのはオキアミそのものだけでなく、オキアミの成分が解けた汁も臭いの原因になることです。「いろいろ洗ったはずなのに、いつまでも嫌な臭いがする……」という場合、原因は水汲みバケツに付属しているロープやバッカンのファスナー部分に染み込んだオキアミの汁だったりします。
また、その汁を釣り場で踏んでいたシューズの底もかなり臭いが付きやすいアイテムです。洗う際は細部まで丁寧に、なおかつ目に見えるオキアミの残りだけでなく、汁まで意識するというのがコツになります。船釣りでも、サンダルの裏の凹みにオキアミやその他のエサのカスが入り込んでいて、気付かずにあとで臭いの原因になる……といったことがあるので、やはり下船したら履物の裏を洗うことを意識するとよいでしょう。
クルマを臭くしない方法も考え方は同じ
クルマを臭くしない方法も考え方は同じですが、特に気を付けたいのは、臭いの原因を含んだ水分を他の余計な場所に付けないことです。その点、バッカンなどの水気を拭き取りやすい入れものは、エサに限らずいろいろな釣り具の収納物として有効です。
また、荷室(特に底面)がファブリック地なら、純正品やカー用品店で手に入る防水シートやトレーは必ず用意したいアイテムです。クルマはファブリック地の部分に臭いを含んだ水分が吸収されてしまうとなかなか臭いが取れません。バッカンそのものが汚れてしまい、釣り場ですぐに洗えないような場合は、あらかじめ大きめのビニール袋を用意しておき、それらに包んでからクルマに積むようにします。ビニールがなければレジャーシートや古いバスタオルでくるむのも悪くありません。そして帰宅し荷物を下ろしたら、その日のうちに荷室全体をきれいに水拭きするひと手間を惜しまないようにしましょう。
同様のことは、たとえば魚をすくうランディングネットにも言えます。河口部や河川で楽しむシーバス、クロダイ、コイなどの釣りの場合、魚をすくったあとのランディングネットにはどうしても魚のヌメリが付き、これをそのままクルマの荷室に積んでしまうと強い臭いの元になります。まずはクルマに積む前に釣り場の水で可能な限りすすいで余計なヌメリを落とし、帰宅する際は大きめのビニール袋でネット部分などを覆ってからクルマのトランクに入れ、家に着いたら水洗いしてから天日干しにします。
他のいろいろな場面でも考え方は同じです。エサを触ったままの手でウェアやライフジャケットにベタベタと触れれば、臭いの原因も移ってしまいます。濡れタオルやウェットティッシュを用意しておき、手がベタついたらこまめに拭く習慣を付けておくことが臭い予防の基本になります。また、つい触ってしまったら、放っておかずになるべく早めに水拭きすれば臭いの発生を抑えられます。他の人のクルマに乗せてもらって釣りに行く時なら、釣りを終えたあとの着替えを用意しておき、汚れや臭いの付いたシャツやズボンのままシートに座らない……といった気遣いまでできれば完璧です。
ポイントを抑えた臭いのケアで、自分も他の人も快適な釣りライフを実践してください。